講演情報
[S15-14]1855年安政江戸地震の新たな震度データに基づく震源特性の推定
*鈴木 文乃1、引田 智樹1 (1. 鹿島建設 技術研究所)
1.はじめに
首都圏直下のプレートの沈み込みに伴うM7程度の地震は、今後30年以内の発生確率が70%程度と推定されている(地震調査研究推進本部、2014)。1855年安政江戸地震がそのタイプに代表され、特性を把握することは防災上重要である。安政江戸地震は被害に基づく震度分布(例えば宇佐美、2003;宇佐美ほか、2013)により、震源深さや規模、強震動生成域などが推定されている(例えば佐藤、2016;神田・加藤、2019)。本報では、中村(2024)により新たに評価された震度分布のデータを用いて、神田・加藤(2019)と同様の方法で震源特性を推定する。
2.解析手法・条件
震度データは、中村(2024)において震度6.5とされているものは震度6と7の間と解釈し、計測震度としては6.2として扱った。同様に中村(2024)における震度6、5.5、5、4.5は、計測震度としては5.7、5.2、4.7、4.2として扱った。震源特性の推定は、震度インバージョン解析(神田ほか、2003)により断層面内のエネルギー放出分布を求める。解析には神田・加藤(2019)による関東地域の震度の距離減衰式と相対震度を用いる。震度インバージョン解析では気象庁マグニチュードMJと断層面を仮定する。MJは6.5~8.0で0.1刻み、断層面は傾斜角0°の水平な面を東京湾北部に配置し、震源深さ20~80 kmで10 km刻みに変化させて解析を行い、推定震度の誤差が最も小さいインバージョン結果を採用する。
3.解析結果
図1に震源深さとMJを変えた場合の震度インバージョン解析による震度の誤差分布を示す。震源深さ50 km、MJ 7.0の場合が誤差最小となったが、震源深さ60 km、MJ 7.2の場合の誤差との違いは非常に小さい。誤差分布には、震源深さが深い場合にはMJが大きく、震源深さが浅い場合にはMJが小さい場合に誤差が小さいトレードオフが生じている。図2に誤差最小となった震源深さ50 km、MJ 7.0の震度インバージョン解析によるエネルギー放出分布を示す。東京都東部の都心部直下に1つの大きなエネルギー放出分布が見られる。
本検討は神田・加藤(2019)と手法は同じだが震度データが異なる。神田・加藤(2019)は宇佐美(2003)に基づく震度データを用いており、震源深さ40 kmでMJ7.5のときに誤差最小となり、都心部の直下に大きなエネルギー放出分布がある。彼らの結果と比較して、本検討の結果はエネルギーが大きい位置は概ね同じであるが、震源がやや深く、MJが小さい。中村(2024)の震度分布は都心部で震度6強の地点もあれば5強や5弱の地点もあり、都心部の震度は宇佐美(2003)より平均的に小さい。一方で、都心部から50~100 km離れた地点では、両者とも震度4程度の地点が多い。本検討と神田・加藤(2019)の結果の違いは、このような震源直上の震度の大きさと距離減衰の傾きの違いに起因していると思われる。
4.まとめと今後の検討
1855年安政江戸地震を対象に、中村(2024)による震度分布を用いて震源深さ、MJ、エネルギー放出分布を推定した。今後は神田・加藤(2019)やSuzuki et al. (2023)と同様に、短周期レベルの推定、断層モデルの構築、強震動波形のシミュレーションを行い、震度の再現性を検討する予定である。
謝辞
中村操氏、神田克久氏、加藤研一氏、渡辺哲史氏には本検討のためのデータおよび有意義なご意見をいただきました。ここに記して謝意を表します。
首都圏直下のプレートの沈み込みに伴うM7程度の地震は、今後30年以内の発生確率が70%程度と推定されている(地震調査研究推進本部、2014)。1855年安政江戸地震がそのタイプに代表され、特性を把握することは防災上重要である。安政江戸地震は被害に基づく震度分布(例えば宇佐美、2003;宇佐美ほか、2013)により、震源深さや規模、強震動生成域などが推定されている(例えば佐藤、2016;神田・加藤、2019)。本報では、中村(2024)により新たに評価された震度分布のデータを用いて、神田・加藤(2019)と同様の方法で震源特性を推定する。
2.解析手法・条件
震度データは、中村(2024)において震度6.5とされているものは震度6と7の間と解釈し、計測震度としては6.2として扱った。同様に中村(2024)における震度6、5.5、5、4.5は、計測震度としては5.7、5.2、4.7、4.2として扱った。震源特性の推定は、震度インバージョン解析(神田ほか、2003)により断層面内のエネルギー放出分布を求める。解析には神田・加藤(2019)による関東地域の震度の距離減衰式と相対震度を用いる。震度インバージョン解析では気象庁マグニチュードMJと断層面を仮定する。MJは6.5~8.0で0.1刻み、断層面は傾斜角0°の水平な面を東京湾北部に配置し、震源深さ20~80 kmで10 km刻みに変化させて解析を行い、推定震度の誤差が最も小さいインバージョン結果を採用する。
3.解析結果
図1に震源深さとMJを変えた場合の震度インバージョン解析による震度の誤差分布を示す。震源深さ50 km、MJ 7.0の場合が誤差最小となったが、震源深さ60 km、MJ 7.2の場合の誤差との違いは非常に小さい。誤差分布には、震源深さが深い場合にはMJが大きく、震源深さが浅い場合にはMJが小さい場合に誤差が小さいトレードオフが生じている。図2に誤差最小となった震源深さ50 km、MJ 7.0の震度インバージョン解析によるエネルギー放出分布を示す。東京都東部の都心部直下に1つの大きなエネルギー放出分布が見られる。
本検討は神田・加藤(2019)と手法は同じだが震度データが異なる。神田・加藤(2019)は宇佐美(2003)に基づく震度データを用いており、震源深さ40 kmでMJ7.5のときに誤差最小となり、都心部の直下に大きなエネルギー放出分布がある。彼らの結果と比較して、本検討の結果はエネルギーが大きい位置は概ね同じであるが、震源がやや深く、MJが小さい。中村(2024)の震度分布は都心部で震度6強の地点もあれば5強や5弱の地点もあり、都心部の震度は宇佐美(2003)より平均的に小さい。一方で、都心部から50~100 km離れた地点では、両者とも震度4程度の地点が多い。本検討と神田・加藤(2019)の結果の違いは、このような震源直上の震度の大きさと距離減衰の傾きの違いに起因していると思われる。
4.まとめと今後の検討
1855年安政江戸地震を対象に、中村(2024)による震度分布を用いて震源深さ、MJ、エネルギー放出分布を推定した。今後は神田・加藤(2019)やSuzuki et al. (2023)と同様に、短周期レベルの推定、断層モデルの構築、強震動波形のシミュレーションを行い、震度の再現性を検討する予定である。
謝辞
中村操氏、神田克久氏、加藤研一氏、渡辺哲史氏には本検討のためのデータおよび有意義なご意見をいただきました。ここに記して謝意を表します。

