講演情報

[P25-05]2025年カムチャッカ半島地震の震源過程

*山中 佳子1 (1. 名古屋大学)
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2025年7月29日23時24分(UTC),カムチャッカ半島でM8.8の地震が発生した. この地震で日本でも久慈港で1.4m,釜石港,宮古港で50cmの津波が観測され,養殖施設などで被害がでた.我々はIRIS-DMCから広帯域地震計記録を収集し遠地実体波解析を行った.
 今回はUSGSの解析で破壊継続時間が200秒以上あることがわかっていたので,表面波の影響を避けるため震源距離が50°以上の観測点の上下動広帯域地震計記録(P波上下動56点)を収集した.破壊開始点はUSGSの情報(52.551N,160.259E, 深さ35 km)を用いた.仮定する断層面の走向,傾斜はUSGSのモーメントテンソル解(str/dip/rake=198/18/51)を初期値として用い,仮定した断層面上に20km x 20kmのグリッドを設定し断層面上のすべり方向を2つの成分に分けて,各グリッドでの震源時間関数を求めた.このとき試行錯誤で断層面の走向,傾斜も最適なものを求めた.ベスト解は(str/dip/rake =218/18/72),地震モーメント=1.2 x10**22 Nm (Mw = 8.7) ,最大すべり量は12.9m (μ=40GPa)であった.
 断層面上のすべり分布を図に示す.地図にはすべりが1m以上の領域をコンターで示しており,赤い★が今回の震央,オレンジ色の●が前震,緑色の●がM6以上の余震を示す.メインの破壊は破壊開始点からまずは海溝付近まで浅い方に進み,その後海溝に沿って南西方向に400kmほど進んだ.この地震では7月20日にM7.4の前震が発生しているが,これは今回のすべりのまさに北東隣であった.また余震はアスペリティの周辺で発生しており,特に海溝に沿った2つのアスペリティの間付近では規模の比較的大きな余震が発生している.この領域では1952年にM9の地震が発生している.この地震の震源域は今回とほぼ同じような範囲と言われている.津波による1952 年の地震の解析(Johnson & Satake, 1999)は本解析結果より陸よりが滑っているが,破壊した範囲は概ね似ている.
 今回の解析では,海溝付近のメインなすべりの他に陸よりにすべり量が最大2m程度の5つのアスペリティが存在するように見える.解析では海底地形を考慮していないのでその影響もあると思うが,破壊のスナップショットをみると,海溝付近の破壊がその近くまで進むと陸よりのアスペリティが滑り出しているようにみえる.この付近では1952年以外にも1841年,1904年(M7が3個),1923年,1952年(M9),1973年(M7.5),1993年(M7.0, 7,5)などM7クラスの地震がたびたび発生しており(図の黄色い★),今回得られた陸よりのアスペリティはこれらの地震と対応がよいように見える.ただし過去の地震については詳細がわからないので,今回これらの地震が再来地震であったかはもう少し検討が必要である.