講演情報

[P16-12]臨時地震観測記録を用いたKiK-net陸前高田周辺の水平アレー伝達関数

*笠松 健太郎1、鈴木 文乃1、引田 智樹1、友澤 裕介1 (1. 鹿島建設㈱技術研究所)
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1.はじめに
 表層地盤の影響を除去し,解放工学的基盤面の地震動を評価するためには,地震観測記録をよく再現する地盤モデルが必要である。鉛直アレー地震観測が行われている地点の地盤モデルは,多くの場合,測点間の観測伝達関数を算定し,それに地盤を平行成層と見なした鉛直平面波入射による重複反射理論(以下,一次元解析)を当てはめる逆解析に基づいて評価される。しかし,観測点周辺の地形の不陸や地盤構造の不整形性が顕著なサイトでは,一次元解析で観測記録を再現できるとは限らない(例えば,笠松ほか, 2011)。本検討では,周辺地形の不陸が顕著で一次元解析の適用が難しいと考えられるKiK-net陸前高田(以下,IWTH27)を対象に,サイト周辺の地盤震動特性を明らかにすることを目的として,周辺20地点で臨時地震観測を行った。得られた地震観測記録を用いて水平アレーの伝達関数を評価した結果について報告する。

2.鉛直アレー伝達関数と周辺地形
 IWTH27は,岩手県陸前高田市の内陸部に立地する。PS検層結果によると,地表付近にはS波速度150 m/s,厚さ4 mの表土が堆積しており,その下部に1100 m/sの硬質な岩盤が分布する(NIED, 2019)。1/4波長則に基づく表土の卓越周波数は9.4 Hzである。地中地震計は深さ100 mに設置され,その深度のS波速度は2790 m/sとされる。IWTH27で得られている50地震の観測記録を用いて,鉛直アレー測点間の水平動の伝達関数を算定した(図(a))。震動方向による違いを調べるために,水平成分の加速度波形を1°刻みで180°回転させ,震動方向毎に振幅比と位相差を算定した結果を重ねた。震動方向によってピークとトラフが生じる周波数に違いが見られ,その違いはNS方向とEW方向で顕著となる。このように震動方向によって異なる特性を示す観測伝達関数は一次元解析では再現されない。
 IWTH27周辺の標高分布を図(b)上段に,Line-1の概略断面図を図(b)下段に示す。IWTH27の地表地震計は小山の上に設置されている。サイトの東西および北側の低地と15~20 mの高低差があり,周辺地形の不陸は大きいと言える。図(b)上段に灰色線で示す水平距離40 mの範囲を対象に,5 m間隔で水平上下3成分の微動を観測し,得られた微動データを用いて水平上下スペクトル比(以下,H/V)を算定した。観測位置によってピークが形成される周波数に違いがあり,サイト周辺は地盤構造の不整形性も顕著であることが示唆された。

3.臨時地震観測による水平アレーの伝達関数
 IWTH27周辺の地盤震動特性について調べるために,IWTH27の周辺20地点で臨時地震観測を実施した。図(b)の▼印は観測位置を表し,観測点No.を併記した。観測はMIKシステム振動計測車(鹿島建設, 2010)の機材を用いて2025年7月8日~2025年7月14日に行った。ミツトヨ製のセンサJEP-6A3を用い,東京測器製TMR-211・TMR-2315でAD変換した計60チャンネルの加速度波形データをノートPCに同時収録した。この20測点から成る水平アレーについて7地震の観測記録を用いて,水平アレー測点間の伝達関数を算定した。例として,もっとも標高が低いNo. 6に対するNo. 4,8,20,3の振幅比と位相差を図(c)に示す。
 No. 4はNo. 6から標高が12 m高い斜面中腹に位置する。位相遅れを伴い周波数8 Hzにピークが形成される。この8 Hzのピークの振幅は,高低差16 mの斜面上のNo. 8でもっとも大きくなる。No. 20は,斜面から10 mほど離れているが,8 Hzに同様のピークが認められ,その振幅はNo. 6に対して10倍程度も大きい。例えば小牧ほか(1983)によると,急峻な斜面上で観測される地震動は,特定の周波数で振幅が大きくなる。地盤増幅の影響との分離は難しいが,斜面上の地点で共通して8 Hzの卓越が見られることから,地形の影響も大きいと考えられる。一方,IWTH27の西側の斜面上に位置するNo. 3では8 Hzの卓越は見られない。No. 6との位相差も小さく,より高周波数側では振幅が小さくなっている。図(b)の灰色線上の微動H/Vでは,No. 8からNo. 3に向かいピークが高周波数側にシフトする様子が見られており,IWTH27が立地する小山では西側ほど地盤は硬質であると考えられる。

4.まとめ
 IWTH27周辺の地盤震動は,地形と地盤構造の不整形性の影響を受け,場所によって大きく特性が異なることが分かった。IWTH27について観測地震動を用いたはぎとり解析を適切に行うためには,地形と地盤構造の不整形性を考慮した三次元地盤モデルが必要と考えられる。本検討では7地震の観測記録を用いたが,臨時地震観測では規模は小さいが数十地震の観測記録が得られている。対象地震を追加し,水平アレー伝達関数の安定性などについて引き続き検討予定である。