講演情報
[S25-02]Wave gradiometryを用いた2025年カムチャツカ半島地震に伴う津波の伝播特性解析
*小木曽 仁1、対馬 弘晃1 (1. 気象研究所)
従来、津波の観測は沿岸の験潮所やごく限られた数の沖合津波計(GNSS波浪計や海底水圧計)に限られていたが、DONETやS-net、N-netといった海底観測網の構築に伴い、多数の海底水圧計で津波を観測することが可能となった。このような環境では、津波伝播を面的に把握することが可能となる。
2025年7月30日8:24(日本時間)にカムチャツカ半島付近で発生したMw8.8の巨大地震によって励起された津波は、これら海底観測網に設置された海底水圧計で良好に観測された。本研究では、S-net海底水圧計で記録された津波記録に対してアレイ解析を行い、津波伝播状況の可視化とその特徴について検討する。
アレイ解析手法としては、Wave gradiometry (Langston, 2007; Liang et al., 2023)を採用する。この手法は津波のスローネスベクトルに加えて、振幅の空間変化に関する情報も得ることができる。また、複数観測点の記録を内挿することにより、面的な津波伝播を可視化することも可能となる(Maeda et al., 2016)。Ogiso and Tsushima (2022; 2025)は2022年フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の噴火に伴う津波に対してWave gradiometryを適用し、大気・海洋結合系における津波伝播の特徴を明らかにしている。
本研究では、S-netを観測点の重複を許した複数の4点アレイに分割し、Ogiso and Tsushima (2025)と同様に、10–60分の帯域において面的な津波伝播を可視化するとともにスローネスベクトルや振幅の空間変化の様子を計算した。また、USGSのCMT解及び震源付近のDARTの津波到達時刻等を参考に構築した矩形断層モデルと非線形分散波理論に基づいて数値計算した津波波形に対しても同様の解析を行い、実観測の解析結果と比較した。
実観測記録にWave gradiometry解析を適用したところ、地震発生から約1時間後に北東方向から入射する津波第1波が可視化された。また、約3時間後から伝播してくる第1波よりはやや短波長となる津波は、到来方向が北東方向から次第に東方向に変化しつつ数時間程度継続する様子が見られた。これらの津波は、津波の初動に加えて、千島列島と千島海溝間を伝播した津波と北北西-南南東方向に延びる天皇海山列にて散乱された津波が合わさって伝播してきたものと解釈できる(Koshimura et al., 2008)。実観測記録に対する解析で得られたスローネスベクトルは合成津波の解析によって得られたそれとよく一致していたが、振幅の空間変化は大局的なパターンは一致しているものの、特に沖合側において空間変化の度合いに違いがみられた。この空間変化の違いは、実観測記録と合成観測記録との津波の励起過程および伝播過程の違いを反映したものであるが、津波の第1波における振幅の空間変化パターンの違いは津波励起過程の違いも反映したものである可能性がある。一方、後続波における空間変化パターンの差異は、陸地における反射や海山列における散乱といった津波伝播過程の違いが主に反映されている可能性がある。
謝辞
本研究では防災科研S-net (https://doi.org/10.17598/NIED.0007)の海底水圧観測記録を使用しました。
2025年7月30日8:24(日本時間)にカムチャツカ半島付近で発生したMw8.8の巨大地震によって励起された津波は、これら海底観測網に設置された海底水圧計で良好に観測された。本研究では、S-net海底水圧計で記録された津波記録に対してアレイ解析を行い、津波伝播状況の可視化とその特徴について検討する。
アレイ解析手法としては、Wave gradiometry (Langston, 2007; Liang et al., 2023)を採用する。この手法は津波のスローネスベクトルに加えて、振幅の空間変化に関する情報も得ることができる。また、複数観測点の記録を内挿することにより、面的な津波伝播を可視化することも可能となる(Maeda et al., 2016)。Ogiso and Tsushima (2022; 2025)は2022年フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の噴火に伴う津波に対してWave gradiometryを適用し、大気・海洋結合系における津波伝播の特徴を明らかにしている。
本研究では、S-netを観測点の重複を許した複数の4点アレイに分割し、Ogiso and Tsushima (2025)と同様に、10–60分の帯域において面的な津波伝播を可視化するとともにスローネスベクトルや振幅の空間変化の様子を計算した。また、USGSのCMT解及び震源付近のDARTの津波到達時刻等を参考に構築した矩形断層モデルと非線形分散波理論に基づいて数値計算した津波波形に対しても同様の解析を行い、実観測の解析結果と比較した。
実観測記録にWave gradiometry解析を適用したところ、地震発生から約1時間後に北東方向から入射する津波第1波が可視化された。また、約3時間後から伝播してくる第1波よりはやや短波長となる津波は、到来方向が北東方向から次第に東方向に変化しつつ数時間程度継続する様子が見られた。これらの津波は、津波の初動に加えて、千島列島と千島海溝間を伝播した津波と北北西-南南東方向に延びる天皇海山列にて散乱された津波が合わさって伝播してきたものと解釈できる(Koshimura et al., 2008)。実観測記録に対する解析で得られたスローネスベクトルは合成津波の解析によって得られたそれとよく一致していたが、振幅の空間変化は大局的なパターンは一致しているものの、特に沖合側において空間変化の度合いに違いがみられた。この空間変化の違いは、実観測記録と合成観測記録との津波の励起過程および伝播過程の違いを反映したものであるが、津波の第1波における振幅の空間変化パターンの違いは津波励起過程の違いも反映したものである可能性がある。一方、後続波における空間変化パターンの差異は、陸地における反射や海山列における散乱といった津波伝播過程の違いが主に反映されている可能性がある。
謝辞
本研究では防災科研S-net (https://doi.org/10.17598/NIED.0007)の海底水圧観測記録を使用しました。
