講演情報
[S08-05]DAS記録にみる小–中規模地震の多様な地震波動場とその震源過程
*船曳 祐輝1、宮澤 理稔2、荒木 英一郎3、田中 愛幸4 (1. 京都大学大学院理学研究科、2. 京都大学防災研究所、3. 海洋研究開発機構、4. 東京大学大学院理学研究科)
観測波形は震源時間関数と伝播経路の関数の畳み込み積分であり、震源での破壊過程を反映する。そのため、地震波の逆解析で震源過程を理解する研究が古くから成されてきた。しかし、従来の解析で得られるのはあくまで震源の平均的な描像であり、断層破壊の開始や終了が突発的か漸進的か、破壊伝播速度がどのように時間発展するのかといった細かな破壊過程は十分に解明されていない。特に小–中規模地震では1 Hz以上の高周波成分が卓越するが、それらは複雑な地下構造の影響を強く受けるため、震源過程解析に用いることが困難であり、このために小–中規模地震の破壊過程の理解はいまだ不十分である。
Distributed Acoustic Sensing (通称: DAS)と呼ばれる、光ファイバーケーブル内を通る後方散乱光の位相差から、ケーブルの軸歪を計測する観測技術が、近年注目を集めている。DASは光ファイバーケーブルそのものを地震動センサーとするため、従来の地震観測点による観測とは異なり、地震動を地震波形ではなく、地震波動場として捉えることが可能である。このDASの特性より、たとえ単点では不明瞭な信号でも、多点で稠密観測を行うことで、信号として明瞭に捉えることが可能であり、このおかげで、海中断層帯(Lindsey et al., 2019)や、反射断面(Miyazawa, 2024)など、従来の地震計では捉えることが困難であった地下構造の取得が可能となっている。また、DASの欠点として、ケーブルに沿った1成分しか記録しないことや、測定原理が従来の地震計とは異なるため、その波形と実際の地盤震動の関連が不透明であることがしばしば挙げられるが、これらの欠点も、DAS記録がS波だけでなく、P波の位相を利用した震源メカニズムの推定が可能なほど明瞭にP波に記録する(Li et al., 2023)ことや、DASから得られる歪速度や歪と、地震計から得られる加速度や速度が比例するのが定量的に示されたこと(Zhai et al., 2025)、さらに、S波やP波の振幅からマグニチュードの推定(Yin et al., 2023)や震源メカニズムの推定(Funabiki & Miyazawa, 2025)が可能となったことで、克服されつつある。
このDASを用いることで、地震波の高周波成分からしか得られない、小-中規模地震の震源過程の詳細が理解可能であると考える。能登半島では、2020年頃から群発地震が発生していることが報告されており、その監視のため、2023年の1-3月、そして7-9月にDAS観測が実施された(田中ほか、2023)。得られた地震波動場を観察すると、近しい地域で発生した、似た気象庁マグニチュードの地震に由来する波であっても、ちょうどP波が到達したのと同時に最大振幅を記録する地震波、0.5秒間隔で2つのイベントが発生したように見える地震波、P波の到達から0.2秒程度の間微小に震動した後に最大振幅を記録する地震波など、様々な「個性」を確認できる。この傾向は周波数領域で見た場合にも同様であり、同じChannelに到達した地震波であっても、5-7Hz周辺にピークを持つ地震波、あるいは8-20Hzに複数のピークを持つ波など、様々な傾向を示す。震源由来の直達波は、交通ノイズなどの他の波と比較して、はるかに多くのChannelでほぼ同時に到達するため、地震波動場で見た場合の違いは一目瞭然である。前述した各地震波の特徴は、各Channelにおいて、そのP波の到達時刻差と整合的に出現しており、そのために、各地震波の「個性」は、震源における破壊過程の違いを直接反映するものと考えられる。
そこで本発表では、そういった震源過程を反映していると思われる地震波動場について紹介し、さらにDAS記録から小-中規模地震の震源過程を得る第一歩として、「震源由来の直達P波は、P波の到達時刻差と同じ走時差で各Channelに到達する。また、直達P波により励起された地表面付近の散乱波は、ランダムノイズと見なせ、足し合わせば消える」という仮定の元、連続する300-400Channel(ケーブル長約2km)のDAS記録に対し、P波到達時刻に合わせて観測波形を整列・重合する、いわゆるスラントスタックを施すことで、震源由来の直達波の抽出を試みる。この際、ただ足し合わせて消すだけでなく、地震波動場に対しFKフィルタをかけることで、地表面付近の散乱波の除去も試みる。さらに、抽出した直達波を積分し、これを震源時間関数として利用可能か、あるいは震源過程解析にどれほど有用であるかについても検討する。
Distributed Acoustic Sensing (通称: DAS)と呼ばれる、光ファイバーケーブル内を通る後方散乱光の位相差から、ケーブルの軸歪を計測する観測技術が、近年注目を集めている。DASは光ファイバーケーブルそのものを地震動センサーとするため、従来の地震観測点による観測とは異なり、地震動を地震波形ではなく、地震波動場として捉えることが可能である。このDASの特性より、たとえ単点では不明瞭な信号でも、多点で稠密観測を行うことで、信号として明瞭に捉えることが可能であり、このおかげで、海中断層帯(Lindsey et al., 2019)や、反射断面(Miyazawa, 2024)など、従来の地震計では捉えることが困難であった地下構造の取得が可能となっている。また、DASの欠点として、ケーブルに沿った1成分しか記録しないことや、測定原理が従来の地震計とは異なるため、その波形と実際の地盤震動の関連が不透明であることがしばしば挙げられるが、これらの欠点も、DAS記録がS波だけでなく、P波の位相を利用した震源メカニズムの推定が可能なほど明瞭にP波に記録する(Li et al., 2023)ことや、DASから得られる歪速度や歪と、地震計から得られる加速度や速度が比例するのが定量的に示されたこと(Zhai et al., 2025)、さらに、S波やP波の振幅からマグニチュードの推定(Yin et al., 2023)や震源メカニズムの推定(Funabiki & Miyazawa, 2025)が可能となったことで、克服されつつある。
このDASを用いることで、地震波の高周波成分からしか得られない、小-中規模地震の震源過程の詳細が理解可能であると考える。能登半島では、2020年頃から群発地震が発生していることが報告されており、その監視のため、2023年の1-3月、そして7-9月にDAS観測が実施された(田中ほか、2023)。得られた地震波動場を観察すると、近しい地域で発生した、似た気象庁マグニチュードの地震に由来する波であっても、ちょうどP波が到達したのと同時に最大振幅を記録する地震波、0.5秒間隔で2つのイベントが発生したように見える地震波、P波の到達から0.2秒程度の間微小に震動した後に最大振幅を記録する地震波など、様々な「個性」を確認できる。この傾向は周波数領域で見た場合にも同様であり、同じChannelに到達した地震波であっても、5-7Hz周辺にピークを持つ地震波、あるいは8-20Hzに複数のピークを持つ波など、様々な傾向を示す。震源由来の直達波は、交通ノイズなどの他の波と比較して、はるかに多くのChannelでほぼ同時に到達するため、地震波動場で見た場合の違いは一目瞭然である。前述した各地震波の特徴は、各Channelにおいて、そのP波の到達時刻差と整合的に出現しており、そのために、各地震波の「個性」は、震源における破壊過程の違いを直接反映するものと考えられる。
そこで本発表では、そういった震源過程を反映していると思われる地震波動場について紹介し、さらにDAS記録から小-中規模地震の震源過程を得る第一歩として、「震源由来の直達P波は、P波の到達時刻差と同じ走時差で各Channelに到達する。また、直達P波により励起された地表面付近の散乱波は、ランダムノイズと見なせ、足し合わせば消える」という仮定の元、連続する300-400Channel(ケーブル長約2km)のDAS記録に対し、P波到達時刻に合わせて観測波形を整列・重合する、いわゆるスラントスタックを施すことで、震源由来の直達波の抽出を試みる。この際、ただ足し合わせて消すだけでなく、地震波動場に対しFKフィルタをかけることで、地表面付近の散乱波の除去も試みる。さらに、抽出した直達波を積分し、これを震源時間関数として利用可能か、あるいは震源過程解析にどれほど有用であるかについても検討する。
