講演情報

[S15-08]ETASモデルを利用した緊急地震速報の高度化

*山田 真澄1、Wu Stephen2、矢野 恵佑2、溜渕 功史3、野口 恵司3、林元 直樹4、鶴岡 弘4 (1. 京都大学防災研究所地震防災研究部門、2. 統計数理研究所、3. 気象庁、4. 東京大学地震研究所)
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IPF法は、緊急地震速報システムのために設計された自動震源決定アルゴリズムである。この手法では、事前情報とデータのP波到達時刻と振幅などから求められる尤度関数を組み合わせて、震源の場所を推定してきた。本発表では、事前情報に地震の発生しやすさ(space-time ETAS model, Ogata 2022)を組み込み、震源推定の精度向上を試みる。

IPF法では、初期の震源探索は第一トリガ観測点のボロノイセル近辺と、過去の震源の深さ分布に応じてパーティクルをばらまき、それぞれのパーティクル(震源候補)の重みを計算する。重みの計算には、B-Δ法による震央距離や主成分分析による方位、P波トリガ時刻と振幅などから定義される尤度関数を使用する。時間が経過して尤度が大きく更新された時は、その時点での重みに基づいてパーティクルのリサンプリングを行い、重みを再計算する。

拡張IPF法では、P波トリガ時刻と振幅を利用して尤度関数を定義している。拡張IPF法では、地震発生直後のトリガ情報が少ないときには、尤度関数の標準偏差が大きくなる傾向がる。特に、観測点分布に偏りがある場合には、誤差楕円が大きくなる。この尤度の不確定性を押さえるために、ETAS予測情報の活用を検討した。

時空間ETASモデルでは、過去の地震カタログを利用して翌1日に、あるマグニチュード以上の地震が何個発生するかを求めている。本発表では、M4以上の地震の発生数を0.1度グリッドで算出した。その分布を調査すると、およそ90%のグリッドは0.0001個以下であるため、このグリッドの情報は精度が低いと考え、予測個数を一律0.0001とした。さらに、0.01個以上のグリッドは極めて少ないので、このグリッドの予測個数は一律0.01とした。両者の間は、個数に比例して増加させた。深さ方向は、過去の地震カタログを10km刻みのグリッドで頻度を計算し、それを確率密度関数とした。

2024年6月3日に能登半島で発生したM6の地震を対象として、ETASモデルの有無による影響を検討した。この地震では、観測点が西側に分布しているため、震源の東側の分解能が低く、パーティクルの期待値をとると沖合に震源が決まるという問題が発生した。そのため、理論S波到達時刻が遅くなり、P波マグニチュードの式にS波が混入し、Mを過大評価した。ETASモデルを図に示されるように事前情報に組み込んだところ、余震域の事前確率が上がることによって震源推定の誤差が小さくなり、過大評価が改善したので報告する。