講演情報

[S04-03]日本沈み込み帯のスラブ下構造不均質とマントルダイナミクス

*鈴木 基矢1、趙 大鵬1、豊国 源知1 (1. 東北大学理学研究科地震噴火予知研究観測センター)
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沈み込み帯におけるプレート境界型地震の発生は、主に沈み込んでいるスラブ上面付近の構造不均質にコントロールされると考えられている。近年は、スラブ下のマントルに存在する高温で流体を含む上昇流 (Subslab hot mantle upwelling, SHMU)の存在が、スロー地震や海溝型巨大地震、巨大噴火の発生に影響を及ぼす可能性が指摘されている (e.g., Bodmer et al., 2018; Fan & Zhao, 2021; Zhao & Hua, 2021; Toyokuni et al., 2022)。日本では、2011年東北沖地震(Mw 9.0)を契機として、防災科学技術研究所によりS-net(Seafloor observation network for earthquakes and tsunamis along Japan Trench)が設置されており、特に東日本前弧域で浅部・深部構造モデルの大幅な改善が見込める。既に、S-netにおける近地地震の到着時刻データを用いた走時トモグラフィーが行われつつある (例えば、Hua et al., 2020; Yu & Zhao, 2020; Zhao et al., 2022)。一方、遠地地震は、P波データがFan & Zhao (2021) で一部利用されたものの,大量の近地・遠地データを利用してリージョナルトモグラフィーを行った先行研究はまだない。本研究では、2017年1月-2024年6月に発生した遠地地震 (M > 6.5)のうち176個について、Hi-net (High sensitivity seismograph network Japan) 及び S-netの記録を同時解析した。その結果、123,233個のP波到着時刻データを得た。このうち、S-net観測点のデータ数は13,942個である。さらに、近地・遠地地震データを同時に用いるインバージョンを行い、日本列島下の深さ700 kmまでの3次元P波・S波速度構造モデルを求めた。その結果、沈み込む太平洋プレートを反映する厚さ約90 kmの高速度異常や、マントルウェッジ中の上昇流を反映し、背弧域の深さ約150 kmから活火山直下へ続く低速度異常が明瞭にイメージングされた。これらは沈み込み帯の特徴的な構造であり、従来の陸域地震観測網のみを用いた地震波トモグラフィー (e.g., Zhao et al., 2012; Liu & Zhao, 2016) の結果と共通している。沈み込む太平洋スラブの下には顕著な低速度異常が存在し、これはスラブの深部沈み込みに伴う高温のマントル上昇流やリターンフローを反映している可能性がある。スラブ下低速度異常(subslab low-velocity anomaly, SLVA) は、日本海溝の北部および南部の前弧域・アウターライズ域において二極型の分布を示し、これらの地域ではプレート間スロー地震が活発に発生している。日本海溝中部の地下には SLVA の空白域(ギャップ)が存在し、この領域ではプレート間固着が強く、2011 年東北地方太平洋沖地震(Mw 9.0)が発生した。SLVA の浮力・熱・メルトが複合的に作用することで、プレート境界の地震発生帯のセグメンテーションに寄与している可能性が高い。