講演情報

[S10-02]サロベツ断層帯海域延長部の調査空白域で実施した高分解能音波探査結果

*内田 康人1、丸山 純也1、檜垣 直幸1 (1. (地独)北海道立総合研究機構 エネルギー・環境・地質研究所 地域地質部)
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【背景】
 サロベツ断層帯は.北海道北部のサロベツ原野西岸付近の宗谷丘陵西縁に分布し,概ね北北西-南南東方向に延びる全長44㎞の断層帯である.本断層帯は東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層と推定され,産業技術総合研究所(2006)において群列ボーリング及びジオスライサー掘削調査を含む詳細な調査結果や,既存の反射法弾性波探査断面等の資料解析から2回のイベント年代が認定され,その結果に基づいた長期評価が公表されている(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2007).ただし本断層帯の南北への延長の可能性や海底に延びる活構造との関連性について検討する必要があることや,最新活動時期を特定できていないため,過去の活動履歴に結びつく資料を蓄積していく必要があることが残された主な課題として挙げられている.

【既存調査結果と課題】
 産業技術総合研究所及び北海道立総合研究機構(以下,道総研)は2012年度に文部科学省からの委託をうけて,本断層帯の北方延長部の宗谷海峡海域や,断層帯西側の利尻水道海域における活構造の詳細について明らかにすることを目的とした各種音波探査と採泥調査を実施した.その結果,本断層帯の海域部は陸域部の北端から礼文トラフ東縁北端付近までの全長約53 km以上に及ぶ可能性があり,深部に形成された東傾斜の逆断層に伴う断層関連褶曲とみられる複数の背斜構造が確認され,西側のものほど新しい活動を反映していると考えられる.さらに,チャープソナーを用いた海底下浅部の高分解能音波探査記録や堆積年代等のデータから,本断層帯の活動履歴や変位量に関する新たな情報を得ることができた(阿部他,2013;内田他,2013).しかしながら,高分解能音波探査による海底下浅部の地層変形に関する精密なデータは,利尻水道海域の一部の範囲でしか得られていない.また宗谷海峡海域で実施したブーマーマルチチャンネル音波探査(以下,BM探査)測線には,抜海沖からノシャップ岬沖にかけて約18㎞程度の調査空白域があるため,この区間の断層帯の活動に関する情報を新たに取得することができれば,断層帯の活動区間や過去の活動履歴に関する重要な資料となる.

【高分解能音波探査の結果】
 2022年4月に就航した道総研の試験調査船「北洋丸」(266トン)には,新たにナローマルチビーム測深機(Sonic2024)とサイドスキャンソナー(C-Max),及びパラメトリック方式地層探査装置(SES2000Medium)が搭載された.本船は道総研の稚内水産試験場所属で,道北日本海~オホーツク海を主な管轄海域として漁撈や漁場環境に関する調査研究を主目的とする.ただし日本海側の調査実施時には必ず定繋港の稚内港から西進してサロベツ断層帯を横断するため,調査海域までの移動時を利用すれば,サロベツ断層帯に関する新たな音波探査データを取得する機会ができる.このため,2023~2025年にかけて日本海側の武蔵堆海域及び仙法志堆海域で実施した調査海域までの往復時に,実際に地層探査装置を起動させてデータの取得を試みた.図1に,2012年に宗谷海峡海域で実施したBM探査の測線と確認されたサロベツ断層帯の位置に加え,今回の北洋丸による航跡,そして得られた地層探査記録断面図の例を示す.通常,地層探査装置でデータを取得する場合の船速は5~7ノット程度となるが,本装置にはマルチパルスモードが装備されているため,断層帯付近を通過時には船速10ノットを超えていたものの(最大13ノット程度),幾分かの分解能低下はみられるが堆積構造は十分探査可能であることがわかった.BM探査の空白域においては3年間に往復で合計8本の航跡で地層探査記録断面が得られ,想定されるサロベツ断層帯付近においては,海底下10~15m程度までの多数の堆積境界面が変形を受けていること,またその変形は海底面にまで及んでいることが確認された.検測線による各層の対比を行っていないため断定はできないが,今回得られた結果から,サロベツ断層帯の海域部の活動は連続している可能性が高いとみられる.

【今後の展開】
 北洋丸による調査航海のサロベツ断層帯横断時に,断層活動に関する概ね良好な地層探査データを得ることができた.今後は,断層帯横断時にリニアメントの検出を目的としたマルチビームによる精密海底地形測量も試みるほか,宗谷海峡海域で漁撈調査等の合間の時間帯を利用して,更なる地層探査データの蓄積を図る予定である.

【文献】
阿部他 (2013):サロベツ断層帯海域延長部における活構造の分布・性状と活動性について.活断層・古地震研究報告,13,39-74.
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2007):サロベツ断層帯の長期評価について.24p.
産業技術総合研究所(2006):サロベツ断層帯の活動性および活動履歴調査.「基盤的調査観測対象断層帯の追加・補完調査」成果報告書,No.H17-1,26p.
内田他 (2013):稚内市抜海沖におけるサロベツ断層帯の活動履歴.活断層・古地震研究報告 13,1-38.