講演情報

[S09-17]“地震モーメント比”から見た霧島火山における地震活動

*松本 聡1、平田 一聖2、永山 勇志2、江本 賢太郎1、松島 健1、市原 美恵3、行竹 洋平3、八木原 寛4 (1. 九州大学大学院理学研究院地震火山観測研究センター、2. 九州大学大学院理学府、3. 東京大学地震研究所、4. 鹿児島大学大学院理工学研究科)
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ある領域内の応力や強度についての情報はそこで発生する地震の発震機構・地震モーメントテンソルの特性として現れることが知られている。我々は領域内に発生する多様な地震モーメントテンソルを足し合わせと個々の地震モーメントの和の比(地震モーメント比,Mst,/M0)を通して、強度が媒質の強度に近接した状態であるかどうかの評価を試みてきた。弾性ひずみは主応力と45度をなす最大せん断方向の面で滑りが発生するとき最も“効率的”にひずみエネルギーが解放され,Mst,/M0は1になる.既存の亀裂が非最適面でかつ流体圧が高い場合,Mst,/M0は徐々に低下する.これは,モール円で考えると円の頂点に近い場合高く,内側に入ると低下することに対応する.ここから,Mst,/M0は地殻の臨界状態を示していると考えられる.例えば2016年熊本地震震源域では一連の地震発生前にこの値が高かったことが報告されている(Matsumoto, 2025)。一方、火山近傍の地震活動についてはマグマの貫入などによる応力集中や、流体の放出による強度低下などによって地震活動が励起されると考えられる。そこで本研究では近年活動の消長を繰り返している霧島火山において、Mst,/M0を求めることで活動の状態をどのようにとらえられるか見てみることにする。データはこの地域に展開されている定常・臨時地震観測点である。特に2011年新燃岳噴火以降は臨時地震観測点を増強し、検知能力が向上した。得られた地震波形を読み取り、2000年から2025年初旬までに得られた地震の発震機構解を用いた。発震機構解と地震のマグニチュードから経験式を用いてモーメントテンソルを求め、これらを重合することで応力場の空間変化を求めた。空間ブロックは水平0.05度ごとにブロックを区切り、それらを半グリッドずらしたブロックとともに、領域内に20個以上発震機構解が得られているものを採用した。その結果、霧島火山南東部がおおよそ南北に最小主圧縮応力(σ3)軸を持つ横ずれ断層型であり、新燃岳周辺も含めそのほかの地域では北西ー南東にσ3軸が向く横ずれ~正断層応力場であることがわかった。この方向は霧島火山群の火口配列の方向とほぼ一致する。各ブロックにおけるMstk/M0の分布をみると、新燃岳周辺においては小さい値を取り、周辺では大きい値を取る結果が得られた。これらは、新燃岳周辺において強度が低いかブロック内の応力が短波長で不均質であることに起因する。次に、これらの値の時間変化を見ることにする。ブロック内の地震数を増やすために、水平0.1度ごとに区切り、時間軸に沿って20個ごとにMstk/M0を計算した。およそ20年近くにわたる時間変化を見ることができた。これを見ると、火口から離れたところではMstk/M0がおおむね0.9以上であり、応力が媒質の強度に近い状態であることが示された。一方、新燃岳に近い空間ブロックにおいては0.5~0.9程度となり、時間的に大きく変動していることがわかった。Mstk/M0の変化要因(強度低下or応力短波長変化)を考えるために、各ブロックにおいてそれぞれの応力に対する発震機構解の平均ミスフィット角を調べた。このミスフィット角はTerakawa et al. (2016)が御岳山での応力場変化の検出を行うために提案した手法である。Mstk/M0とミスフィット角の時間変化を比べてみると、一部を除いておおむねミスフィット角の変化よりもMstk/M0の時間変化が大きい傾向がみられる。これは、マグマからの流体等による媒質の強度変化が時間的に変動していることを示唆しており、興味深い。