講演情報
[S17-06]17世紀に発生した千島海溝巨大地震の断層モデルの検証
*山中 悠資1、対馬 弘晃2 (1. 北海道大学大学院 理学研究院附属 地震火山研究観測センター、2. 気象庁気象研究所)
千島海溝南部の沈み込み帯では17世紀(1600年代前半)に巨大地震が発生し、それに伴う津波が北海道沿岸域に来襲したと考えられている(以下、17世紀型地震・津波)。同沿岸域ではその津波による津波堆積物が形成されており、これを主要な拘束条件として17世紀型地震の断層モデルが構築・修正されてきた。最新の断層モデルによれば、同地震は沈み込み帯の深部と浅部の両方を広域にわたって破壊したとされており、特に浅部での大すべりがその断層モデルの特徴である。一方、千島海溝南部で巨大津波が発生すれば東北地方太平洋側沿岸域にもその影響が及ぶが、東北地方における構築された断層モデルによる津波の特性については必ずしも詳細に分析されていない。また、1611年に日本海溝沈み込み帯で発生したと考えられている慶長地震による津波(以下、1611年津波)が東北地方を襲ったことが知られている。各地域で当時のその津波の来襲状況が記述された史料が現存している場合もあり、そのような歴史史料に基づき1611年津波の遡上高や浸水高が部分的に推定されて定量化されている。本研究では、構築された17世紀型地震の断層モデルを用いて、東北地方を対象に津波の伝播・氾濫を推定する。その結果と17世紀型地震・津波とほぼ同時期に発生した1611年津波の推定浸水・遡上状況などから類推される17世紀型津波の特性を踏まえ、17世紀型地震の断層モデルの妥当性を議論する。
沖合と北海道および東北地方沿岸域を全て2arc-sで解像した地形を用いて、17世紀型地震の断層モデルによる津波の伝播・氾濫を数値的に推定した。先行研究が復元した北海道沿岸域での浸水範囲が概ね再現できていることを確認したうえで、東北地方での最大津波高および最大浸水深・遡上高を俯瞰した。津波の規模は東北地方の南部から北部に向かうにつれて大きくなる傾向があり、北部では津波高・浸水深・遡上高が6mを超える地域が広範囲で推定された。東北地方では17世紀型津波の被害に関する歴史史料や伝承が未発見であることから、同地方における17世紀型津波は被害が発生しない程度の規模であったことが推察されているが、数値計算では津波被害をもたらす大規模な津波が広範囲で再現された。一方、1611年津波が岩手県船越に来襲したことが歴史史料で記述されており、同地域での津波痕跡高は4-6m程度であることが先行研究によって推定されている。東北地方での17世紀型津波の被害に関する歴史史料や伝承が未発見であることに加え、船越での歴史史料に1611年津波に関する記述があるという状況を踏まえれば、ほぼ同時期に発生した17世紀型津波は船越で1611年津波を下回る規模である可能性が高い。しかしながら、数値計算に基づく同地域での17世紀型津波は6mを上回り、潮位条件によらず陸域では無視できない浸水が推定されることがわかった。すなわち、17世紀型地震の断層モデルによる津波の東北地方における特性は、1611年津波に対する歴史史料の状況から類推される17世紀型津波の特性と整合しない。これらの結果は、17世紀型地震の断層モデルに大きな不確実性があることを示しており、今後の詳細な検討によってはその抜本的な再構築へと波及する可能性がある。
沖合と北海道および東北地方沿岸域を全て2arc-sで解像した地形を用いて、17世紀型地震の断層モデルによる津波の伝播・氾濫を数値的に推定した。先行研究が復元した北海道沿岸域での浸水範囲が概ね再現できていることを確認したうえで、東北地方での最大津波高および最大浸水深・遡上高を俯瞰した。津波の規模は東北地方の南部から北部に向かうにつれて大きくなる傾向があり、北部では津波高・浸水深・遡上高が6mを超える地域が広範囲で推定された。東北地方では17世紀型津波の被害に関する歴史史料や伝承が未発見であることから、同地方における17世紀型津波は被害が発生しない程度の規模であったことが推察されているが、数値計算では津波被害をもたらす大規模な津波が広範囲で再現された。一方、1611年津波が岩手県船越に来襲したことが歴史史料で記述されており、同地域での津波痕跡高は4-6m程度であることが先行研究によって推定されている。東北地方での17世紀型津波の被害に関する歴史史料や伝承が未発見であることに加え、船越での歴史史料に1611年津波に関する記述があるという状況を踏まえれば、ほぼ同時期に発生した17世紀型津波は船越で1611年津波を下回る規模である可能性が高い。しかしながら、数値計算に基づく同地域での17世紀型津波は6mを上回り、潮位条件によらず陸域では無視できない浸水が推定されることがわかった。すなわち、17世紀型地震の断層モデルによる津波の東北地方における特性は、1611年津波に対する歴史史料の状況から類推される17世紀型津波の特性と整合しない。これらの結果は、17世紀型地震の断層モデルに大きな不確実性があることを示しており、今後の詳細な検討によってはその抜本的な再構築へと波及する可能性がある。
