講演情報
[P25-10]【再考】鯨類の集団座礁と大地震との関係
*織原 義明1 (1. 東京学芸大学教育学部)
2025年7月30日午前8時25分頃、カムチャツカ半島付近でマグニチュード8.8の地震が発生した。一方、その前日29日午後6時半頃、千葉県館山市の平砂浦海岸では、浅瀬に打ち上げられたマッコウクジラ4頭が発見された(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250730/k10014879211000.html)。
そして、このマッコウクジラ4頭の集団座礁とカムチャツカ半島付近の地震との関連が、SNSのみならずマスコミでも一時的に話題になった。あるTV番組では、海棲哺乳類の生態に詳しい国立科学博物館の田島木綿子研究主幹が、千葉県でのマッコウクジラ集団座礁は珍しく、また、マッコウクジラは超音波で周りを探索していることから、過去の例を参考にすると今回の座礁は、地震との関連を現段階で完全に否定はできない、とコメントしていた(https://www.youtube.com/watch?v=ZYUUoaW4U3E)。
そもそも鯨類の集団座礁と地震との関連を完全に否定することは、いわゆる悪魔の証明で非常に困難なことである。そこで、発表者らは2018年の日本地震学会秋季大会にて、両者に時空間的な相関があるかどうかを検証した。1923年から2011年に国内で2頭以上の鯨類座礁は48事例あった。一方、座礁現場から半径200キロ以内で発生したマグニチュード(M)6以上(震源の深さ100km以浅)の地震は計429回あった。このうち、座礁から30日以内に発生した地震は2回だけだった。ただし、このとき引用した日本鯨類研究所のストランディングレコードは、現在国立科学博物館が公開しているストランディングデータベースよりも、データ数が少なかったことがわかっている。そこで、本研究では国立科学博物館ホームページにあるストランディングデータベース(https://www.kahaku.go.jp/research/db/zoology/marmam/drift/index.php)を使用する。
マッコウクジラが2頭以上で同時に座礁する集団座礁(マス・ストランディング)は、以下の6例になる。
[1] 1942/10/19 鹿児島県大島郡龍郷町円 13頭
[2] 2002/01/22 鹿児島県川辺郡大浦町小湊海岸 14頭
[3] 2011/01/08 鹿児島県南さつま市大浦干拓 2頭
[4] 2011/01/26 鹿児島南さつま市小湊漁港地先 3頭
[5] 2018/11/23 北海道国後島南部クリル自然保護区(根室海峡) 2頭
[6] 2019/02/21 鹿児島県南さつま市笠沙町片浦小浦 2頭
これらの後に、世界中でマグニチュード8.5以上の地震はあったのであろうか。USGS(https://earthquake.usgs.gov/earthquakes/search/)によれば、1942年10月19日から2024年12月31日までに発生したマグニチュード8.5以上の地震は13個ある。しかし、マッコウクジラの集団座礁から30日以内に発生した地震はひとつもない。時間的に近接している事例は、2025年7月29日千葉県館山市平砂浦海岸4頭と、2025年7月30日ロシア・カムチャツカ半島付近の地震がはじめてとなる。ただし、この事実のみで両者に関連がある、または関連がないと断定することはできない。
国立科学博物館の田島木綿子研究主幹のコメントにある「過去の例」とは、おそらく、2011年東北地方太平洋沖地震と、その7日前に茨城県で発生したカズハゴンドウ54頭のマス・ストランディングのことと考えられる。
国立科学博物館ホームページのストランディングデータベースによれば、1923年から2024年までに、茨城県で確認されたマス・ストランディングは以下の14例である。
[1] 1927/12/01 鹿島郡波崎町波崎海岸出洲 カズハゴンドウ 113頭
[2] 1929/11/16 鹿島郡鹿島町平井海岸 スナメリ 16頭
[3] 1938/01/05 鹿島郡波崎町字湖 コビレゴンドウ 130頭
[4] 1990/02/19 鹿島郡鹿島町明石海岸 カズハゴンドウ 30頭
[5] 2001/02/11 波崎町(現神栖市) カズハゴンドウ 53頭
[6] 2002/01/22 ひたちなか市平磯町平磯海岸 カズハゴンドウ 2頭
[7] 2002/02/24 鹿島郡波崎町柳川海岸 カズハゴンドウ 24頭
[8] 2002/02/24 鹿島郡波崎町波崎海水浴場 カズハゴンドウ 85頭
[9] 2002/03/26 鹿嶋市平井海岸ハイアメニティビーチ オガワコマッコウ 2頭
[10] 2006/04/23 鹿嶋市清水海岸 種不明イルカ 8頭
[11] 2010/04/18 神栖市須田浜 カズハゴンドウ 4頭
[12] 2011/03/04 鹿嶋市下津(オリツ)海岸 カズハゴンドウ 54頭
[13] 2012/04/16 茨城県東茨城郡大洗町夏海海岸 スジイルカ 2頭
[14] 2015/04/10 鉾田市台濁沢~上幡木 カズハゴンドウ 156頭
本研究では三陸沖および茨城周辺で発生した地震を対象に、これらのマス・ストランディングと地震との関連について考察する。
謝辞:本研究は東京大学地震研究所共同利用(2024- KOBO03)の援助をうけました。
そして、このマッコウクジラ4頭の集団座礁とカムチャツカ半島付近の地震との関連が、SNSのみならずマスコミでも一時的に話題になった。あるTV番組では、海棲哺乳類の生態に詳しい国立科学博物館の田島木綿子研究主幹が、千葉県でのマッコウクジラ集団座礁は珍しく、また、マッコウクジラは超音波で周りを探索していることから、過去の例を参考にすると今回の座礁は、地震との関連を現段階で完全に否定はできない、とコメントしていた(https://www.youtube.com/watch?v=ZYUUoaW4U3E)。
そもそも鯨類の集団座礁と地震との関連を完全に否定することは、いわゆる悪魔の証明で非常に困難なことである。そこで、発表者らは2018年の日本地震学会秋季大会にて、両者に時空間的な相関があるかどうかを検証した。1923年から2011年に国内で2頭以上の鯨類座礁は48事例あった。一方、座礁現場から半径200キロ以内で発生したマグニチュード(M)6以上(震源の深さ100km以浅)の地震は計429回あった。このうち、座礁から30日以内に発生した地震は2回だけだった。ただし、このとき引用した日本鯨類研究所のストランディングレコードは、現在国立科学博物館が公開しているストランディングデータベースよりも、データ数が少なかったことがわかっている。そこで、本研究では国立科学博物館ホームページにあるストランディングデータベース(https://www.kahaku.go.jp/research/db/zoology/marmam/drift/index.php)を使用する。
マッコウクジラが2頭以上で同時に座礁する集団座礁(マス・ストランディング)は、以下の6例になる。
[1] 1942/10/19 鹿児島県大島郡龍郷町円 13頭
[2] 2002/01/22 鹿児島県川辺郡大浦町小湊海岸 14頭
[3] 2011/01/08 鹿児島県南さつま市大浦干拓 2頭
[4] 2011/01/26 鹿児島南さつま市小湊漁港地先 3頭
[5] 2018/11/23 北海道国後島南部クリル自然保護区(根室海峡) 2頭
[6] 2019/02/21 鹿児島県南さつま市笠沙町片浦小浦 2頭
これらの後に、世界中でマグニチュード8.5以上の地震はあったのであろうか。USGS(https://earthquake.usgs.gov/earthquakes/search/)によれば、1942年10月19日から2024年12月31日までに発生したマグニチュード8.5以上の地震は13個ある。しかし、マッコウクジラの集団座礁から30日以内に発生した地震はひとつもない。時間的に近接している事例は、2025年7月29日千葉県館山市平砂浦海岸4頭と、2025年7月30日ロシア・カムチャツカ半島付近の地震がはじめてとなる。ただし、この事実のみで両者に関連がある、または関連がないと断定することはできない。
国立科学博物館の田島木綿子研究主幹のコメントにある「過去の例」とは、おそらく、2011年東北地方太平洋沖地震と、その7日前に茨城県で発生したカズハゴンドウ54頭のマス・ストランディングのことと考えられる。
国立科学博物館ホームページのストランディングデータベースによれば、1923年から2024年までに、茨城県で確認されたマス・ストランディングは以下の14例である。
[1] 1927/12/01 鹿島郡波崎町波崎海岸出洲 カズハゴンドウ 113頭
[2] 1929/11/16 鹿島郡鹿島町平井海岸 スナメリ 16頭
[3] 1938/01/05 鹿島郡波崎町字湖 コビレゴンドウ 130頭
[4] 1990/02/19 鹿島郡鹿島町明石海岸 カズハゴンドウ 30頭
[5] 2001/02/11 波崎町(現神栖市) カズハゴンドウ 53頭
[6] 2002/01/22 ひたちなか市平磯町平磯海岸 カズハゴンドウ 2頭
[7] 2002/02/24 鹿島郡波崎町柳川海岸 カズハゴンドウ 24頭
[8] 2002/02/24 鹿島郡波崎町波崎海水浴場 カズハゴンドウ 85頭
[9] 2002/03/26 鹿嶋市平井海岸ハイアメニティビーチ オガワコマッコウ 2頭
[10] 2006/04/23 鹿嶋市清水海岸 種不明イルカ 8頭
[11] 2010/04/18 神栖市須田浜 カズハゴンドウ 4頭
[12] 2011/03/04 鹿嶋市下津(オリツ)海岸 カズハゴンドウ 54頭
[13] 2012/04/16 茨城県東茨城郡大洗町夏海海岸 スジイルカ 2頭
[14] 2015/04/10 鉾田市台濁沢~上幡木 カズハゴンドウ 156頭
本研究では三陸沖および茨城周辺で発生した地震を対象に、これらのマス・ストランディングと地震との関連について考察する。
謝辞:本研究は東京大学地震研究所共同利用(2024- KOBO03)の援助をうけました。
