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[S23-09][招待講演]箱根火山における群発地震の活動様式とその発生要因の検討

*行竹 洋平1、本多 亮2、道家 涼介3 (1. 東京大学地震研究所 火山噴火予知研究センター、2. 神奈川県温泉地学研究所、3. 弘前大学大学院理工学研究科)
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群発地震の発生メカニズムとして、マグマによるダイク開口(Toda et al., 2002)、高圧流体の移動による間隙流体圧の増加と断層強度の低下(Shelly et al., 2014)、非地震性すべりの拡大(Lengliné et al., 2014)などが提案されてきた。これらのメカニズムのうち、近年では特に流体移動と非地震すべりの相互作用に注目が集まっている。例えば、流体の貫入が断層上の非地震すべりを誘発することが実験的に示されており(Cappa et al., 2019)、実際の群発地震活動においても、非地震すべりを示唆する相似地震や地殻変動が観測されている(Nakajima and Hasegawa, 2023;Nishimura et al., 2023)。
 本発表では、箱根火山西部で発生した群発地震活動(2009年、2015年、2019年)を対象に、群発地震震源の時空間分布、相似地震、地殻変動データを包括的に検討し、発生要因について議論する。箱根火山は伊豆半島北部に位置する第四紀火山であり、活発な群発地震活動が繰り返し観測されてきた。2015年4月末から7月にかけては、観測史上最大規模の群発地震活動が発生し、6月末には大涌谷で小規模な水蒸気噴火が生じた(Mannen et al., 2018)。
 2009年8月の活動では、Yukutake et al. (2011) によって高精度相対震源決定が行われ、震源分布がほぼ鉛直な面上に沿って時間的に拡散移動することが示された。この震源移動は、地殻内注水試験により誘発される地震活動(Shapiro et al., 1997)との類似性が指摘され、高圧流体の拡散に起因する可能性が示唆された。
 2019年の活動については、Yukutake et al. (2022) により、震源時空間変化・相似地震・地殻変動を総合的に解析し、群発地震期間において震源域での非地震すべりの発生が示唆された。
 さらにKawai et al. (2024) は、2009年・2015年・2019年の群発地震活動を比較し、それぞれの活動における震源域の拡散速度(拡散係数)や傾斜変動、解放モーメントについて議論した。これらの比較において、すべての活動で震源域の拡散的な移動が確認されたが、とくに2015年の活動では拡散係数が他の2ケースより1オーダー大きかった。また傾斜変動に基づく断層モデルから推定されるモーメントと群発地震の積算モーメントとを比較すると、2009年は両者がほぼ一致したのに対し、2015年と2019年では、それぞれ約90%、59%のモーメントが非地震的に解放されたことが示された。これらの結果は、2015年の活動において特に非地震すべりの寄与が大きかったことを示唆する。2015年の群発地震は、大涌谷での噴火に先行しており、4月末から火山浅部への流体貫入が、蒸気井の暴噴(Mannen et al., 2018)やInSAR解析(Kobayashi et al., 2018; Doke et al., 2018)によって推定されている。2015年の群発地震活動は高圧流体が断層帯に供給されることで断層摩擦特性を変化させ、非地震すべりとそれに伴う高速な震源移動を誘発した可能性を示唆している。
 以上の研究は、箱根火山における群発地震の発生過程において、流体移動と非地震すべりが相互に重要な役割を果たしていることを示すものであり、地震活動を通じた火山活動の評価や予測に重要な示唆を与える。

謝辞
本研究では、神奈川県温泉地学研究所、防災科学技術研究所、気象庁、東京大学地震研究所の観測点において取得された地震波形データを使用させていただきました。