講演情報

[P25-08]千島・カムチャツカ地域における相似地震活動とプレート間固着

*五十嵐 俊博1、加藤 愛太郎1 (1. 東京大学地震研究所)
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北海道からロシア・カムチャツカ半島にかけた地域では、千島海溝から沈み込んだ太平洋プレート境界、スラブ内およびアウターライズ域においてM8を超える巨大地震が頻繁に発生している。2025年7月30日には、カムチャツカ半島東方沖のプレート境界においてMw8.8の地震が発生した。この地震は、1952年11月5日に発生したM9.0巨大地震と震源位置が近接している。そこで本研究では、ほぼ同じ場所で繰り返し発生する相似地震活動およびその周辺で発生する地震活動の情報を基に、この地域のプレート間における非地震性すべりの時空間変化を推定し、短期的なすべりのゆらぎや巨大地震発生サイクルにおける固着状態の長期変化を調査した。
 まず、Igarashi and Kato (2021) が検出した、1989年9月から2016年2月までの間に発生した中規模相似地震カタログを使用して相似地震活動を確認したところ、その空間分布に粗密が見られた。特に、海溝軸に近い側では、2006年11月Mw8.3地震の震源域周辺では比較的活発な活動が見られる一方で、根室半島沖から択捉島沖にかけた領域およびカムチャツカ半島周辺の北緯50度付近、北緯53度付近では全く活動が見られず、強く固着している状況が示唆された。相似地震情報を基にプレート間固着状況を推定したところ、2003年十勝沖地震(Mw8.2)および2006年11月地震後に余効すべりの発生が見られ、解析期間内における平均すべり速度はプレート収束速度に近い値が得られた。一方、色丹島からウルップ島にかけた領域およびカムチャツカ半島周辺の東経156度から161度にかけた領域ではやや固着している状況が示唆された。カムチャツカ半島東方沖の固着状況はBurgmann et al. (2005)の結果とも概ね一致していた。USGSによる2025年カムチャツカ半島東方沖地震のすべり分布と比較すると、震源地点を含むすべり域北部および最南部ではやや強い固着、南部では強く固着していた領域と一致する。その南側では平均すべり速度がプレート収束速度に近い領域となっているが、この地震のすべりは及んでいないようである。
 さらに、相似地震の周辺で発生した地震活動の情報を用いて、大地震発生前後の非地震性すべりの発生やプレート間滑り速度が増加した可能性がある場所、期間を調査した。本解析では、相似地震が時空間的に近接して発生したこと、M6.5以上の地震が発生したこと、地震活動が活発化したことを基に検出を行った。本解析では、USGSの地震データベースに報告されている地震を用いた。解析の結果、2025年カムチャツカ半島東方沖地震の震源近傍および、地震時すべり域の南端付近では、数年間隔で間欠的に非地震性すべりが発生している可能性が示唆された。また、本震震源の周辺域では、7月30日の地震発生前から地震活動が活発化していることが確認された。地震時すべり域内の北緯51.4度、東経159.4度付近では、1996年6月から7月頃に短期的なすべりの発生が示唆された。その地域ではM8.8の地震発生時にも地震活動が活発化した可能性が見られた。