講演情報

[S03-02]超稠密GNSSデータを用いた時系列と変位ベクトルスタッキングによる沖縄本島周辺で発生する短期的SSEの検出

*畔蒜 尚幸1、西村 卓也2、宮﨑 真一1、松島 健3 (1. 京都大学大学院 理学研究科、2. 京都大学防災研究所、3. 九州大学大学院理学研究院 附属地震火山観測研究センター)
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Slow Slip Event(以下:SSE)は、地震波を放出せず、測地学的なシグナルのみが観測されるスロー地震の一種である。沖縄本島周辺の琉球海溝沿いでは、数日から数週間にわたる短期的SSEの発生が報告されており(Nishimura, 2014)、超低周波地震(VLFE)や低周波地震(LFE)と同期して発生することが報告されている(Nakamura, 2017)。しかし、沖縄本島周辺ではGNSS観測点が主に南部に集中しており、検出能力に地域的な偏りがあった。これまでに報告されていたSSEは主に島の南方沖で検出がされていたが、SSEに伴う地表変位は2-3mm程度と小さいために本当に南部のみで発生しているのかは不明であった。

 近年、沖縄本島周辺では京都大学などの研究機関とソフトバンク株式会社のGNSSデータが利用可能となり、GNSS観測点数が3倍に増え、「超稠密GNSS観測網」が形成された。本研究では、2002年から2025年3月までの期間における、国土地理院GEONET、京都大学、海上保安庁、九州大学、ソフトバンクの観測点、計62点を用いた。観測点の日座標値として、GipsyX Ver.2.3を用いて、バイアス整数化精密単独測位法(PPP-AR)により推定されたものを用いた。GNSSデータの前処理として、観測点周辺の植生などにより、座標値が乱れることがあるため、データの取捨選択を行った。具体的には、はじめに、目視にて明らかに解析に不適と判断した観測点を除外した。次に、アンテナ交換などに伴うオフセット補正を行った後、地心座標系のデータを東西・南北・上下成分の局所座標系に変換した。その後、目視にて明らかな外れ値を取り除いた後、欠測値の線形補間を行い、180日間での四分位偏差の1.8倍以上を外れ値として除去した。また、沖縄本島周辺を取り囲むノイズレベルの低い観測点10点に共通する短周期変動を共通誤差とみなして、全観測点のデータから除いた。

 これらの処理から得られたデータを用いて、約23年間のGNSS時系列スタッキングと変位スタッキングの2種類の手法で短期的SSEの検出を試みた。時系列スタッキングでは、Bletery and Nocquet(2023)によって提案された手法を一部改変し、各観測点・各成分における日々の観測変位(水平成分のみ)と計算変位の内積をスタックした。はじめに、琉球海溝に沿って沖縄本島を含む180km×300kmの領域を設定した。その中に10 km × 10 kmの仮想の小断層を10km間隔で配置し、プレート境界面(JAMSTEC, 2021)に沿ったプレート相対運動の方向のすべりを仮定して、小断層ごとに断層パラメーターを計算した。計算変位は、その小断層に対して、半無限弾性体中のすべり応答(Okada, 1992)を用いて求めた。その後、小断層ごとにスタック時系列を計算し、180日間の移動ウィンドウを1日ずつずらしながら、スタック時系列を一次関数およびステップ付き一次関数でフィッティングし、2つの関数に対する赤池情報量基準の差(ΔAIC)を算出して、SSEに伴う地表変位の有無を確認した。また、断層モデルから予測される方向の変位にのみ注目するため、正のステップ以外ではΔAICを0とした。これらを用いて、小断層を円として地図上に配置し、ΔAICカラースケールで表現することで、各小断層におけるΔAICの時空間的な変化を可視化した(Fig. 右)。

 一方、VLFEの多発期間(以下:VLFEバースト)に同期したSSEに伴う地表変位を検出するために、Asano et al.(2015)による2004年~2014年のVLFEカタログを使用した。VLFEバーストの閾値として、1~20回/日までの異なる発生回数を設定し、VLFEバーストの前後の変位をスタックすることにより、変位ベクトルの比較を行った。

 予備的結果として、時系列スタッキングのΔAICを用いたSSEの同定では、沖縄本島南部に加え、北部まで変位が及んでいるものと、南部のみが変位するという2つのパターンが認められた。これは、超稠密GNSS観測網を使用した本研究による新しい知見である。解析期間中には、北部のみでSSEが発生した事例は確認されなかった。変位スタッキングの結果では、南部において顕著な変位が検出され、さらに1日あたりのVLFE発生回数と平均スタック変位の間に相関が見られた。

<謝辞> 
 本研究では、「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて、ソフトバンク株式会社およびALES株式会社から提供を受けたGNSSデータを使用しました。また、断層パラメーターの推定には「南海トラフ〜南西諸島海溝域のプレート形状モデル」(JAMSTEC(2021), doi:10.17596/0002217)のデータおよびGAGEによるPlate Motion Calculator、 MORVEL (DeMets et al., 2010)を使用いたしました。国土地理院、海上保安庁と浅野陽一博士には、GNSSデータおよびVLFEデータ(Asano et al., 2015)の提供に感謝いたします。加えて、西川友章博士には多大なるご指導を賜り、深く感謝申し上げます。