講演情報

[S23-13]2025年トカラ列島近海における群発地震活動の時空間発展

*加藤 愛太郎1、八木原 寛2、平野 舟一郎2、中尾 茂2、酒井 慎一3 (1. 東京大学地震研究所、2. 鹿児島大学、3. 東京大学情報学環)
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トカラ列島近海では、2025年6月下旬から活発な群発地震活動が発生している。本地域では、過去にも群発地震活動が複数回発生しているが、今回は観測史上最大規模の活動となっている。本研究では、震源域近傍の悪石島・小宝島・平島で鹿児島大学によって管理・運営されている地震観測点の連続波形データを周辺域の基盤的地震観測網のデータと統合解析を実施することで、高精度な地震カタログを構築した。まず、連続波形記録に対して機械学習モデルのPhasenet(Zhu and Beroza 2019)を適用することでP波とS波を自動で読み取り、グリッドサーチによるイベント検出(Zhang et al. 2019)を行った。その後、波形相関に基づく相対走時差データを作成し、相対的な震源決定(Trugman and Shearer 2017)を実施した。この再決定震源をテンプレートとし、マッチドフィルター法を適用することで、規模の小さなイベントを検出し、より包括的な地震カタログを構築した。その結果、震源域には東側と西側に2つの顕著な地震クラスターが存在することが明瞭になった。さらに、多くの震源の深さが15km以浅となり、気象庁カタログに比べて各段に浅くなった。6月21日から活発化した地震活動は、約10km/dという速さで浅い方向へ約1~2km移動を開始し、5日間ほどは、北東方向と南西方向に複数の移動を示した。6月29日から第2フェーズに移行し地震活動がさらに活発化するとともに、長さ5kmにわたる北東方向への震源移動が複数見られ、移動速度も20~50km/dと活動初期に比べて移動速度の増加が見られた。活動の重心は北東方向へ徐々に移動し、7月上旬には悪石島に近づいた。その後、活動度がやや低下してものの、小宝島と悪石島の間で活動が継続している。一方、西側の地震クラスターは、6月末に活発化し、拡散的な移動を示した。その後、7月2日午後に南西方向に約70 km/dという速い移動速度で活動域が拡大した。上記で述べた震源の移動速度は、沈み込み帯で観測されるスロー地震の移動速度とオーダーで一致している。また、1998年伊豆半島東方沖のダイク貫入イベントの際に見られた震源の移動速度(Hayashi and Morita 2003)とも概ね一致する。これらのことから、マグマや熱水等の火山性流体が貫入することで、スロースリップを引き起こし、それによる応力集中が群発地震の発生に関与していることが考えられる。