講演情報
[P16-13]地震波干渉法を用いた八丈島の表面波の散乱減衰および内部減衰パラメータ推定
*田中 瑞己1、渡辺 俊樹1、東 宏幸2、小田 義也2 (1. 名古屋大学、2. 東京都立大学)
八丈島は伊豆諸島に属する火山島であり,八丈島は東山と西山の2つの成層火山からなる.東山は玄武岩と安山岩からなり,約10万年前から約3700年前まで活動していた.西山は玄武岩質の溶岩からなる火山であり,約1万年前から活動している(Tsukui et al., 1991).1605年の噴火以降に噴火はないが,2002年の地震活動をともなうマグマの貫入(Kumagai et al., 2003;Kimata et al., 2004)など現在でも活動が確認されている.八丈島は火山災害の可能性があるため,八丈島の火山についての理解を深めることは火山災害対策に必要である.
地震波の散乱や減衰の程度は地殻内の不均質を理解するための重要な情報となる.これまでにS波初動後に到着するS波多重散乱波であるコーダ波の減衰の大きさを示すパラメータQc-1の推定が多く行われてきた.地震波干渉法に基づくと,地震雑微動の相関関数は擬似的な地震波記録として考えることができるため,近年では自然地震に代わって地震雑微動を用いる地震波減衰率の研究が行われている(Liu et al., 2015;Hirose et al., 2019など).Tanaka (2024)では地震雑微動の自己相関関数を用いて,八丈島の自己相関関数の減衰パラメータQacfの推定を行った.地震雑微動は主に表面波からなるため,この自己相関関数のコーダ波は観測点付近の表層での減衰構造を反映していると考えられる.この研究では,1-2 Hzの周波数帯で東山と比べて西山におけるQacf-1の値がやや大きくなり,西山表層で地震波の減衰が大きくなるという結果が得られた.しかし,東山と西山間の減衰率の差が何に起因するのかは不明であった.
本研究では,八丈島の不均質性の理解を深めることを目的とし,Hirose et al.(2019)が提案した方法を用いて地震雑微動の相互相関関数(CCF)から八丈島の東山と西山における表面波の散乱減衰QSc-1および内部減衰QI-1の推定をそれぞれ行った.東京都立大学が中心となって設置した臨時観測点45点と気象庁,防災科研,東京都が設置した定常観測点9点で2019-2020年と2021-2022年の2つの期間に観測された地震雑微動のデータを用いて,それぞれの期間で0.5-1,1-2,2-4 Hzの周波数帯のCCFをZZ,ZR,ZTの3成分について計算した.0.5-1,1-2 Hzの周波数帯では表面波を抽出することができたが,2-4 Hzでは表面波が抽出できていないと判断したため解析から除外した.計算されたCCFの波形から推定された表面波速度は,東山において0.5-1,1-2 Hzでそれぞれ1.5,1.3 km/s,西山では1.2,0.8 km/sとなった.この値は先行研究(Watanabe,2022;Kusumo et al., 2025)で得られている八丈島浅部の速度構造と整合的である.3成分のCCFのMSエンベロープの和から表面波のエネルギー密度を計算した.この観測エネルギー密度と放射伝達理論に基づいた理論エネルギー密度との比較から減衰パラメータを決定した.タイムウィンドウを,最も離れた観測点間距離を持つ観測点ペアの直達波走時から0.5秒毎に3つとその2倍から6.5倍の時間の間に0.5秒毎を3つの計6つに定め,それらのタイムウィンドウでの残差二乗和が最小となる減衰パラメータをグリッドサーチによって求めた.前半3つのタイムウィンドウでは散乱減衰パラメータを推定した.後半の3つのタイムウィンドウは前半の3つとの差から内部減衰パラメータを推定した.この際に,エネルギー密度の値について,観測点ペアの直達波走時の2倍から6.5倍の時間の内ある10秒間の振幅値を用いて規格化を行った.規格化に用いる振幅値の時間帯について検討を行い,最も推定に適したものの結果を採用した.
グリッドサーチにより得られた誤差分布から,内部減衰パラメータについては誤差が小さく決定精度は高いことが分かった.一方で散乱減衰パラメータについては距離方向のデータのばらつきが大きく決定精度はやや低くなった.推定された八丈島のQSc-1とQI-1の値はHirose et al.(2022)で得られた複数の火山でのQSc-1やQI-1の値と整合的であり,八丈島での推定値が一定の信頼性を持つと考えられる.また,推定されたQSc-1とQI-1から計算される全減衰の値はTanaka(2024)で得られた八丈島の平均的な自己相関関数の減衰Qacf-1とも整合的であった.0.5-1,1-2 Hzの2つの周波数帯でともに東山と西山のQI-1の値は近い値を取った.一方で,QSc-1の値は0.5-1Hzで西山の方が大きく,1-2 Hzで東山の方が大きくなった.Hirose et al. (2022) では火山島や海岸や湖の近くに位置する火山では比較的高いQI-1の値を取る傾向があることを指摘しているが,八丈島のQI-1の値はそれらの値よりも低い値を示した.本発表では,八丈島のQ値に関して東山と西山の差および他火山との比較についての検討を行う.
地震波の散乱や減衰の程度は地殻内の不均質を理解するための重要な情報となる.これまでにS波初動後に到着するS波多重散乱波であるコーダ波の減衰の大きさを示すパラメータQc-1の推定が多く行われてきた.地震波干渉法に基づくと,地震雑微動の相関関数は擬似的な地震波記録として考えることができるため,近年では自然地震に代わって地震雑微動を用いる地震波減衰率の研究が行われている(Liu et al., 2015;Hirose et al., 2019など).Tanaka (2024)では地震雑微動の自己相関関数を用いて,八丈島の自己相関関数の減衰パラメータQacfの推定を行った.地震雑微動は主に表面波からなるため,この自己相関関数のコーダ波は観測点付近の表層での減衰構造を反映していると考えられる.この研究では,1-2 Hzの周波数帯で東山と比べて西山におけるQacf-1の値がやや大きくなり,西山表層で地震波の減衰が大きくなるという結果が得られた.しかし,東山と西山間の減衰率の差が何に起因するのかは不明であった.
本研究では,八丈島の不均質性の理解を深めることを目的とし,Hirose et al.(2019)が提案した方法を用いて地震雑微動の相互相関関数(CCF)から八丈島の東山と西山における表面波の散乱減衰QSc-1および内部減衰QI-1の推定をそれぞれ行った.東京都立大学が中心となって設置した臨時観測点45点と気象庁,防災科研,東京都が設置した定常観測点9点で2019-2020年と2021-2022年の2つの期間に観測された地震雑微動のデータを用いて,それぞれの期間で0.5-1,1-2,2-4 Hzの周波数帯のCCFをZZ,ZR,ZTの3成分について計算した.0.5-1,1-2 Hzの周波数帯では表面波を抽出することができたが,2-4 Hzでは表面波が抽出できていないと判断したため解析から除外した.計算されたCCFの波形から推定された表面波速度は,東山において0.5-1,1-2 Hzでそれぞれ1.5,1.3 km/s,西山では1.2,0.8 km/sとなった.この値は先行研究(Watanabe,2022;Kusumo et al., 2025)で得られている八丈島浅部の速度構造と整合的である.3成分のCCFのMSエンベロープの和から表面波のエネルギー密度を計算した.この観測エネルギー密度と放射伝達理論に基づいた理論エネルギー密度との比較から減衰パラメータを決定した.タイムウィンドウを,最も離れた観測点間距離を持つ観測点ペアの直達波走時から0.5秒毎に3つとその2倍から6.5倍の時間の間に0.5秒毎を3つの計6つに定め,それらのタイムウィンドウでの残差二乗和が最小となる減衰パラメータをグリッドサーチによって求めた.前半3つのタイムウィンドウでは散乱減衰パラメータを推定した.後半の3つのタイムウィンドウは前半の3つとの差から内部減衰パラメータを推定した.この際に,エネルギー密度の値について,観測点ペアの直達波走時の2倍から6.5倍の時間の内ある10秒間の振幅値を用いて規格化を行った.規格化に用いる振幅値の時間帯について検討を行い,最も推定に適したものの結果を採用した.
グリッドサーチにより得られた誤差分布から,内部減衰パラメータについては誤差が小さく決定精度は高いことが分かった.一方で散乱減衰パラメータについては距離方向のデータのばらつきが大きく決定精度はやや低くなった.推定された八丈島のQSc-1とQI-1の値はHirose et al.(2022)で得られた複数の火山でのQSc-1やQI-1の値と整合的であり,八丈島での推定値が一定の信頼性を持つと考えられる.また,推定されたQSc-1とQI-1から計算される全減衰の値はTanaka(2024)で得られた八丈島の平均的な自己相関関数の減衰Qacf-1とも整合的であった.0.5-1,1-2 Hzの2つの周波数帯でともに東山と西山のQI-1の値は近い値を取った.一方で,QSc-1の値は0.5-1Hzで西山の方が大きく,1-2 Hzで東山の方が大きくなった.Hirose et al. (2022) では火山島や海岸や湖の近くに位置する火山では比較的高いQI-1の値を取る傾向があることを指摘しているが,八丈島のQI-1の値はそれらの値よりも低い値を示した.本発表では,八丈島のQ値に関して東山と西山の差および他火山との比較についての検討を行う.
