講演情報
[P16-11]2018年大阪府北部の地震における茨木市の建物被害分布における地盤増幅の影響
後藤 彰太1,2、*後藤 浩之2、Chakraborty Anirban3 (1. 中日本高速道路、2. 京都大学、3. 法政大学)
2018年6月18日,大阪府北部を震源とするM6.1の地震が発生し,大阪府北摂地域で最大震度6弱が観測された.大阪の都市直下にける断層が活動したことから,M6クラスの地震であるものの社会的な影響も大きな地震であった.一部損壊を含む建物被害は5万7千棟にのぼったが,被害形式の多くは壁面のクラックや屋根瓦の落下といったように構造部材に深刻な影響を与えるものではなかった.しかし,震源に近い茨木市と高槻市の建物被害は特徴的な空間分布を示していることが明らかとなっている.例えば,茨木市南東部は微地形区分で後背湿地に分類され地盤増幅率が高い地域であるが,実際には建物被害率が相対的に低かい地域であった.
この分布の理由を明らかにするため,地域によって建物の脆弱性が異なる可能性について研究を進めたが,茨木市ではごく一部の地域を除いて明確な建築年代の違いを街の形成過程から示すことはできなかった.そこで別の要因として,地盤震動特性が地域によって異なるものの,大阪府北部の地震における実際の地震動の増幅と,事前に評価されていた地盤増幅率とが整合しなかった可能性が考えられる.茨木市では,常時微動観測 による地盤震動特性の評価も行われており,建物被害と地盤震動特性とに一定の対応があることが指摘されている.このことから本研究では,常時微動観測をより稠密に実施することによって茨木市市街地の地盤震動特性の違いを明らかにするとともに,大阪府北部の地震によって生じた建物被害率の空間分布を説明することを試みた.
本研究では,茨木市市街地において常時微動のアレイ観測を10地点,単点観測を151地点でそれぞれ実施した.単点観測で得られた水平/上下スペクトル(HVSR)を整理する際,一般的には地点毎に卓越周期を読み取ってこれを地図上に示す.しかし,本地域で得られるHVSRは明瞭な卓越周期を持たないものも多くあるため,本研究では卓越周期の分布ではなくHVSRの形状を階層的クラスター分析によって分類した.クラスター間のHVSR形状は明確に異なり,(1)4-9 Hzが卓越するクラスター,(2)1-3 Hzが卓越するクラスター,(3)卓越周期の明瞭でないクラスターに分類された.これらクラスターの分布を建物被害率の分布と比較したところ非常に良い対応を示し,(1)のクラスターは被害率の高いエリア,(2)のクラスターは被害率の低いエリアに対応した.また,(3)のクラスターは被害率の高いエリアに挟まれた比較的被害の軽微なエリアに分布した.
常時微動アレイ観測により推定されたレイリー波の位相速度と単点観測点で推定されたHVSRを用いて,表層地盤のS波速度モデルを構築した.対象とする市街地全域を共通してモデル化するため,全点で表層7層と半無限基盤とからなる8層構造を仮定した.基盤のS波速度は全点共通の750 m/sとし,第7層上面深さと基盤面深さはそれぞれ80 m,100 mで固定した.表層各層の境界深さは周囲のボーリングデータを参考にして固定する.ボーリング深度より深い層境界の位置や表層各層のS波速度は,位相速度とHVSRに整合するよう探索した.単点観測点ではHVSRのみが情報として与えられているため,アレイ観測によって求められた速度モデルを空間補間してモデル化した.具体的には,対象とする単点観測点が属するクラスターにおいて最もHVSRが似たアレイ観測地点を見つけ,そのアレイ観測地点で得られた速度モデルを初期モデルとする.単点観測のHVSRとモデルによるレイリー波楕円率とが整合するよう,初期モデルの層境界深さと第7層のS波速度を変更させ,単点観測点の速度モデルを構築した.
構築した地盤モデルに対して等価線型化法による非線形地盤応答解析を行なった.地盤材料の非線形特性はHDモデルを採用し,粘土層と砂層・礫層とに区別して大阪平野で実績のあるパラメータをそれぞれ採用した.各モデルの基盤に鉛直下方から岩盤観測点での地震動を入力したところ,地表応答の最大速度の分布は建物被害分布と良い対応を示した.(1)のクラスターでは速度応答スペクトルが周期0.3-0.5秒で大きな応答を示し,(2)のクラスターでは周期約1秒で大きな応答を示すことが明らかとなった.大阪府北部の地震による被害は主に一部損壊であったため1秒より短い周期の影響が大きいこと,地盤の卓越振動数が4-9 Hzであったため短周期の成分が増幅したことの両者の影響によって,地盤増幅率が低いとされる地域に建物被害が集中することになったと考えられる.このことは,入力地震動の違いや,被害グレードの違いによって被害分布が異なることを意味している.地盤増幅率で一元的に見るのではなく,対象とする地震や被害様式によってリスクの高いエリアが異なる可能性を示す重要な実例であると言える.
この分布の理由を明らかにするため,地域によって建物の脆弱性が異なる可能性について研究を進めたが,茨木市ではごく一部の地域を除いて明確な建築年代の違いを街の形成過程から示すことはできなかった.そこで別の要因として,地盤震動特性が地域によって異なるものの,大阪府北部の地震における実際の地震動の増幅と,事前に評価されていた地盤増幅率とが整合しなかった可能性が考えられる.茨木市では,常時微動観測 による地盤震動特性の評価も行われており,建物被害と地盤震動特性とに一定の対応があることが指摘されている.このことから本研究では,常時微動観測をより稠密に実施することによって茨木市市街地の地盤震動特性の違いを明らかにするとともに,大阪府北部の地震によって生じた建物被害率の空間分布を説明することを試みた.
本研究では,茨木市市街地において常時微動のアレイ観測を10地点,単点観測を151地点でそれぞれ実施した.単点観測で得られた水平/上下スペクトル(HVSR)を整理する際,一般的には地点毎に卓越周期を読み取ってこれを地図上に示す.しかし,本地域で得られるHVSRは明瞭な卓越周期を持たないものも多くあるため,本研究では卓越周期の分布ではなくHVSRの形状を階層的クラスター分析によって分類した.クラスター間のHVSR形状は明確に異なり,(1)4-9 Hzが卓越するクラスター,(2)1-3 Hzが卓越するクラスター,(3)卓越周期の明瞭でないクラスターに分類された.これらクラスターの分布を建物被害率の分布と比較したところ非常に良い対応を示し,(1)のクラスターは被害率の高いエリア,(2)のクラスターは被害率の低いエリアに対応した.また,(3)のクラスターは被害率の高いエリアに挟まれた比較的被害の軽微なエリアに分布した.
常時微動アレイ観測により推定されたレイリー波の位相速度と単点観測点で推定されたHVSRを用いて,表層地盤のS波速度モデルを構築した.対象とする市街地全域を共通してモデル化するため,全点で表層7層と半無限基盤とからなる8層構造を仮定した.基盤のS波速度は全点共通の750 m/sとし,第7層上面深さと基盤面深さはそれぞれ80 m,100 mで固定した.表層各層の境界深さは周囲のボーリングデータを参考にして固定する.ボーリング深度より深い層境界の位置や表層各層のS波速度は,位相速度とHVSRに整合するよう探索した.単点観測点ではHVSRのみが情報として与えられているため,アレイ観測によって求められた速度モデルを空間補間してモデル化した.具体的には,対象とする単点観測点が属するクラスターにおいて最もHVSRが似たアレイ観測地点を見つけ,そのアレイ観測地点で得られた速度モデルを初期モデルとする.単点観測のHVSRとモデルによるレイリー波楕円率とが整合するよう,初期モデルの層境界深さと第7層のS波速度を変更させ,単点観測点の速度モデルを構築した.
構築した地盤モデルに対して等価線型化法による非線形地盤応答解析を行なった.地盤材料の非線形特性はHDモデルを採用し,粘土層と砂層・礫層とに区別して大阪平野で実績のあるパラメータをそれぞれ採用した.各モデルの基盤に鉛直下方から岩盤観測点での地震動を入力したところ,地表応答の最大速度の分布は建物被害分布と良い対応を示した.(1)のクラスターでは速度応答スペクトルが周期0.3-0.5秒で大きな応答を示し,(2)のクラスターでは周期約1秒で大きな応答を示すことが明らかとなった.大阪府北部の地震による被害は主に一部損壊であったため1秒より短い周期の影響が大きいこと,地盤の卓越振動数が4-9 Hzであったため短周期の成分が増幅したことの両者の影響によって,地盤増幅率が低いとされる地域に建物被害が集中することになったと考えられる.このことは,入力地震動の違いや,被害グレードの違いによって被害分布が異なることを意味している.地盤増幅率で一元的に見るのではなく,対象とする地震や被害様式によってリスクの高いエリアが異なる可能性を示す重要な実例であると言える.
