講演情報

[S02-04]海底深部掘削孔内歪計で観測した歪地震動と地殻変動

*辻 修平1、荒木 英一郎1、松本 浩幸1、町田 祐弥1 (1. 海洋研究開発機構)
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JAMSTECでは、プレート境界で発生する地震や地殻変動を高精度にモニタリングするため、長期孔内観測点の整備を進めている。最新の観測点であるC9038Bは、2023年11月に紀伊水道沖に設置され、海底には水圧計、海底下500mの掘削孔内には孔内光ファイバ歪計および間隙水圧計が設置された。孔内光ファイバ歪計は、マンドレルの周辺にコイル状に巻き付けられた光ファイバの伸縮を計測することで歪を計測する。この構造により、掘削孔内の限られた空間に長基線を収めつつ、水平面内の複数の歪成分を観測することができる。
これまでの研究では、有限要素法(FEM)を利用して、孔内光ファイバ歪計の応答解析を行ってきた(辻・他, 2024, 地震学会秋季大会;辻・他, 2025a, b, JpGU)。これらの解析では、地殻変動と地震動の両方に対する応答を評価した。地殻変動に関しては、鉛直荷重による変形に対する応答を調べた。その結果、2.5×10⁻¹¹歪/Paの応答を示すことが明らかとなった。地震動については、歪テンソルの各成分に関する感度を評価した。その結果、水平面内の直歪2成分に対して約20%、面積歪に対して約30%の感度を持ち、せん断成分にはほとんど感度がないと推定された。
本発表では、これまでの解析結果と実際の観測データとの比較を通じて、測器特性のさらなる検証を行った。地殻変動については、2025年7月30日にカムチャツカ半島付近で発生した地震に伴う津波による荷重応答を調べた。地震動については、辻・他(2025a, JpGU)で行った広帯域地震計との比較を、より多くの地震を対象に実施した。
カムチャツカ半島の地震に伴う津波は、海底水圧計と孔内光ファイバ歪計の両方で波形が観測され、両者の波形は良好に一致していた。第一波に注目すると、海底水圧計では最大320Pa、孔内光ファイバ歪計では最大8ナノ歪の振幅が記録された。この振幅比は、FEM解析で得られた応答係数と一致していた。これは孔内光ファイバ歪計が鉛直荷重に対して高い応答性を持ち、津波の波高推定にも利用可能であることを示している。
地震動の解析では、周辺の広帯域地震計のアレイ解析により得られた歪場と、孔内光ファイバ歪計の記録を比較した。比較には、USGS地震カタログに記載されたM7以上の遠地地震のうち、明瞭な波群が確認できた11イベントを対象とした。歪場は、Spudich et al. (1995)の手法に基づき、歪テンソルの水平3成分を推定した。アレイの規模を考慮し、20〜100秒のバンドパスフィルタを適用し、主に表面波成分を用いて比較を行った。
孔内光ファイバ歪計の観測した歪成分を推定するために、歪テンソルの水平3成分の線形結合により、歪計の記録を再現できると仮定し、最小二乗法により各成分の係数を推定した。対象地震の大半において孔内光ファイバ歪計の記録とフィッティング結果は相関係数0.8以上を示して一致した。再現性が低かった地震のパーティクルモーションを確認したところ、北東−南西方向に卓越した振動成分が含まれていた。この方向は観測点が設置されている堆積層の溝状地形の走向と一致している。このことから、地形構造が波動場に影響を与えた可能性が示唆される。
直歪成分の係数は、ほとんどの地震で20〜40%の範囲で推定され、FEM解析結果と整合的であった。一方、せん断成分の係数は−40%〜20%とばらつきが大きく、FEM解析との一致は見られなかった。今後の解析により、せん断成分が観測されるメカニズムを明らかにしていきたい。