講演情報
[S23-17]2025年トカラ列島群発地震にみられる震源群の移動と余震様減衰
*遠田 晋次1 (1. 東北大学災害科学国際研究所 災害理学研究部門)
2025年6月21日早朝から始まった一連のトカラ列島近海の地震活動は,1ヵ月弱の活発期の後,約40日経過した現在もわずかながら活動は続いている(原稿執筆時点8月10日).この間,震度1以上を観測する地震は2200回を超え,震度5弱以上のゆれ(最大震度6弱)も8回発生した(気象庁,2025).近年では群を抜いて活発な群発地震となった.北縁に位置する諏訪之瀬島に代表されるように,今回の活動域は火山フロント直上にあたり,地下深部の火山活動との関連が疑われる.本発表では同群発地震の活動推移を整理するとともに,活動前半に認められた震源群の移動現象(バースト的活動と急激な活動停止)と,後半にみられる余震様の活動減衰について,2000年伊豆諸島群発地震にも共通することを指摘し,そのメカニズムを考察する.
【群発地震活動の推移】今回の群発地震の活動領域は,東西約50km,南北約40km程度に広がる.ただし,活動は日々変化し,初期(6月下旬)は小宝島北方(A領域)に集中していたが,7月に入ってからはその東西の宝島北西海域(B領域)と悪石島と小宝島の中間海域(C領域)の2箇所に集中した.また,この時期にはM5を超える地震が多発し,7月3日には悪石島で震度6弱を記録する地震(M5.5)が発生している.その後は,B領域の活動は静かになり,A領域も依然として静穏化したままで,C領域の活動が続いている.
【2000年伊豆諸島群発地震との類似点・相違点】トカラ列島のような火山フロント直下での顕著な群発地震として2000年の伊豆諸島群発地震があげられる.同年6月末ら8月末にかけて伊豆諸島北部で発生した群発地震活動は,M3以上の地震約7000回,M6以上の地震6回を含む,日本列島での観測史上最大規模の群発地震活動となった.この地震活動では,期間中に新島と神津島の距離は約80cm遠ざかり,逆に新島と利島間は20cmほど近づいた.三宅島北西沖に長さ15km,幅5kmの鉛直なダイクが貫入,継続的に成長し,周辺浅部地殻内の横ずれ断層にかかる剪断応力速度(載荷速度)が極端に増減し,それに呼応して地震発生率も剪断応力速度に比例して変化したと考察された(Toda et al., Nature, 2002).今回のトカラ列島の震源域の広がりは,伊豆諸島群発地震とほぼ同規模であるが,地震活動度(発生レート)は1/4程度である.マグニチュード−頻度分布からは1ヵ月間に1回程度のM≥6.5地震が期待されるが, 40日間に発生した最大地震はM5.6で,伊豆諸島のようにM6を超える地震は発生していない.地温勾配が高い火山地域特有の地震発生層の薄さに起因するものであろう.一方で,両群発地震活動において共通する特徴として,1)活動前半の震源群の移動現象と2)後半の穏やかな地震活動の減衰を指摘できる.1)については,バースト的な極端な地震発生・震源群の移動と,その後の急激な活動停止で特徴付けられる.伊豆諸島の例では,数km/日の速度で震源の移動が認められている.2)は,1)のような震源域移動で観測される突然の活動停止ではなく,余震活動のように地震発生レートが徐々に減衰するものである.
【ダイク貫入マグマ移動・停滞モデルと応力変化・摩擦則を考慮した地震活動】 Toda et al. (2002)は群発地震の発生メカニズムの1つとして,地殻変動源(主としてダイク貫入)周辺の断層群への載荷速度の上昇をあげた.これによって, 2000年伊豆諸島群発地震の活動域の空間分布と,推定載荷速度変化と観測された地震活動度変化の整合性を概ね説明した.ただし,同論文で触れられていなかったのは,局所的な群発活動域の急激な静穏化(shut-off)で,これは載荷速度の急減によるものと考えられる.図左には,ダイク貫入による周辺断層への急激な剪断応力増と,その後の変動源移動にともなう剪断応力減を模式的に示した.マグマ等の流体の移動に伴って,移動先ではバースト的な地震が発生し,もとの場所では逆に応力源による急激な活動低下が起きる.すなわち,震源群の移動には,ダイクの貫入・拡大ではなく,マグマ等の圧力源の移動が必須となる.一方で,ダイクの成長と移動が停滞する場合,負の応力変化は生じない(図右).この場合,速度・状態依存構成則(Dieterich, JGR, 1999)によって,本震―余震型(応力ステップ型)のような大森−宇津則のような時間減衰が生じると考えられる.現時点(8月10日)の地震活動を考慮すると,トカラ列島直下では,地下のマグマが停滞もしくは徐々に収縮しているものと考えられる.
【群発地震活動の推移】今回の群発地震の活動領域は,東西約50km,南北約40km程度に広がる.ただし,活動は日々変化し,初期(6月下旬)は小宝島北方(A領域)に集中していたが,7月に入ってからはその東西の宝島北西海域(B領域)と悪石島と小宝島の中間海域(C領域)の2箇所に集中した.また,この時期にはM5を超える地震が多発し,7月3日には悪石島で震度6弱を記録する地震(M5.5)が発生している.その後は,B領域の活動は静かになり,A領域も依然として静穏化したままで,C領域の活動が続いている.
【2000年伊豆諸島群発地震との類似点・相違点】トカラ列島のような火山フロント直下での顕著な群発地震として2000年の伊豆諸島群発地震があげられる.同年6月末ら8月末にかけて伊豆諸島北部で発生した群発地震活動は,M3以上の地震約7000回,M6以上の地震6回を含む,日本列島での観測史上最大規模の群発地震活動となった.この地震活動では,期間中に新島と神津島の距離は約80cm遠ざかり,逆に新島と利島間は20cmほど近づいた.三宅島北西沖に長さ15km,幅5kmの鉛直なダイクが貫入,継続的に成長し,周辺浅部地殻内の横ずれ断層にかかる剪断応力速度(載荷速度)が極端に増減し,それに呼応して地震発生率も剪断応力速度に比例して変化したと考察された(Toda et al., Nature, 2002).今回のトカラ列島の震源域の広がりは,伊豆諸島群発地震とほぼ同規模であるが,地震活動度(発生レート)は1/4程度である.マグニチュード−頻度分布からは1ヵ月間に1回程度のM≥6.5地震が期待されるが, 40日間に発生した最大地震はM5.6で,伊豆諸島のようにM6を超える地震は発生していない.地温勾配が高い火山地域特有の地震発生層の薄さに起因するものであろう.一方で,両群発地震活動において共通する特徴として,1)活動前半の震源群の移動現象と2)後半の穏やかな地震活動の減衰を指摘できる.1)については,バースト的な極端な地震発生・震源群の移動と,その後の急激な活動停止で特徴付けられる.伊豆諸島の例では,数km/日の速度で震源の移動が認められている.2)は,1)のような震源域移動で観測される突然の活動停止ではなく,余震活動のように地震発生レートが徐々に減衰するものである.
【ダイク貫入マグマ移動・停滞モデルと応力変化・摩擦則を考慮した地震活動】 Toda et al. (2002)は群発地震の発生メカニズムの1つとして,地殻変動源(主としてダイク貫入)周辺の断層群への載荷速度の上昇をあげた.これによって, 2000年伊豆諸島群発地震の活動域の空間分布と,推定載荷速度変化と観測された地震活動度変化の整合性を概ね説明した.ただし,同論文で触れられていなかったのは,局所的な群発活動域の急激な静穏化(shut-off)で,これは載荷速度の急減によるものと考えられる.図左には,ダイク貫入による周辺断層への急激な剪断応力増と,その後の変動源移動にともなう剪断応力減を模式的に示した.マグマ等の流体の移動に伴って,移動先ではバースト的な地震が発生し,もとの場所では逆に応力源による急激な活動低下が起きる.すなわち,震源群の移動には,ダイクの貫入・拡大ではなく,マグマ等の圧力源の移動が必須となる.一方で,ダイクの成長と移動が停滞する場合,負の応力変化は生じない(図右).この場合,速度・状態依存構成則(Dieterich, JGR, 1999)によって,本震―余震型(応力ステップ型)のような大森−宇津則のような時間減衰が生じると考えられる.現時点(8月10日)の地震活動を考慮すると,トカラ列島直下では,地下のマグマが停滞もしくは徐々に収縮しているものと考えられる.

