講演情報
[S15-16]2016年熊本地震の震源モデルの再検討
*纐纈 一起1 (1. 慶應義塾大学)
2016年熊本地震の震源モデルに関しては,断層近傍の地震動との関連が重要であるので,それらを含めた震源インバージョンがKobayashi et al. (2017)やAsano and Iwata (2021)などにより行われている.しかし,両者の結果,特に震源時間関数の形状などに違いがあるため,ここで改めて再検討を行った.その際,断層近傍の地震動に大きな影響を与える震源断層上部を,地震発生域(seismogenic zone)の物理特性を考慮しながら慎重に検討した.
南海トラフのプレート境界地震に関しては,地震発生域は150°から350°の温度領域に対応することが知られており(Hyndman et al., 1995),最近の研究ではそれが陸側の地殻内地震にも当てはまるとされている(高・他,2024).大久保(1993)によれば九州中部における温度勾配は13°/100mにまで達するとされており,地表温度を15°とすれば150°は深さ1.0km程度に相当する.また,地震学的には,本震から1日程度以内の余震域が震源断層の寸法に一致すると考えられているから(宇津, 2001など),hypoDD 2.1bと,JIVSM V1Rから観測点ごとに抽出した1次元速度構造を用いて24時間以内の余震を再決定した(下図).この余震分布に,セグメントF2とFH・Hの重複部分を除いたKobayashi et al. (2017)の断層モデル(図中緑線)はよく対応している.各セグメントの上端深さ0.80, 0.82, 0.80, 0.76も,地震発生域上端の上記深さや最浅余震(図中橙丸)の深さに概ね対応しているので,この断層モデルをここでも採用した.
震源インバージョンに用いるデータセットもKobayashi et al. (2017)と同様としたが,遠地波形データのうち方位280°から330°の観測点のものは後続波が顕著で解析が難しいので除いた.以上のモデルとデータを用いて震源インバージョンを行うと,得られたすべり分布は,Kobayashi et al. (2017)の結果においてF2のすべりをF1に加え合わせたものに概ね対応しており,小断層の震源時間関数もKobayashi et al. (2017)から大きく異なることはない.また,議論となっている浅い部分の震源時間関数には,断層近傍の変位が大きく貢献すると指摘されているので(Asano and Iwata, 2021),観測点93048と93051などについては速度波形だけでなく,それを積分して得られる変位波形あるいは永久変位をデータに追加した.そのほか,グリーン関数計算のための速度構造モデルも浅い部分の震源時間関数に大きく影響するはずであるから,Kobayashi et al. (2017)の手法を継承して,付近の中地震の波形を再現する速度構造モデルの調整を改めて行った.
謝辞
小林広明博士には協力いただいた.
南海トラフのプレート境界地震に関しては,地震発生域は150°から350°の温度領域に対応することが知られており(Hyndman et al., 1995),最近の研究ではそれが陸側の地殻内地震にも当てはまるとされている(高・他,2024).大久保(1993)によれば九州中部における温度勾配は13°/100mにまで達するとされており,地表温度を15°とすれば150°は深さ1.0km程度に相当する.また,地震学的には,本震から1日程度以内の余震域が震源断層の寸法に一致すると考えられているから(宇津, 2001など),hypoDD 2.1bと,JIVSM V1Rから観測点ごとに抽出した1次元速度構造を用いて24時間以内の余震を再決定した(下図).この余震分布に,セグメントF2とFH・Hの重複部分を除いたKobayashi et al. (2017)の断層モデル(図中緑線)はよく対応している.各セグメントの上端深さ0.80, 0.82, 0.80, 0.76も,地震発生域上端の上記深さや最浅余震(図中橙丸)の深さに概ね対応しているので,この断層モデルをここでも採用した.
震源インバージョンに用いるデータセットもKobayashi et al. (2017)と同様としたが,遠地波形データのうち方位280°から330°の観測点のものは後続波が顕著で解析が難しいので除いた.以上のモデルとデータを用いて震源インバージョンを行うと,得られたすべり分布は,Kobayashi et al. (2017)の結果においてF2のすべりをF1に加え合わせたものに概ね対応しており,小断層の震源時間関数もKobayashi et al. (2017)から大きく異なることはない.また,議論となっている浅い部分の震源時間関数には,断層近傍の変位が大きく貢献すると指摘されているので(Asano and Iwata, 2021),観測点93048と93051などについては速度波形だけでなく,それを積分して得られる変位波形あるいは永久変位をデータに追加した.そのほか,グリーン関数計算のための速度構造モデルも浅い部分の震源時間関数に大きく影響するはずであるから,Kobayashi et al. (2017)の手法を継承して,付近の中地震の波形を再現する速度構造モデルの調整を改めて行った.
謝辞
小林広明博士には協力いただいた.

