講演情報
[S23-12][招待講演]2025年トカラ列島近海の群発地震活動
*八木原 寛1、平野 舟一郎1、仲谷 幸浩1、中尾 茂1、蔵下 英司2、山下 裕亮3、馬場 慧4、山田 知朗2、篠原 雅尚2、荒木 英一郎5 (1. 鹿児島大学大学院理工学研究科、2. 東京大学地震研究所、3. 宮崎公立大学、4. 九州大学大学院理学研究院、5. 海洋研究開発機構)
トカラ列島の悪石島と小宝島の近海では2025年6月21日に顕著な群発地震活動が開始した.7月2日に最大規模のM5.6,7月3日に悪石島で最大震度6弱が観測されたM5.5が発生し、7月19日まで有感地震の日回数は15以上(最多は6月23日の183)で推移した(地震調査委員会,2025).7月20日以降は有感地震の日回数は明瞭に減少したものの,活動は終息していない.有感地震回数が多数に上っただけでなく,島民の一部の島外避難が実施されたことから,活動の推移や発生原因等に関する社会の関心が高まった.
この群発地震活動の一元化震源は,トカラ列島の活火山(口之島,中之島,及び諏訪之瀬島)列の延長上からその西側にかけて拡がる.この活動の原因を考察するための基礎的情報として精度の良い震源分布が不可欠であるが,トカラ列島周辺の震源精度は十分で無い.すなわち,この付近の陸域は数少ない島嶼に限られ,一元化処理に用いられる地震観測点(気象庁,及び鹿児島大学)は概ね島弧に沿うような直線に近い配置を呈するだけでなく空間密度も著しく低いため,特にプレートの沈み込み方向の震央位置と深さの精度が低下する.
一方で鹿児島大学・南西島弧地震火山観測所(NOEV)は,地震活動度の高い奄美大島周辺や,トカラ列島周辺でエピソディックに発生する浅発地震活動等の研究観測を目的に,2011年に悪石島にオンライン観測点を設置し中長期にわたり維持してきた.これに加えて,2025年6月の時点でトカラ列島の小宝島と平島においてNOEVのオフライン地震観測点が稼働していた.これらのNOEV観測点は,群発地震活動域に近接する一方で,一元化処理には含まれていなかったことから,これらの観測点のデータを用いた震源再決定を行うことで震源精度の向上が期待される.そこで本研究は,これらのNOEV観測点のデータを加えて手動検測をした上で,震源再決定を行った,なお,加藤・他(2025,本学会講演)は本研究と同様のデータを用い,包括的な震源カタログを構築している.本研究の手動検測による震源再決定の結果と相補的に扱うことで,群発地震活動の特徴や全体像を把握できると考えられる.
本研究では,6月21日以降の有感地震のうち,初動立ち上がりのS/Nの良いものだけを対象とし, P波とS波の組み合わせを固定して震源再計算をした.用いた速度構造はNOEVが九州中南部の微小地震の震源決定を行う際に適用する角田・他(1991)で,震源決定プログラムはhypomh(Hirata and Matsu’ura, 1987)である.本予稿では,活動が開始した6月21日から震源再決定が完了した7月6日までの期間に手動検測得・再震源決定できた515個についてまとめ,以下では,2つに大別される活動域を便宜的に「北東側クラスタ」と「南西側クラスタ」と記す.
北東側クラスタに属する震央は,悪石島の南西約5 km沖から小宝島の北東約 5 km沖にかけての長さ約22 km、幅約7 kmに分布し,北東―南西方向の概ね線状に近い配列を呈する.この線状配列は,小宝島から悪石島につながる海底地形の高まりに対応するようにも見える.震源の深さは小宝島に近い側でおよそ3~10 km弱,ここから北東に向かうにつれて震源の深さが増加する傾向が認められ,最も深い活動がクラスタの中央部からやや北東側にかけての深さ7~15 km,これよりも悪石島側の活動は若干,深さ範囲が浅く,約7~12 kmに分布する.一方、南西側クラスタは数が少なく,ばらつきが大きいものの,西北西―東南東の配列2本と北東―南西方向の短い配列1本の組み合わせにも見える.深さは10 km以浅で、小宝島付近には海水準付近に決定された極浅い地震も散見される.
時空間分布を見てみると,北東側クラスタにおいては,大局的には活動域の小宝島側から悪石島側への時間的な移動が認められる.その時間的推移の中で南西側クラスタが独立して7月2日頃に一時的に活動した.深さ方向については,活動初期はほとんどが10 km未満であったが,横軸の6月26日頃以降は深さ10 km弱から15 kmにかけての相対的に深い地震が卓越した.7月6日までの期間においては,震源の深さが時間とともに浅くなる傾向は認められない.
著者らは今後,この領域の群発地震活動の詳細を把握するため,科学研究費助成事業(特別研究促進費)「トカラ列島近海において継続する地震活動に関する総合調査」により,小宝島と平島のオフライン観測点をテレメータ化して島嶼域地震観測を強化するとともに,OBSを用いた海域地震観測を実施し,さらに群発地震活動域の直上に敷設されている光ケーブルを用いたDAS観測を計画している.これらの実施内容の概要等についても合わせて紹介する.
謝辞:本研究では,気象庁の一元化カタログと連続波形記録を使用しました.記して感謝申し上げます.
この群発地震活動の一元化震源は,トカラ列島の活火山(口之島,中之島,及び諏訪之瀬島)列の延長上からその西側にかけて拡がる.この活動の原因を考察するための基礎的情報として精度の良い震源分布が不可欠であるが,トカラ列島周辺の震源精度は十分で無い.すなわち,この付近の陸域は数少ない島嶼に限られ,一元化処理に用いられる地震観測点(気象庁,及び鹿児島大学)は概ね島弧に沿うような直線に近い配置を呈するだけでなく空間密度も著しく低いため,特にプレートの沈み込み方向の震央位置と深さの精度が低下する.
一方で鹿児島大学・南西島弧地震火山観測所(NOEV)は,地震活動度の高い奄美大島周辺や,トカラ列島周辺でエピソディックに発生する浅発地震活動等の研究観測を目的に,2011年に悪石島にオンライン観測点を設置し中長期にわたり維持してきた.これに加えて,2025年6月の時点でトカラ列島の小宝島と平島においてNOEVのオフライン地震観測点が稼働していた.これらのNOEV観測点は,群発地震活動域に近接する一方で,一元化処理には含まれていなかったことから,これらの観測点のデータを用いた震源再決定を行うことで震源精度の向上が期待される.そこで本研究は,これらのNOEV観測点のデータを加えて手動検測をした上で,震源再決定を行った,なお,加藤・他(2025,本学会講演)は本研究と同様のデータを用い,包括的な震源カタログを構築している.本研究の手動検測による震源再決定の結果と相補的に扱うことで,群発地震活動の特徴や全体像を把握できると考えられる.
本研究では,6月21日以降の有感地震のうち,初動立ち上がりのS/Nの良いものだけを対象とし, P波とS波の組み合わせを固定して震源再計算をした.用いた速度構造はNOEVが九州中南部の微小地震の震源決定を行う際に適用する角田・他(1991)で,震源決定プログラムはhypomh(Hirata and Matsu’ura, 1987)である.本予稿では,活動が開始した6月21日から震源再決定が完了した7月6日までの期間に手動検測得・再震源決定できた515個についてまとめ,以下では,2つに大別される活動域を便宜的に「北東側クラスタ」と「南西側クラスタ」と記す.
北東側クラスタに属する震央は,悪石島の南西約5 km沖から小宝島の北東約 5 km沖にかけての長さ約22 km、幅約7 kmに分布し,北東―南西方向の概ね線状に近い配列を呈する.この線状配列は,小宝島から悪石島につながる海底地形の高まりに対応するようにも見える.震源の深さは小宝島に近い側でおよそ3~10 km弱,ここから北東に向かうにつれて震源の深さが増加する傾向が認められ,最も深い活動がクラスタの中央部からやや北東側にかけての深さ7~15 km,これよりも悪石島側の活動は若干,深さ範囲が浅く,約7~12 kmに分布する.一方、南西側クラスタは数が少なく,ばらつきが大きいものの,西北西―東南東の配列2本と北東―南西方向の短い配列1本の組み合わせにも見える.深さは10 km以浅で、小宝島付近には海水準付近に決定された極浅い地震も散見される.
時空間分布を見てみると,北東側クラスタにおいては,大局的には活動域の小宝島側から悪石島側への時間的な移動が認められる.その時間的推移の中で南西側クラスタが独立して7月2日頃に一時的に活動した.深さ方向については,活動初期はほとんどが10 km未満であったが,横軸の6月26日頃以降は深さ10 km弱から15 kmにかけての相対的に深い地震が卓越した.7月6日までの期間においては,震源の深さが時間とともに浅くなる傾向は認められない.
著者らは今後,この領域の群発地震活動の詳細を把握するため,科学研究費助成事業(特別研究促進費)「トカラ列島近海において継続する地震活動に関する総合調査」により,小宝島と平島のオフライン観測点をテレメータ化して島嶼域地震観測を強化するとともに,OBSを用いた海域地震観測を実施し,さらに群発地震活動域の直上に敷設されている光ケーブルを用いたDAS観測を計画している.これらの実施内容の概要等についても合わせて紹介する.
謝辞:本研究では,気象庁の一元化カタログと連続波形記録を使用しました.記して感謝申し上げます.
