講演情報
[S15-11]南海トラフ地震臨時情報の認知度と防災意識向上効果の経年変化
*林 能成1 (1. 関西大学社会安全学部)
南海トラフ地震臨時情報は、東海地震予知を目指した一連の情報の後継となるものとして運用が開始された情報である。2017年11月に「南海トラフ地震に関連する情報」として運用がはじまり、対応ガイドラインの整備や、発表される情報の整理を経て、2019年5月から「南海トラフ地震臨時情報」という名称で発表されることとなった。
東海地震の予知体制とは異なり、この情報は地震予知ではないことが強調されることに加え、情報にともなう防災対応の終了時期を社会対応の視点からあらかじめ決めていることがこの情報の特徴である。地震学的には明確に決め難い「相対的に発生が高まっている状態」の終了時期について、社会全体の合意のもとに、1週間または2週間と決めたことは、地震情報を防災にいかす上で重要な転換であったと評価できる。
また、ある規模以上の地震が起きて臨時情報が発表されたとしても、1週間または2週間の間に、マグニチュード8を超える巨大地震が続けて発生する事例は、過去の世界の地震活動の中ではきわめて稀である。このような不確実性の高さについても、国から事前に説明されていることも画期的である。情報の不確実性が高く、情報による防災対応期間についても確定的なことは何も言えない中で、日常生活に大きな影響を与えずに防災対応力を向上させうことができれば、この情報には大きな意味があると考えられる。
災害対応まで決められた形での情報運用がはじまってから5年あまりが経過した2024年8月8日に日向灘でM7.1の地震が発生して、はじめての南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表された。我々は、南海トラフ地震臨時情報の認知度や理解度の実態を調査するため、この約1年前にあたる2023年7月にインターネット調査会社によるアンケート調査を実施していた。そして発表直後の2024年8月にも同様のインターネットによるアンケート調査を実施して、情報発表にともなって認知度や情報の理解度が飛躍的に向上したことを明らかにした(大谷・林, 2025)。
今回の研究では、認知度や防災意識などが、臨時情報発表を経て高い状態が維持されているか否かを明らかにするため、継続してアンケート調査を実施した。調査は2025年1月と7月に実施し、対象とした地域は東京,静岡,愛知,大阪,徳島,高知,広島,宮崎の8都府県である。各都府県とも男女、世代別に同数となるように設定したが、徳島、高知、宮崎の3県の20代では設定した人数の回答者をえることができず、同性別世代で補填して、前都府県が同じ人数になるようにした。
まず臨時情報の認知度については、臨時情報が実際に発表されたことによって大きく向上したが、その後、時間の経過とともに低下していることがあきらかになった。2024年8月には「インターネットなどで確認し、よく知っている」が30%に、「テレビ番組の解説などで、どのような情報か聞いたことがある」が47%だったものが、2025年1月と7月には、それぞれ25%、21%および45%、38%へと低下した。
不確実性に対する理解も,臨時情報が実際に発表されたことをうけて大きく向上し、この地震後に大きな地震が発生すると考える主観確率は「100%近い」が3%、「80%程度」が7%,「50%程度」が20%となっていたが、2025年1月と7月には、「100%近い」が7%、9%、「80%程度」が19%、16%、「50%程度」が23%、23%となって、2023年7月の調査のような的中率の高い地震予知的情報という認識へと回帰する傾向が見られた。
謝辞:本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第3次)」およびJSPS研究費23K26186の支援を受けました。
東海地震の予知体制とは異なり、この情報は地震予知ではないことが強調されることに加え、情報にともなう防災対応の終了時期を社会対応の視点からあらかじめ決めていることがこの情報の特徴である。地震学的には明確に決め難い「相対的に発生が高まっている状態」の終了時期について、社会全体の合意のもとに、1週間または2週間と決めたことは、地震情報を防災にいかす上で重要な転換であったと評価できる。
また、ある規模以上の地震が起きて臨時情報が発表されたとしても、1週間または2週間の間に、マグニチュード8を超える巨大地震が続けて発生する事例は、過去の世界の地震活動の中ではきわめて稀である。このような不確実性の高さについても、国から事前に説明されていることも画期的である。情報の不確実性が高く、情報による防災対応期間についても確定的なことは何も言えない中で、日常生活に大きな影響を与えずに防災対応力を向上させうことができれば、この情報には大きな意味があると考えられる。
災害対応まで決められた形での情報運用がはじまってから5年あまりが経過した2024年8月8日に日向灘でM7.1の地震が発生して、はじめての南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表された。我々は、南海トラフ地震臨時情報の認知度や理解度の実態を調査するため、この約1年前にあたる2023年7月にインターネット調査会社によるアンケート調査を実施していた。そして発表直後の2024年8月にも同様のインターネットによるアンケート調査を実施して、情報発表にともなって認知度や情報の理解度が飛躍的に向上したことを明らかにした(大谷・林, 2025)。
今回の研究では、認知度や防災意識などが、臨時情報発表を経て高い状態が維持されているか否かを明らかにするため、継続してアンケート調査を実施した。調査は2025年1月と7月に実施し、対象とした地域は東京,静岡,愛知,大阪,徳島,高知,広島,宮崎の8都府県である。各都府県とも男女、世代別に同数となるように設定したが、徳島、高知、宮崎の3県の20代では設定した人数の回答者をえることができず、同性別世代で補填して、前都府県が同じ人数になるようにした。
まず臨時情報の認知度については、臨時情報が実際に発表されたことによって大きく向上したが、その後、時間の経過とともに低下していることがあきらかになった。2024年8月には「インターネットなどで確認し、よく知っている」が30%に、「テレビ番組の解説などで、どのような情報か聞いたことがある」が47%だったものが、2025年1月と7月には、それぞれ25%、21%および45%、38%へと低下した。
不確実性に対する理解も,臨時情報が実際に発表されたことをうけて大きく向上し、この地震後に大きな地震が発生すると考える主観確率は「100%近い」が3%、「80%程度」が7%,「50%程度」が20%となっていたが、2025年1月と7月には、「100%近い」が7%、9%、「80%程度」が19%、16%、「50%程度」が23%、23%となって、2023年7月の調査のような的中率の高い地震予知的情報という認識へと回帰する傾向が見られた。
謝辞:本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第3次)」およびJSPS研究費23K26186の支援を受けました。

