講演情報

[S10-01]海底活断層調査にもとづく布田川断層帯宇土半島北岸区間における第四紀後期の活動性

*大上 隆史1、多良 賢二2、一井 直宏2、細矢 卓志3、後藤 慧3 (1. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門、2. 川崎地質株式会社、3. 中央開発株式会社)
PDFダウンロードPDFダウンロード
産総研では、文部科学省委託事業「活断層評価の高度化・効率化のための調査手法の検証」(2022〜2024年度)の一環として布田川断層帯を構成する宇土半島北岸区間を対象とした海底活断層調査を実施した.地震調査研究推進本部地震調査委員会(2013)の長期評価によれば,宇土半島北岸区間は主として島原湾南部の海域に推定されているが,断層の具体的な位置形状,南西端位置,過去の活動に関する資料がほとんど得られていなかった.そこで,本研究では2022年度および2023年度には島原湾南部の海域において高分解能マルチチャンネル反射法音波探査(MCS)を実施し,断層の詳細な位置・形状を初めて明らかにするとともに,断層帯の南西側の端点位置を絞り込んだ(文科省・産総研,2023,2024).さらに,評価対象断層の過去の活動を検討する目的で,2024年度には海底活断層の近傍において海上ボーリング調査を実施した.本発表では,2024年度に実施した海上ボーリング調査の結果概要を示すとともに,高分解能MCSの結果および海上ボーリング調査の結果にもとづいて宇土半島区間の第四紀後期における平均変位速度および過去の活動履歴に関する検討した結果を報告する.
海上ボーリング調査は,島原湾南部の宇土半島北岸において2024年11月18日〜12月18日の期間に実施した.調査地点の選定にあたり,2022〜2023年度に調査対象海域で実施した高分解能MCSの結果にもとづくサイトサーヴェイにもとづき,最新活動時期を含む活動履歴や平均変位速度(上下方向)等の検討に資する地質情報が取得できると期待できる地点を絞り込んだ.その結果,熊本県宇城市三角町中村小田良(おだら)の沖合の1地点(GS-ODR-1地点.水深:約32.6 m)において,海底面下33 mまでの柱状地質試料を採取するための海上ボーリング調査を実施した.
海上ボーリング調査の結果,GS-ODR-1地点における海底面下の地層を大きく以下の4ユニット(上位からユニットA〜D)に区分した.ユニットA(深度0.00-5.85 m):沖積層に相当する海成の砂質堆積物.上部は貝殻片を多量に含む.また,凝灰質のマッドクラストを挟在する.海底面下3.28-3.49 mから採取した貝化石は5.34-5.66 cal kBPの放射性炭素年代を示す.ユニットB(深度5.85-7.32 m):沖積層下部に相当する最終氷期〜後氷期の細粒堆積物.全体に凝灰質で,ラミナが発達している.基底付近(深度7.20 m)のシルト層は17.75 cal kBPの放射性炭素年代を示す.ユニットC(深度7.32-14.12 m):阿蘇4噴火に伴う火砕物(Aso-4)およびその再移動で形成された堆積物.下部(深度9.60-14.12 m)の約4.5 mがAso-4(約9万年前)に対比される.ユニットD(深度14.15-33.41m):最終間氷期前後(海洋酸素同位体ステージ6〜5c)に形成された内湾〜河口低地堆積物.深度19.40〜32.65mの区間内の5層準を対象とした火山灰分析によれば,これらの堆積物中に阿蘇3噴火(約13万年前)および阿蘇2噴火(約14万年前)起源の火山灰が挟在する.
高分解能MCSで取得したマイグレーション断面と海上ボーリング調査の結果にもとづいて,評価対象断層の過去の活動について検討した.マイグレーション断面の深度変換にあたり,海水中および第四紀後期の堆積物中におけるP波速度を1,500 mと仮定した.以下のように,評価対象断層を挟んで,第四紀後期の地層が上下方向に累積的に変位している.ユニットDに認められる連続性の良い反射面には,10.5〜11.4 mの上下変位が認められる.ユニットC/D境界(Aso-4基底面)の上下変位量は10.5 mである.ユニットB基底面には約1.8 mの上下変位が,ユニットAの下部には0.8 m程度の上下変位が確認できる.ユニットC基底面の変位量によれば,平均上下変位速度は0.12 m/kyと算出できる.ユニットAの内部反射面に着目すると,GS-ODR-1地点における海底面下3.5 m以深の地層は一様に0.8 m程度ずれているのに対して,それより浅部ではずれの量が減少し,海底面下3.0 mでは上下の高度差が0.2 m程度になる.よって,最新活動の層準は海底面下3.5 m付近(少なくとも3.0 m以深)であると考えられる.前述のように,海底面下3.28-3.49 mから採取した貝化石が5.34-5.66 cal kBPの放射性炭素年代を示すことから,最新活動時期が5.3-5.7 cal kBPであったと推定できる.また,ユニットB基底(約18 cal kBPの放射性炭素年代を示す)に1.8 mの上下変位があることから,18 cal kBP以降,5.3-5.7 cal kBP以前に,1つ前の活動を含む少なくとも1回の活動があったことになる.評価対象断層の1回の変位量を0.8 mとすれば,平均変位速度(0.12 m/ky)にもとづいて,平均活動間隔を約6.7 kyと求めることができる.