講演情報

[S09-07]2011年東北地方太平洋沖地震の震源域深部延長におけるプレート間地震とプレート内地震の相互作用

*大澤 亮1、日野 亮太1、吉田 圭佑1、大舘 未来1、太田 雄策1 (1. 東北大学大学院理学研究科)
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2011年東北沖地震(M 9.0)の震源域の深部側の太平洋スラブ内では,継続的に活発な地震活動がみられている.同地震の発生から約1ヶ月後の2011年4月7日にM 7.2の地震が宮城県沖で,さらにおよそ10年が経過した2021年2月13日と2022年3月16日に,それぞれM 7.3およびM 7.4の地震が福島県沖で発生し,いずれの地震でも東北地方を中心として広い範囲で有感となり,甚大な被害が生じた.東北沖地震後のスラブ内地震で顕著に活発化したのは,二重地震面の上面における活動であることが指摘されていたが(e.g., Kato and Igarashi, 2012; Delbridge et al., 2017),Delbridge et al. (2024)は上面と下面の間の応力中立面の深さが深くなっていると指摘している.
福島県沖で発生した2つのM7級スラブ内地震の発生過程では,両地震間の時空間的な近接性を考えると,プレート境界地震である東北沖地震の影響のみならず,スラブ内地震間での相互作用の影響も重要と考えられる.本研究では,2021年および2022年にM7スラブ内地震が発生した福島県沖の領域に注目し,そこでの地震活動の時空間変化の詳細な解析を通して,プレート境界とスラブ内で発生する地震間での相互作用を明らかにすることを目的として,これら地震の震源域周辺における地震活動の解析を行う.
2つのM7級の福島県沖のスラブ内は,それぞれが複数の断層の同時破壊であると考えられ(e.g. Kobayashi et al., 2023),震源域周辺の震源分布は非常に複雑である.そこで,精密な震源分布を求めるために,波形相関を用いたDouble-difference法 (Waldhauser and Ellsworth, 2000) による再決定震源に基づいた解析を行った.対象とした地震は,東北沖地震以前の期間を含む,2003年3月8日から2024年8月31日までに発生したM 2以上の地震である.このようにして得られた震源分布をもとに,上盤プレート内地震・プレート境界地震・スラブ内地震に分類した.また,2つのM7級福島県沖スラブ内地震の余震については,DBSCAN (Ester+, 1996) を用いたクラスタ分析によって余震が集中する面構造を抽出し,本震時の破壊が発生した断層面に対応すると解釈した.
2つの福島県沖スラブ内地震の震源域周辺のプレート境界上での地震活動度は,2011年の東北沖地震後に活発化したあと,時間の経過とともに減衰する傾向にあったが,2度目のM7地震である2022年M 7.4地震後に,この地震の震源となった断層の直上で顕著に活発化した.この活発化を契機に繰り返し地震の発生が認められるようになり,同時期に陸上GNSS観測によってプレート境界でのすべりによると考えられる微小な地殻変動が観測された.この領域でのプレート境界地震活動は,2022年以前は,2003年まで遡っても低調であることから,2022年M 7.4スラブ内地震の発生を契機としてプレート境界上で非地震性すべりが発生したことが示唆される.
スラブ内における地震の深さ分布にも,2つのM7級スラブ内地震は顕著な変化をもたらした.Delbridge et al.(2024)が示すように上面の活動域は2011年東北沖地震以前に比べて深部側へ拡大しているが,2021年および2022年のM7地震の発生により上面深部での地震数はさらに増加した.特に,2022年のM 7.4地震を契機としてこの地震の破壊面の深部側で多数の地震が発生するようになったことで,それ以前にくらべて上面の地震活動の範囲が深部側に拡大した.深部側で発生するようになった地震には,クラスタ分析により抽出されたM7地震の震源断層から外れた場所で発生したものも多く含まれている.これらは,本震の破壊面やその延長上に分布する「狭義の余震」ではなく,スラブ内大地震による応力擾乱によって誘発された地震である可能性が高い.東北沖地震による応力中立面の深化がスラブ内で大地震が発生した要因となった考えられるが,スラブ内で大地震が発生したことに伴って活動域がさらに拡大するという連鎖的な変化が進行していると考えられる.