講演情報

[P23-10]トカラ列島・悪石島周辺で繰り返し発生する微動

*山下 裕亮1、八木原 寛2、仲谷 幸浩3、平野 舟一郎2 (1. 宮崎公立大学 地域連携・防災研究センター、2. 鹿児島大学理工学研究科附属南西島弧地震火山観測所、3. 鹿児島大学理工学研究科)
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南西諸島海溝沿いに位置するトカラ列島の悪石島近海では,近年群発地震活動が度々発生している.2025年6月21日から始まった活動はこれまでで最大級の活動となり,有感地震の回数は2000回を超えている.2025年の活動では,群発地震活動に関連した地殻変動が初めて観測され(国土地理院,2025),その地殻変動量は地震によるモーメント開放量からは説明がつかないほど大きなものであり,火山性流体の関与が疑われている.
悪石島近海では,群発地震とは別に,2015年以降,複数回にわたってやや低周波な微動とみられるイベントが確認されている.このイベントは,主に2-6Hz程度の低周波成分で構成されており,不明瞭な初動部分と数分~十分程度の継続時間を有していることから,通常の地震とは明らかに異なる特徴を有し,西南日本のプレート境界浅部や深部で見られるテクトニック微動と似ているようにもみえる.本研究では,この微動とみられるイベントについて,エンベロープ相関法(Obara, 2002)による震源決定を試みた.南西諸島海溝沿いは島が点在しており,地震観測点が限られているが,鹿児島大学が展開している臨時観測点に加え,トカラ列島東方沖で実施していた長期海底地震観測のデータが使用できる場合はそのデータも使用している.
暫定解析の結果,震源位置は悪石島周辺に求まるが,グリッドサーチによる残差分布の水平方向の広がりから,誤差は10km以上あるとみられる.深さに関しての分解能は水平方向よりも低いが,残差の深さ方向の変化を見る限り比較的浅い領域に震源が位置しているとみられる.この領域では,フィリピンプレートの上面は80km~100kmにあるとみられ(e.g., Iwasaki, 2015; JAMSTEC, 2020),西南日本のプレート境界深部で発生するような深部テクトニック微動ではないことは明らかである.
悪石島に近い小宝島近海では,海底地形調査からカルデラを伴う海底火山の存在が明らかとなっている(Minami et al., 2014).さらに,近年の群発地震活動や,2025年の群発地震活動に伴って観測された大きな地殻変動などを考慮すると,悪石島や小宝島周辺の地下で火山性流体の移動があり,それに伴って群発地震や微動が発生しているとみられる.したがって,繰り返し発生している微動は,火山性微動の1つである可能性があるかもしれない.
2025年の群発地震に伴い,群発地震震源域周辺では鹿児島大学を中心として海底地震観測が実施されている.観測期間中に再び火山性微動とみられる低周波イベントが発生すれば,海底地震計データを用いることで発生場所をより正確に捉えられると期待される.

謝辞:本研究は,災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第1次,第2次,第3次) および科研費特別研究促進費(JP25K24462)の支援を受けました.本研究で使用した海底地震観測データは教育関係共同利用拠点・長崎大学水産学部練習船「長崎丸」によって取得されました.