講演情報

[S22-05]Hi-net連続地震動記録から推定した余震による地表最大震度の予測

*澤崎 郁1、久保 久彦1 (1. 防災科学技術研究所)
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Hi-netなどの連続地震動記録に極値統計解析を適用することで、大地震発生からおおよそ1時間後以降の各観測点における余震による揺れの発生確率を予測できることが示されている(Sawazaki, 2025)。ただし、この手法で直接予測できるのは、地震計が設置されている位置での揺れに限られる。すなわち、Hi-netを用いる場合は、地中(深さ100m以深)で観測された揺れを対象とすることになる。また、Hi-netで取得されるデータは速度記録またはその微分により得られる加速度記録であり、実用上は被害との関連が深い地表での計測震度の予測が望まれる。

本研究ではまず、Hi-netに併設されているKiK-netの地表・地中記録を用いて、両者の最大加速度(PGA)におけるオフセット値を観測点ごとに推定した。このオフセット値を用い、2016年熊本地震の本震後に得られたHi-net連続記録を地表での加速度値に換算し、極値統計解析により地表でのPGA超過確率を算出した。さらに、大井他(2002)の経験式を用いて加速度を計測震度に変換し、地表における最大震度の超過確率を予測した。

九州地方のKiK-net観測点79点を対象に、2000年から2023年に発生した地震について3成分合成PGAの地表/地中比を計算し、その対数平均から各観測点でのオフセット値を推定した。ただし、オフセット値に系統的な変化が見られた観測点については、熊本地震を含む期間のうち、オフセット値が一定とみなせる期間のデータのみを使用した。使用した地震の震源距離については、記録数が十分(数十個以上)に得られる観測点では100km以内のイベントを使用した。記録数が不足している場合は、必要数が得られるまで100-200km、200-500km、500km以上と段階的に震源距離の長いイベントも含めた。

解析の結果、全観測点における地表/地中オフセット値の対数平均は約5.0倍であり、最大の観測点で14.0倍、最小の観測点で1.6倍であった。オフセット値と地震計の設置深度やVs30などの地盤指標との間に明瞭な相関は確認されなかった。一方、震源距離が長くなるほどオフセット値が小さくなる傾向が見られた。これは、遠いイベントでは高周波成分が減衰し、相対的に低周波成分を多く含む表面波が卓越するため、地表―地中間の増幅を受けにくくなることに起因すると考えられる。

次に、熊本地震の本震直後から得られたHi-netの連続速度記録を微分して加速度記録に変換し、1分間ごとの3成分合成最大振幅(区間最大振幅)を算出した。この値に先述のオフセット値を掛け合わせ、地表における区間最大振幅に換算した。これに極値統計解析(澤崎, 2024; Sawazaki, 2025)を適用し、本震から6時間以内のデータを用いて、30時間後(予測時点から24時間後)までのPGA超過確率を算出した。さらに、大井他(2002)のPGA-震度換算式を用いて、震度の超過確率を求めた。

解析の結果、熊本地震本震の震央に近い観測点(例:N.TYNH)に加え、本震震央から離れているものの地震活動が活発化した阿蘇・大分地域の観測点(例:N.OGNH)でも、超過確率10%相当の地表震度が6弱以上と、高い値が予測された。これは、本手法が観測された揺れの記録そのものから各観測点における将来の揺れを予測するものであり、余震活動の空間分布を適切に反映して、余震活動が活発な地域の観測点でも強い揺れを予測できるためと考えられる。

一方、熊本地震の震源域から遠く離れた観測点においては、先述の通り振動の高周波成分の減衰により地中から地表への増幅効果が小さくなると考えられる。その場合、震源距離が近い地震から得られたオフセット値を用いて地中記録を地表記録に換算すると、地表震度が過大評価される可能性がある。

謝辞:本研究は、情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-Eプロジェクト)からの支援を受けています。