講演情報

[S23-18]テンプレートマッチング法を用いた沖縄トラフ中南部の群発地震活動特性の比較

*安部 祐志3,1、中村 衛1,2 (1. 琉球大学理学部物質地球科学科、2. 琉球大学島嶼防災研究センター、3. 応用技術株式会社)
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沖縄トラフ中南部では群発地震活動が頻発している。沖縄トラフは背弧海盆拡大に伴うリフティングが進行中であり、その過程で断層運動やダイク貫入イベントが多発している可能性が指摘されている。また、火山フロントに近接していることから熱水活動も活発であり、熱水の拡散が群発地震を誘発する要因となる可能性もある。しかし、これまで沖縄トラフにおける群発地震活動の地域的特徴や活動域の拡大過程については十分に解明されてこなかった。本研究では、過去に発生した大規模群発地震を対象に、テンプレートマッチング法により未検出イベントを抽出し、震源再決定を行うことで、群発地震活動の特徴の地域性を明らかにすることを目的とする。解析対象は、南部沖縄トラフで発生した2002年、2007年、2013年、2019年、2021年の群発地震、および中部沖縄トラフで発生した2009年、2010年、2011年、2014年の群発地震である。テンプレートマッチング法では、気象庁カタログのイベントをテンプレートとし、S波到着付近2秒間の水平動2成分波形を用いて連続波形との相互相関を計算した。平均相関係数が中央値絶対偏差の13倍以上となった場合にイベントと判定した。地震計には気象庁短周期地震計、F-net広帯域地震計、台湾BATS広帯域地震計を用いた。検出イベントの位置はテンプレート地震の位置と同じと仮定した。またテンプレート地震はDouble Difference法で震源再決定を行い、活動域の高解像度マッピングを行った。中部沖縄トラフで観測点数が少なくDouble Difference法が使えない場合は、観測点数がP波5観測点S波3観測点以上で読み取りが行われた地震を用いて分布の推移を検討した。南部では、群発地震発生域が活動初期に1~6 km/hで拡大し、拡大方向はトラフ軸にほぼ平行であった。2002年の群発地震では約30 km、2013年の群発地震では約27 kmの拡大が確認された。複数の事例で活動期間中にダイク貫入と推定される地殻変動がGNSSで観測され、群発地震の開始点付近には海底火山とみられる地形的高まりが存在した。2021年与那国北西沖の群発地震では地震活動の明瞭な移動は認められなかった。中部では、発生領域の顕著な拡大は見られず、同一領域で活動が継続する事例が多かった。活動が広がる場合も、活動が連続的に移動するというより、近接地点で独立に発生した。硫黄鳥島北西沖で2009~2022年に発生した大規模~中規模の群発地震の大部分は28.1°N, 128.0°E(領域A)付近で繰り返し発生し、時にその東北東(28.15°N, 128.1°E:領域B)で単独に発生した。2014年の活動は領域Aで始まり、開始8日後に約20 km東の領域Cで新たな活動が始まった。2009年の活動は硫黄鳥島西方(27.85°N, 127.75°E付近)で始まり、約1か月後に東側10 kmで新たな活動が発生した。南部沖縄トラフの特徴的な拡大速度と方向性は、火山近傍のダイク貫入イベントに伴う地震活動と類似しており、マグマの側方移動が主因と考えられる。これを裏付ける事実として、観測された地殻変動や開始点付近の海底火山の存在が挙げられる。一方、中部沖縄トラフでは群発地震域が概ね10 km以内に収まり、現時点では小規模なマグマ貫入か熱水活動によるものかを判定するのは困難である。しかし、2009年や2014年のように新たな活動がリフト軸(Io Rift、Iheya Rift:東北東―西南西)と斜交して発生する例もある。このことから、斜交構造(断層や割れ目帯)が活動場となり、外部応力変化やそれに伴う流体移動によって熱水系やマグマ系が刺激され、群発地震が連鎖的に誘発される可能性がある。