講演情報
[S08-11]2025年ドレーク海峡地震におけるプレート間およびプレート内の断層破壊
*山口 諒1、八木 勇治1、奥脇 亮1、井上 尚滉1 (1. 筑波大学)
沈み込み帯におけるプレート間断層からプレート内断層への地震破壊伝播は、断層形状の変化を伴うことによって、地震による津波の発生に大きな影響を及ぼす可能性がある。そのため、その発生プロセスを理解することは地震津波災害の予測やリスク評価を行う上で重要であり、数値シミュレーションや観測データの解析に基づく議論が行われてきた。時空間方向の詳細な破壊プロセスを推定する手法として、有限断層インバージョン(FFI)法が一般に用いられてきた。形状が異なる複数の断層を破壊した地震にFFI法を適用する場合、頑健な震源過程モデルを得るためには、断層形状の不確実性に起因するモデリング誤差を最小化する必要がある。しかしながら、活断層データベースや測地学的な調査、余震分布の情報に限りがある海域の地震では、断層形状の詳細な情報は不足することが多い。近年になって開発されたポテンシー密度テンソルインバージョン(PDTI)法は、断層形状を厳密に仮定することなく、遠地実体波形から断層形状と破壊伝播を安定かつ同時に推定することが可能な手法である。PDTI法は、沈み込み帯地震におけるプレート間およびプレート内断層の連動破壊過程を議論する上で、最も有効な手法の一つである。
2025年5月2日、ドレーク海峡の北西部に位置する沈み込み帯浅部において、モーメントマグニチュード(MW)7.7の地震が発生した。この沈み込み帯では南極プレートがスコティアプレートの下に6–7 mm/yrの速度で西向きに沈み込んでいる。本地震の破壊領域よりも東側には、左横ずれのプレート境界であるShackleton fracture zoneが北西–南東方向に伸びている。米国地質調査所(USGS)は、この地震について傾斜角33°の逆断層型のイベントを検出している。また、Global Centroid Moment Tensor projectも同様に傾斜角38°の逆断層型イベントを検出している。
本研究では、2025年ドレーク海峡地震の40観測点における遠地実体波P波形の鉛直成分をSAGE Data Management Centerよりダウンロードし、PDTI法を用いて解析した。ダウンロードした波形は機器特性を除いた後に0.8秒間隔でリサンプルした。震源域の1次元構造はCRUST1.0モデルを参照して設定し、グリーン関数の計算に用いた。モデル面はUSGSが同定した地震発生後3日間の余震分布をカバーするように設定した。
解析によって得られたポテンシーレート密度の時空間積分で計算されるトータルのモーメントテンソルは傾斜角36°の節面を持つ逆断層型であり、地震モーメントは4.7×1027 N m(MW 7.7)である。ポテンシー密度テンソルの空間分布は、北西–南東方向に約100 kmの範囲に広がっており、トータルのモーメントテンソルと同様に逆断層型のメカニズムが支配的である。破壊は震源において傾斜角10°–20°の低角逆断層型のメカニズムで開始し、震源時間(Origin time; OT)の10秒後まで浅い領域に向かって南南西方向へ伝播した。その後、破壊はプレート境界付近で約8秒間停滞し、OT+18–26秒には、傾斜角30°–40°の逆断層型のメカニズムを伴って、南東方向に伝播した。設定したモデル面に近い節面の滑りベクトルの方位角は、OT+10秒までは260°–280°であり、プレートの沈み込み方向と整合的であるが、OT+10–26秒の間に反時計回りに約45°回転し、海溝軸と概ね直交する方向に変化する。
本地震はOT+10秒までの初期破壊とOT+18秒以降の主破壊とで構成される。初期破壊における断層の傾斜角は、沈み込む帯の浅部における一般的なプレート間の断層の傾斜角と調和的である。一方で、主破壊における断層の傾斜角は30°–40°であり、プレート間の断層破壊のみを考える場合では説明がつきにくく、より高角なプレート内の断層破壊を示唆する可能性がある。本発表では、PDTI法によって得られた詳細な震源過程モデルに基づき、ドレーク海峡の複雑なテクトニクスに関連する可能性があるプレート間およびプレート内断層の破壊の混在について議論する。
2025年5月2日、ドレーク海峡の北西部に位置する沈み込み帯浅部において、モーメントマグニチュード(MW)7.7の地震が発生した。この沈み込み帯では南極プレートがスコティアプレートの下に6–7 mm/yrの速度で西向きに沈み込んでいる。本地震の破壊領域よりも東側には、左横ずれのプレート境界であるShackleton fracture zoneが北西–南東方向に伸びている。米国地質調査所(USGS)は、この地震について傾斜角33°の逆断層型のイベントを検出している。また、Global Centroid Moment Tensor projectも同様に傾斜角38°の逆断層型イベントを検出している。
本研究では、2025年ドレーク海峡地震の40観測点における遠地実体波P波形の鉛直成分をSAGE Data Management Centerよりダウンロードし、PDTI法を用いて解析した。ダウンロードした波形は機器特性を除いた後に0.8秒間隔でリサンプルした。震源域の1次元構造はCRUST1.0モデルを参照して設定し、グリーン関数の計算に用いた。モデル面はUSGSが同定した地震発生後3日間の余震分布をカバーするように設定した。
解析によって得られたポテンシーレート密度の時空間積分で計算されるトータルのモーメントテンソルは傾斜角36°の節面を持つ逆断層型であり、地震モーメントは4.7×1027 N m(MW 7.7)である。ポテンシー密度テンソルの空間分布は、北西–南東方向に約100 kmの範囲に広がっており、トータルのモーメントテンソルと同様に逆断層型のメカニズムが支配的である。破壊は震源において傾斜角10°–20°の低角逆断層型のメカニズムで開始し、震源時間(Origin time; OT)の10秒後まで浅い領域に向かって南南西方向へ伝播した。その後、破壊はプレート境界付近で約8秒間停滞し、OT+18–26秒には、傾斜角30°–40°の逆断層型のメカニズムを伴って、南東方向に伝播した。設定したモデル面に近い節面の滑りベクトルの方位角は、OT+10秒までは260°–280°であり、プレートの沈み込み方向と整合的であるが、OT+10–26秒の間に反時計回りに約45°回転し、海溝軸と概ね直交する方向に変化する。
本地震はOT+10秒までの初期破壊とOT+18秒以降の主破壊とで構成される。初期破壊における断層の傾斜角は、沈み込む帯の浅部における一般的なプレート間の断層の傾斜角と調和的である。一方で、主破壊における断層の傾斜角は30°–40°であり、プレート間の断層破壊のみを考える場合では説明がつきにくく、より高角なプレート内の断層破壊を示唆する可能性がある。本発表では、PDTI法によって得られた詳細な震源過程モデルに基づき、ドレーク海峡の複雑なテクトニクスに関連する可能性があるプレート間およびプレート内断層の破壊の混在について議論する。
