講演情報

[S22-03]20年分の気象庁一元化カタログを用いた深層学習走時検測モデルの開発

*直井 誠1、溜渕 功史2、下條 賢梧3 (1. 北海道大学、2. 気象庁、3. 気象研究所)
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Naoi et al. (2024, Earth Planets and Space) にて開発・公開された,PhaseNet(Zhu and Beroza 2019)の気象庁一元化カタログに基づく再訓練モデルのさらなる性能向上を目的とし,訓練データの拡充とモデル構造の高度化を実施した.Naoi et al. (2024) では,2014〜2021年のJMA一元化カタログに基づく約610万波形の走時データを用いてモデルを構築したが,学習曲線の解析からモデルの表現力不足の可能性,さらには性能の規模依存性や,新設観測網における小規模地震の訓練データの欠如といった課題が指摘されていた.
本研究では,訓練データを2002〜2023年の20年間に拡張し,Naoi et al. (2024) の約4倍に相当する約2500万波形に対する走時データを用いてモデルを再構築した.モデル構造には従来のPhaseNetを基盤としつつ,コンピュータビジョン分野の知見を応用し,ConvNeXtブロックやASPPモジュールなどを導入した新アーキテクチャを設計した.この新構造は,単にチャネル数やレイヤ数を増やすだけでは改善できなかった損失値を効果的に低下させることが可能であり,今後さらにデータ量が増加した際にもその効果を活かせる,拡張性の高い設計となっている.
また,入力波形の前処理として,P波初動部を強調する処理やチャネル間振幅比を保持する正規化手法も検討したが,検出性能への寄与は限定的であり,最終モデルには採用しなかった.一方で,訓練データの選別に関しては,Naoi et al. (2024) で用いた全手動処理による波形・走時データ(Kラベル)に加え,本研究では2016年以降に導入された,自動処理結果に対して手動で微修正が行われたことを示すkラベルが付されているものも訓練に含めた.その結果,小規模地震に対する検出性能が大きく向上し,特にS-netのような新設観測網における微小地震の検測精度向上が期待される.
最終的に得られたモデルは,PhaseNetを基にしたベースラインモデルと比較して,2013年のテストデータに対するPrecision-Recall曲線において明確な性能向上を示した.本モデルは,日本の定常観測データに基づくより高品質な地震カタログを作成するための有力な基盤技術となると期待される.