講演情報

[S09-14]N-netを用いた南海トラフ浅部微動活動のモニタリング

*三好 崇之1、松澤 孝紀1、浅野 陽一1、太田 和晃1 (1. 国立研究開発法人防災科学技術研究所)
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2024年8月8日16時43分頃に日向灘を震源とするMJ7.1の地震(以下、2024年日向灘の地震)が発生した。気象庁は同日の19時15分に南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表した。三好・他(2024 地震学会)では、南海トラフ地震臨時情報へ貢献することも視野に早期に南海トラフ浅部微動のモニタリングを行うことを目的の一つとし、試験運用中の南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)の沖合システムのデータを用いて微動の検出と微動源の決定を試み、微動を捉えていることを明らかにした。その後、2025年1月13日21時19分頃にMJ6.9の地震(以下、2025年日向灘の地震)が発生し、南海トラフ地震臨時情報(調査中)が発表された。南海トラフ地域で発生する微動活動をいち早く把握することは急務であり、本研究では、三好・他(2024)の続報としてN-net沖合システムに加え、新たに完成した沿岸システムも用いた南海トラフ浅部微動活動のモニタリング結果を報告する。

N-netは沖合システムと沿岸システムの2システムからなり、それぞれ18観測点に加速度計、速度計、水圧計を有している。2025年6月にN-netの全システムが完成し、先行して敷設が完了した沖合システムは稼働中、沿岸システムは試験運用中の状態にある。本研究では、2024年7月以降は沖合システム18点のみ、2025年6月6日以降は試行的に沿岸システムも加えて、N-net全36点を解析の対象とした。使用したデータは、速度計で取得された3成分の波形データである。

モニタリングの方法は、目視による連続波形の確認と微動源の決定による。目視によって連続波形を確認したところ、日向灘から南海トラフ及び室戸沖に設置した沖合システムと沿岸システムの観測点で振幅が比較的小さいにもかかわらず継続時間の長い(1分以上)、微動と考えられる波形が確認できた。微動源の決定は、DONETでの微動モニタリング(太田 2021)、三好・他(2024)と同様の手法とした。データ処理の流れは、以下の通りである。まず、2-8Hzのバンドパスフィルタを連続波形に対して適用し、1 Hz でリサンプリングして各観測点のエンベロープ波形を作成する。次にエンベロープ相関法(Ide 2010; Ohta et al. 2019)を用いて微動の検出と微動源の決定を行う。震源決定されたものに対し、既存の地震カタログと照合し、微動、地震、エアガンといった分類を行い、可視化する。

微動源の決定の結果、足摺岬沖から日向灘の海域で微動が決定された。主な活動は、既報の2024年日向灘の地震の発生後(三好・他 2024)に加え、2025年日向灘の地震後、2025年5月下旬、7月中旬である。これらは超低周波地震の分布とも概ね調和的であった。また、2025年7月30日(日本時間)に発生したカムチャッカの地震(M8.8)後にも、表面波の振幅の大きい時間帯に、微動が検出された。ただし、エアガンとみられる振動が同時にみられ、作成されたカタログを連続波形で確認したところ、目視で微動と判断されるものの決定できていないものがあった。解析期間全体について、沖合システムのみの場合と沿岸システムを加えた場合を比較したところ、沖合・沿岸両システムを使用した場合の方が、微動源がやや沿岸側に決定された。この差については、観測点ごとの振幅補正を行っていないことが影響している可能性が考えられる。今後、観測点ごとの振幅の補正等の調整等を行うとともに、現在手動で実施している解析を安定的に自動で行い、網羅的に微動源を決定する予定である。

謝辞:本研究は文部科学省「南海トラフ地震等巨大地震災害の被害最小化及び迅速な復旧・復興に資する地震防災研究プロジェクト」の一環として実施しました。