講演情報
[S23-04]山口県北部で発生している群発地震のメカニズム解推定
*及川 元己1、上田 拓1 (1. 国立研究開発法人防災科学技術研究所)
背景
山口県北部では、2025年2月から8月まで地震活動が継続的に続いている。この一連の活動は、深さ40 km付近の深部低周波地震から始まり1ヶ月の期間で低周波地震の震源が浅くなりつつ、3月ごろから深さ30 km付近でバースト的な高周波地震活動が始まった。その後、南から北へ震源の深さを浅くしながら移動し、現在では地震活動の開始場所から北へ5 kmほどの場所に活動の中心がある。この地震活動でも、他の地域で見られる群発地震と同様に顕著な震源の移動を伴っており、背景に火山性及び地殻流体の関与が示唆される(e.g., Amezawa et al. 2022)。この地震活動が発生している場所は、阿武単成火山群や奈古断層といった活断層が存在し、将来火山噴火や巨大地震の発生につながる可能性もあることから、その発生メカニズムの理解は防災上重要である。本研究では、震源の再決定及び発震機構解の推定を行い、山口県北部で継続している群発地震の発生メカニズムの考察を行った。
震源再決定
気象庁の検測値と波形相関をデータとしてdouble-difference法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)を用いて低周波地震も含む2025年2月1日から6月8日に発生した3764イベントについて震源の再決定を行なった。観測点は防災科研Hi-net、F-net及び気象庁の定常観測点を用いた。再決定された震源分布は、活動の南側と北側で違う傾向を示した。南側では東から西に傾斜する分布である一方で、北側では比較的傾斜が緩やかな面状の震源分布が得られた。また、震源の移動についても単純に南から北に行くのではなく、順向と逆向を繰り返しながら進んでおり、かなり複雑な移動経路をとっていることが分かった。
発震機構解の推定
地震波形の極性、P波とS波のスペクトル振幅を用いて発震機構解の推定を行なった。震源モデルとして、地震活動の背景に流体の移動が示唆されることからshear tensile crack model (Vavryuk 2001) を仮定し、断層の走向・傾斜・すべり角と、クラックと断層なす角αを推定した。手法は、Imanishi et al. (2006) を参考に各観測点における振幅を繰り返し補正しながら残差の2乗和が最小になる解を推定した。具体的には、まずHASHプログラム(Hardebeck and Shearer, 2002)で初動解を推定し、放射パターンの情報を用いてイベントごとに対数平均から補正値を得る。次に補正値でP波とS波の振幅を補正し、補正された振幅と極性からshear tensile crack modelのパラメータを推定した。本手法により62イベントについて発震機構解を推定した。
得られたメカニズムは多様ではあるものの、全体の特徴としては主軸の向きが背景応力場(Uchide et al. 2022)から推察される横ずれ的なイベントは少なく、局所的な応力場が群発地震の発生に関与している可能性が示唆される。クラック成分の寄与αは大きくても絶対値で20ºほどで、有意にクラック成分を含むイベントが混在していることがわかった。また、開口と閉口のイベントが混在して発生しており複雑な応力場であることが推察される。クラックの開口および閉口の向きを推定すると、概ね高傾斜角つまり断層面としては水平に近く、特に北側では震源が広がる方向に対して流体の貫入があったことが示唆される。これらの結果から、山口県北部の群発地震は上部マントルから供給された火山性もしくは地殻流体の貫入に伴い局所的な応力場が形成され、クラック成分を持つ断層滑りが局所的に発生していると推察される。
山口県北部では、2025年2月から8月まで地震活動が継続的に続いている。この一連の活動は、深さ40 km付近の深部低周波地震から始まり1ヶ月の期間で低周波地震の震源が浅くなりつつ、3月ごろから深さ30 km付近でバースト的な高周波地震活動が始まった。その後、南から北へ震源の深さを浅くしながら移動し、現在では地震活動の開始場所から北へ5 kmほどの場所に活動の中心がある。この地震活動でも、他の地域で見られる群発地震と同様に顕著な震源の移動を伴っており、背景に火山性及び地殻流体の関与が示唆される(e.g., Amezawa et al. 2022)。この地震活動が発生している場所は、阿武単成火山群や奈古断層といった活断層が存在し、将来火山噴火や巨大地震の発生につながる可能性もあることから、その発生メカニズムの理解は防災上重要である。本研究では、震源の再決定及び発震機構解の推定を行い、山口県北部で継続している群発地震の発生メカニズムの考察を行った。
震源再決定
気象庁の検測値と波形相関をデータとしてdouble-difference法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)を用いて低周波地震も含む2025年2月1日から6月8日に発生した3764イベントについて震源の再決定を行なった。観測点は防災科研Hi-net、F-net及び気象庁の定常観測点を用いた。再決定された震源分布は、活動の南側と北側で違う傾向を示した。南側では東から西に傾斜する分布である一方で、北側では比較的傾斜が緩やかな面状の震源分布が得られた。また、震源の移動についても単純に南から北に行くのではなく、順向と逆向を繰り返しながら進んでおり、かなり複雑な移動経路をとっていることが分かった。
発震機構解の推定
地震波形の極性、P波とS波のスペクトル振幅を用いて発震機構解の推定を行なった。震源モデルとして、地震活動の背景に流体の移動が示唆されることからshear tensile crack model (Vavryuk 2001) を仮定し、断層の走向・傾斜・すべり角と、クラックと断層なす角αを推定した。手法は、Imanishi et al. (2006) を参考に各観測点における振幅を繰り返し補正しながら残差の2乗和が最小になる解を推定した。具体的には、まずHASHプログラム(Hardebeck and Shearer, 2002)で初動解を推定し、放射パターンの情報を用いてイベントごとに対数平均から補正値を得る。次に補正値でP波とS波の振幅を補正し、補正された振幅と極性からshear tensile crack modelのパラメータを推定した。本手法により62イベントについて発震機構解を推定した。
得られたメカニズムは多様ではあるものの、全体の特徴としては主軸の向きが背景応力場(Uchide et al. 2022)から推察される横ずれ的なイベントは少なく、局所的な応力場が群発地震の発生に関与している可能性が示唆される。クラック成分の寄与αは大きくても絶対値で20ºほどで、有意にクラック成分を含むイベントが混在していることがわかった。また、開口と閉口のイベントが混在して発生しており複雑な応力場であることが推察される。クラックの開口および閉口の向きを推定すると、概ね高傾斜角つまり断層面としては水平に近く、特に北側では震源が広がる方向に対して流体の貫入があったことが示唆される。これらの結果から、山口県北部の群発地震は上部マントルから供給された火山性もしくは地殻流体の貫入に伴い局所的な応力場が形成され、クラック成分を持つ断層滑りが局所的に発生していると推察される。
