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[S24-03][招待講演]満点計画―地震観測点を1万点に―

*飯尾 能久1 (1. 京大防災研・NPO阿武山・東北大学)
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1. きっかけ 
 兵庫県南部地震が起こったとき、内陸地震がなぜ、いつ、どこで起こるのかという本質的なことについては、ほとんど不明であることがよく分かった(例えば、飯尾, 2009)。沈み込む海洋プレートの「押し」により内陸の広い範囲でひずみが増加することが原因であるとよく言われるが、増加したひずみは海溝型の巨大地震の発生により数百年毎にリセットされるため、より長期間にわたって、内陸の断層付近のひずみを増加させることは出来ないはずである。
 それ以前に発生した1984年長野県西部地震について、合同余震観測等により、発生場や発生の仕組みに関する重要な知見が得られていた。それらの示唆することは、内陸地震は局所的な「事情」により発生するというものである。例えば、本震と同じ横ずれ型の余震が推定断層面の極近傍のみに集中する(Yamazaki et al., 1992)ことは、断層近傍における局所的な応力場の存在を示唆している。
 局所的な、空間スケールの小さな現象の解明には、観測点間隔を狭めた稠密観測による大量のデータが必要である。上記の合同余震観測は稠密ではあったが、観測期間は1か月半程度であった。内陸大地震の震源域周辺において数kmおきに観測点を配置するためには、通常は、商用電源の無い場所にも設置する必要があるが、商用電源なしで数か月以上の長期間データを記録できる観測装置はほとんどなかった。そのため、稠密多点での年単位の長期間にわたる地震観測は、全くと言ってよいほど行われていなかった。

2. 装置開発
 そこで、商用電源なしで半年以上連続してデータを記録できる装置の開発を、京大防災研や九大理学研究院など大学関係者と近計システム(株)など中小企業のグループで行い、単一乾電池32本で半年間以上、1秒間に250点の3成分の波形を連続で記録することが可能となった(例えば、三浦・他, 2010; 飯尾, 2011; 飯尾, 2017)。固有周波数2Hzの小型軽量の速度型地震計も同時に開発した。
 100km四方の領域に1kmおきに観測点を設置すると総計1万点となる。長野県西部地震の断層近傍の応力異常域の幅は、その後の解析により幅1km程度以下と推定されたが、1km間隔の観測網であれば、その実態の解明が可能であると期待される。1万点の観測網は地震観測として満点に近いので、この試みを満点計画と名付けた。また開発当初から、自然地震の観測だけではなく、様々な振動波形の観測に使われることを想定しており、実際に、火山や地すべり地において活用されている(例えば、京大防災研, 2024)。

3. 結果と成果
 2008年から設置を開始し、長野県西部、近畿地方中北部、山陰地方の地震帯、ニュージーランド南島北部の4か所において、それぞれ、数十点~130点程度の観測を2022年まで継続した(ニュージーランド南島北部については、東北大理学研究科を中心とするグループにより現在も継続中)。加えて、2008年岩手宮城内陸地震、2016年鳥取県中部地震、2017年島根県西部地震、2018年大阪府北部の地震などの余震観測にも活用された。 これまでに得られた成果は、内陸地震の断層周辺の応力場や速度構造、断層の深部延長付近のS波の反射構造、地殻や沈み込む海洋プレートの速度構造や流体の分布など、内陸地震の発生場や発生過程に関して多岐にわたっている。また、応力場や断層の強度の不均質性や断層の強度の絶対値など、より基礎的な知見も得られている。
 これまでに得られた主な成果は以下のようにまとめられる。内陸地震は、断層周辺の「やわらかい」領域の変形による応力集中により発生する。その領域がやわらかくなる原因は水である可能性がある。

謝辞:観測に協力いただいた地元の方々へ深く感謝申し上げます。鳥取県危機管理局、日野町、三朝町、長野県王滝村・木曽町、木曽森林管理署、高槻市・茨木市をはじめ、関係する自治体等の皆さまにも多大なるご支援をいただいた。装置の開発およびそれを用いた観測研究に関して多数のプロジェクトの支援をいただいた。プロジェクトの関係の皆様に感謝申し上げます。満点計画の後半を支えてくださった田中美恵さんと水島理恵さんに厚くお礼申し上げます。