講演情報

[S03-03]GNSSデータを用いた南海トラフ沿いの長期スロースリップイベントの包括的カタログの作成

*髙橋 輝起1、髙木 涼太1、日野 亮太1、岡田 悠太郎2 (1. 東北大学理学研究科、2. 東北大学災害科学国際研究所)
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スロースリップイベント (SSE) の詳細な時空間分布の把握は、プレート境界における応力解放過程の理解のために重要である。SSEは、その継続時間によって、短期的SSE(継続時間:数日〜数週間)と長期的SSE(継続時間:数ヶ月〜数年)に分けられることがある。M 8-9の巨大地震が繰り返し発生する西南日本の南海トラフ沈み込み帯では、統一的な手法を用いた短期的SSEのカタログが存在するのに対し (Nishimura et al., 2013; Okada et al., 2022)、南海トラフ全域を対象として長期的SSEの断層モデルを推定した包括的カタログは存在しない。長期間の包括的SSEカタログは、その時空間分布の詳細を明らかにし、隣接セグメントとの相互作用や固着域との関係などを議論、解明する上で重要である。そこで、本研究では、28年間のGNSSデータを用いて、南海トラフ沿い全域において、統一的な手法を用いた長期的SSEの系統的検出を行い、包括的な長期的SSEカタログの作成を試みる。本研究では、GEONET観測点における日座標値データ(Takamatsu et al., 2023)を用いる。長期的SSEによる数mm程度の微小な地殻変動を検出するため、まず時系列データのクリーニングを行なった。その手順は、①観測点の保守によるオフセット除去、②相対変位による共通誤差低減、③地震時オフセット除去、④外れ値の除去、⑤2004年紀伊半島南東沖地震、2011年東北沖地震、2016年熊本地震の余効変動除去、⑥季節変動の除去、⑦Wdowinski et al. (1997)の空間フィルターを用いた共通誤差の除去である。 次に、長期的SSEの検出のため、処理後の時系列に対してGriD-SSE (Takagi et al., 2019) を適用した。GriD-SSEは、矩形断層モデルと継続時間300日のランプ関数から計算される理論時系列を、観測時系列データにフィッティングすることにより、SSEを検出しその矩形断層モデルを推定する。プレート境界面上の矩形断層の中心位置及びSSE開始日についてはグリッドサーチし、各グリッドにおける最適な断層面積とすべり角・すべり量は非線形インバージョン(Matsu’ura and Hasegawa, 1987)により推定する。その後、一定の時空間範囲内で時系列残差を最小化するグリッドを選ぶことで、SSEを検出する。本研究では、Takagi et al. (2019)の改良として、共通誤差の長周期成分の除去のための並進成分の推定(e.g., Nishimura et al., 2013)と、面積とすべり量間のトレードオフ低減と、異常モデルの除去のための応力降下量と断層アスペクト比に関する拘束を導入した。 GriD-SSEの適用の結果、Ozawa et al. (2024)でコンパイルされている48事例の長期的SSEの内の47事例を検出することができた。さらに、先行研究で未報告のSSEの一例として、2021~2022年に豊後水道で発生したMw 6.6のSSEを検出した。このSSEの開始後、2022年1月にM 6.6日向灘スラブ内地震が発生した。この結果は、進行中の長期的SSEが2022年日向灘地震の発生を誘発した可能性があることを示唆している。また、本研究の結果により、Takagi et al. (2019)で議論された長期的SSEのマイグレーションが四国西部よりも東まで及んでいる可能性が示唆された。今後は、SSEの継続時間と断層モデルの再推定等により南海トラフ全域における長期的SSEのカタログを精緻化し、長期的SSEの時空間発展や通常地震との相互作用の可能性をより詳細に議論する。