講演情報
[P22-06]深層学習による南海トラフ沈み込み帯のテクトニック微動震源推定:単一観測点から得られた予測結果の統合
*杉井 天音1、平松 良浩1 (1. 金沢大学)
・はじめに
テクトニック微動は、通常の地震に比べて断層がゆっくりと滑るスロー地震の一種であり、地震計によって観測される。微動は低周波成分が卓越し、低周波地震が連続した現象と捉えられている (Shelly et al., 2007)。また、微動はスロースリップイベントと時空間的に同時発生することが知られており (Rogers & Dragert, 2003)、巨大地震発生メカニズムとの関連が指摘されている (e.g., Kato et al., 2012)。したがって、微動の観測は巨大地震発生過程の理解に不可欠である。
一方で、微動波形のP・S波は不明瞭であり、通常地震の震源決定手法を適用することは困難である。このため、複数観測点を用いたエンベロープ相互相関法 (e.g., Obara, 2002) などが提案されてきたが、これらは波形の部分的特徴や特定の周波数帯に依存する。そこで Sugii and Hiramatsu (2025, JPGU) は、波形情報を最大限活用するために深層学習を用いた単一観測点からの震央推定手法を提案した。本研究では、これを震源推定へと拡張し、深さ推定を可能とした。さらに、複数観測点に適用した単一観測点予測を統合することで、推定精度向上の可能性を検討した。
・データと方法
対象地域は南海トラフ沈み込み帯全域とした。使用期間は2008年から2016年9月までで、2008–2015年を学習・検証データ、2016年をテストデータとした。震源情報には、エンベロープ法により決定された Mizuno and Ide (2019) の微動カタログを用いた。各観測点から震央距離50 km以内の微動震源と波形を候補とし、Jinde et al. (2025) の手法で構築された畳み込みニューラルネットワーク(CNN)により微動確率を算出した。微動確率90%以上の波形を抽出し、学習・検証・テストデータが500以上、かつテストデータが30以上存在する観測点のみを採用した。その結果、Hi-net の104観測点を使用した。
モデルは Vision Transformer (Dosovitskiy et al., 2021) を用いた。出力は、入力波形を観測した観測点からの東西・南北方向の相対距離 (km)、深さ、およびこれらの共分散行列のコレスキー分解成分である。損失関数には負の対数尤度を用い、不確実性を自動的に学習させた。複数観測点の推定結果を統合する際には、2 つ以上の推定値間の相関が不明な場合でも安全に統合可能なCovariance Intersection (Julier and Uhlmann, 1997) を適用した。
・結果と考察
669,959データを学習に用い、42,764データを検証用に使用した。負の対数尤度が最小となったモデルを最終学習済みモデルとして採用した。さらに 54,830のテストデータで評価を行った結果、カタログ値に対する震央誤差は平均 4.84±7.16 km、中央値 2.78 km、90%タイル 9.53 km であった。一方、深さ誤差は平均 0.14±3.22 km であった。
モデルが学習データから単に無作為に出力していないことを確認するため、各予測に対応する部分を観測点ごとの学習データからランダムにサンプリングする方法に置き換えた。この操作を 1000 回繰り返したところ、震央誤差は28.13±19.34 kmに増大し、深さ誤差は 0.06±5.81 km となった。深さ誤差の平均が小さい理由は、微動の発生深さが 30–40 km に集中するためと考えられる。しかし、ランダムサンプリング時の標準偏差は大きいことから、提案モデルはランダム出力ではなく、深さに関しても特徴量を学習していると解釈できる。
さらに、予測結果は共分散に基づき楕円体を描くため、95% 信頼区間の楕円体積を利用してノイズ・地震・微動の識別を試みた。その結果、AUC=0.903 の分類性能が得られた。一方、CNN ベースの専用分類モデルでは AUC = 0.998 となり、高精度な識別には専用モデルの利用が依然として有効であることが示唆された。
次に、テストデータには同時刻の複数観測点データが含まれているため、これらの予測結果を Covariance Intersection (CI) により統合した。その結果、震央誤差は平均 2.65±2.79 km、中央値 2.09 km、90%タイル 4.90 km まで改善した。一方、深さ誤差は平均 0.70±2.86 km となり、震央に比べ改善は限定的であった。この理由として、学習に用いたカタログ深さ値自体の不確実性が大きいことが考えられる。
テクトニック微動は、通常の地震に比べて断層がゆっくりと滑るスロー地震の一種であり、地震計によって観測される。微動は低周波成分が卓越し、低周波地震が連続した現象と捉えられている (Shelly et al., 2007)。また、微動はスロースリップイベントと時空間的に同時発生することが知られており (Rogers & Dragert, 2003)、巨大地震発生メカニズムとの関連が指摘されている (e.g., Kato et al., 2012)。したがって、微動の観測は巨大地震発生過程の理解に不可欠である。
一方で、微動波形のP・S波は不明瞭であり、通常地震の震源決定手法を適用することは困難である。このため、複数観測点を用いたエンベロープ相互相関法 (e.g., Obara, 2002) などが提案されてきたが、これらは波形の部分的特徴や特定の周波数帯に依存する。そこで Sugii and Hiramatsu (2025, JPGU) は、波形情報を最大限活用するために深層学習を用いた単一観測点からの震央推定手法を提案した。本研究では、これを震源推定へと拡張し、深さ推定を可能とした。さらに、複数観測点に適用した単一観測点予測を統合することで、推定精度向上の可能性を検討した。
・データと方法
対象地域は南海トラフ沈み込み帯全域とした。使用期間は2008年から2016年9月までで、2008–2015年を学習・検証データ、2016年をテストデータとした。震源情報には、エンベロープ法により決定された Mizuno and Ide (2019) の微動カタログを用いた。各観測点から震央距離50 km以内の微動震源と波形を候補とし、Jinde et al. (2025) の手法で構築された畳み込みニューラルネットワーク(CNN)により微動確率を算出した。微動確率90%以上の波形を抽出し、学習・検証・テストデータが500以上、かつテストデータが30以上存在する観測点のみを採用した。その結果、Hi-net の104観測点を使用した。
モデルは Vision Transformer (Dosovitskiy et al., 2021) を用いた。出力は、入力波形を観測した観測点からの東西・南北方向の相対距離 (km)、深さ、およびこれらの共分散行列のコレスキー分解成分である。損失関数には負の対数尤度を用い、不確実性を自動的に学習させた。複数観測点の推定結果を統合する際には、2 つ以上の推定値間の相関が不明な場合でも安全に統合可能なCovariance Intersection (Julier and Uhlmann, 1997) を適用した。
・結果と考察
669,959データを学習に用い、42,764データを検証用に使用した。負の対数尤度が最小となったモデルを最終学習済みモデルとして採用した。さらに 54,830のテストデータで評価を行った結果、カタログ値に対する震央誤差は平均 4.84±7.16 km、中央値 2.78 km、90%タイル 9.53 km であった。一方、深さ誤差は平均 0.14±3.22 km であった。
モデルが学習データから単に無作為に出力していないことを確認するため、各予測に対応する部分を観測点ごとの学習データからランダムにサンプリングする方法に置き換えた。この操作を 1000 回繰り返したところ、震央誤差は28.13±19.34 kmに増大し、深さ誤差は 0.06±5.81 km となった。深さ誤差の平均が小さい理由は、微動の発生深さが 30–40 km に集中するためと考えられる。しかし、ランダムサンプリング時の標準偏差は大きいことから、提案モデルはランダム出力ではなく、深さに関しても特徴量を学習していると解釈できる。
さらに、予測結果は共分散に基づき楕円体を描くため、95% 信頼区間の楕円体積を利用してノイズ・地震・微動の識別を試みた。その結果、AUC=0.903 の分類性能が得られた。一方、CNN ベースの専用分類モデルでは AUC = 0.998 となり、高精度な識別には専用モデルの利用が依然として有効であることが示唆された。
次に、テストデータには同時刻の複数観測点データが含まれているため、これらの予測結果を Covariance Intersection (CI) により統合した。その結果、震央誤差は平均 2.65±2.79 km、中央値 2.09 km、90%タイル 4.90 km まで改善した。一方、深さ誤差は平均 0.70±2.86 km となり、震央に比べ改善は限定的であった。この理由として、学習に用いたカタログ深さ値自体の不確実性が大きいことが考えられる。
