講演情報
[P25-09]2025年カムチャツカ半島地震による津波警報への住民対応の地域比較
*林 能成1、高橋 浩晃2 (1. 関西大学社会安全学部、2. 北海道大学地震火山研究観測センター)
2025年7月30日に発生したカムチャツカ地震によって日本国内の広い範囲に津波警報・津波注意報が発表された。国レベルで地震・津波対策が重点的に推進されている2つの地域である「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域」と「南海トラフ地震防災対策推進地域」の両方に、同時に津波警報が出されることは極めて珍しいことから、両地域の津波対応の実態を比較することを目的にインターネットによるアンケート調査を実施した。
調査期間は地震発生8日後の8月5日から12日までで、北海道、宮城県、神奈川県、静岡県、和歌山県の5道県にて、避難した人を各200人集める目標で実施した。各道県とも、避難していない人の方が圧倒的に多い状況であり、神奈川県(161人)と和歌山県(140人)は目標とした200人に達しなかった。質問内容は、「避難を決めたきっかけ」、「避難した場所」、「避難場所までの移動手段」、「避難をやめた時間」、「避難場所への移動中の問題点「避難場所に滞在時の問題点」などからなる。また、避難した人と避難しなかった人の準備状況や防災知識の比較のため、この5道県と愛知、徳島、高知、宮崎の4県、合計9道県で津波警報を知った時の対応行動など避難前の事柄について各400人から回答を集めている。
以下、調査結果の概要を示す。
まず、避難を決めた一番大きなきっかけについて、地域差が見られた。全道県で「津波の情報による自らの意思」が最も高く、5道県全体の平均は34%であったが、宮城県は43%と高く、神奈川県は25%と低く違いが大きかった。また和歌山県では防災行政無線のスピーカーによる呼びかけが30%に達し、これは全体の平均の19%よりも10%以上高かった。職場の指示という回答も地域差があり、静岡県は12%と多かったが、和歌山県は3%にとどまった。
避難した場所については、事前に決めていた自宅近くの避難場所と事前に決めていた職場・学校近くの避難場所が全ての道県で50%以上となった。和歌山と宮城の2県で特に高く、事前の津波避難対策が進んでいた可能性を示唆している。
避難場所への移動手段については、神奈川県のみ徒歩が最も多く、他の4道県では自動車が最も多かった。特に宮城、和歌山の両県では自動車が徒歩の倍近い人数であった。
避難場所への移動時の問題については、道路の混雑・渋滞を指摘する人が多く、北海道と宮城県では40%を超えていた。津波避難については、原則的に徒歩避難とされているが、首都圏にある神奈川県以外では、自動車による避難を選択した人が多かったことが示された。都市部と地方での日常的な交通手段の違いを踏まえて、実効性のある津波避難対策のために地域差を考慮するべきかもしれない。
避難をやめた時間については、40%以上の人は13時頃までよりも早い時間と回答している。関東以西で津波警報が津波注意報に切り替わったのが18:30、全国で津波注意報に切り替わったのが20:45であったことから、この結果は一度は避難した人が早めに切り上げていたことを示す。各種の報道でも、早めに避難をやめて戻った人が多かったとされており、この結果はそれらと調和的である。今回出された津波警報は、各地方のハザードマップに示されていた「最大級の津波」とは異なる波源域で発生したものであるため、実際に観測された津波は最大で1mを超える程度であった。そのため、津波の観測状況や周囲の人の行動を見て、早めに避難をやめた人が多かった可能性がある。また、避難場所の問題点については、全ての道県で「暑かった」という回答が最も多かった。
以上、速報的なデータ分析でも、津波避難の中身について、地域差が見られた。発表では避難しなかった人のデータ分析も進め、津波避難に関わる地域性を明らかにする。
謝辞:本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第3次)」の支援を受けて実施したものです。
調査期間は地震発生8日後の8月5日から12日までで、北海道、宮城県、神奈川県、静岡県、和歌山県の5道県にて、避難した人を各200人集める目標で実施した。各道県とも、避難していない人の方が圧倒的に多い状況であり、神奈川県(161人)と和歌山県(140人)は目標とした200人に達しなかった。質問内容は、「避難を決めたきっかけ」、「避難した場所」、「避難場所までの移動手段」、「避難をやめた時間」、「避難場所への移動中の問題点「避難場所に滞在時の問題点」などからなる。また、避難した人と避難しなかった人の準備状況や防災知識の比較のため、この5道県と愛知、徳島、高知、宮崎の4県、合計9道県で津波警報を知った時の対応行動など避難前の事柄について各400人から回答を集めている。
以下、調査結果の概要を示す。
まず、避難を決めた一番大きなきっかけについて、地域差が見られた。全道県で「津波の情報による自らの意思」が最も高く、5道県全体の平均は34%であったが、宮城県は43%と高く、神奈川県は25%と低く違いが大きかった。また和歌山県では防災行政無線のスピーカーによる呼びかけが30%に達し、これは全体の平均の19%よりも10%以上高かった。職場の指示という回答も地域差があり、静岡県は12%と多かったが、和歌山県は3%にとどまった。
避難した場所については、事前に決めていた自宅近くの避難場所と事前に決めていた職場・学校近くの避難場所が全ての道県で50%以上となった。和歌山と宮城の2県で特に高く、事前の津波避難対策が進んでいた可能性を示唆している。
避難場所への移動手段については、神奈川県のみ徒歩が最も多く、他の4道県では自動車が最も多かった。特に宮城、和歌山の両県では自動車が徒歩の倍近い人数であった。
避難場所への移動時の問題については、道路の混雑・渋滞を指摘する人が多く、北海道と宮城県では40%を超えていた。津波避難については、原則的に徒歩避難とされているが、首都圏にある神奈川県以外では、自動車による避難を選択した人が多かったことが示された。都市部と地方での日常的な交通手段の違いを踏まえて、実効性のある津波避難対策のために地域差を考慮するべきかもしれない。
避難をやめた時間については、40%以上の人は13時頃までよりも早い時間と回答している。関東以西で津波警報が津波注意報に切り替わったのが18:30、全国で津波注意報に切り替わったのが20:45であったことから、この結果は一度は避難した人が早めに切り上げていたことを示す。各種の報道でも、早めに避難をやめて戻った人が多かったとされており、この結果はそれらと調和的である。今回出された津波警報は、各地方のハザードマップに示されていた「最大級の津波」とは異なる波源域で発生したものであるため、実際に観測された津波は最大で1mを超える程度であった。そのため、津波の観測状況や周囲の人の行動を見て、早めに避難をやめた人が多かった可能性がある。また、避難場所の問題点については、全ての道県で「暑かった」という回答が最も多かった。
以上、速報的なデータ分析でも、津波避難の中身について、地域差が見られた。発表では避難しなかった人のデータ分析も進め、津波避難に関わる地域性を明らかにする。
謝辞:本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第3次)」の支援を受けて実施したものです。

