講演情報
[S25-03]1952年と2025年のカムチャツカ地震津波で観測された大洋横断反射波
*対馬 弘晃1、山本 剛靖1 (1. 気象庁気象研究所)
千島海溝北部の沈み込み帯に位置するカムチャツカ半島付近では,1952年11月5日にMw 9.0の地震,2025年7月30日にMw 8.8の地震が発生し,太平洋の沿岸各地で津波が観測された.1952年地震では,地震発生の約48時間後に,それまでの減衰傾向とは明らかに異なる顕著な振幅をもつ水位変化が日本の沿岸検潮所で観測されたこと,それが南米のチリ沿岸からの反射波で説明できることが報告されている(対馬・山本,2021, 地震学会秋季大会).その際の移動二乗平均平方根(MRMS)振幅は,津波全過程の最大振幅の約半分に及んでおり,現在の津波注意報の発表基準に迫るもので,津波への警戒を考える上では無視できない.一方,2025年地震でも,日本の沿岸検潮所で地震発生の約48時間後に顕著な振幅の水位変化が観測され,さらに,1970年代以降に深海域に設置された海底圧力計でも同様の水位変化が捉えられた.本研究では,これらの2025年の顕著な水位変化観測記録の特徴を整理し,1952年地震と同様の大洋横断反射波で説明できるかを検証する.また,それらの結果に基づき,将来の地震発生時の顕著後続波への警戒について議論する.
日本周辺の海底観測網S-net, DONET, N-netの圧力観測記録を用いた.周期2–180分の海底圧力変化を抽出し,水深2500 m前後の観測点の記録を北東から南西に並べて観察したところ,千島海溝南部〜日本海溝(東日本),南海トラフ(西日本)ともに地震発生48時間頃から振幅増加をもたらす相が認められ,近い観測点間では波形もよく似ていた.東日本・西日本の2地域にわけ,地域内の観測点平均のMRMS振幅時系列を算出した結果,両地域とも,48時間後の振幅増加は津波全過程の最大振幅の約半分に及び,1952年地震の沿岸検潮記録と同じく顕著なものであった.また,顕著な振幅増大が生じた帯域が20分よりも長周期である点も1952年地震と共通する.
2025年地震で観測された顕著な水位変化の成因を探るため,津波数値計算を行った.余震分布のひろがりや震源付近のDARTの津波到達時等を参考に矩形断層一様すべりの震源モデルを仮定し,津波の荷重変形も考慮した非線形長波式(Baba et al., 2017)を数値的に解くことで,太平洋全体を対象にした84時間の津波伝播計算を行った.その結果,計算された観測点平均MRMS振幅時系列は,東日本・西日本の観測値をよく再現した.また,反射面の候補であるチリ沿岸を含む南米大陸南部を海に改変した津波計算を行った結果,振幅増大が生じなくなったことから,2025年に観測された振幅増大もチリ反射波が原因であることがわかった.
充実した海底観測網で2025年地震の約48時間後の水位変化が捉えられたことで,大洋横断反射波が顕著な後続波になりうることが裏付けされた.また,現代の津波数値計算技術を用いれば,その影響を概ね再現できることが本研究で示された.これらのことは,環太平洋に多数の断層を仮定して長時間の津波数値計算を行い,大規模な反射面からの顕著後続波の可能性を事前把握しておく(対馬・山本,2023,地震学会秋季大会)というアプローチが,将来の地震発生時の顕著後続波への警戒に有効であることを示唆する.
日本周辺の海底観測網S-net, DONET, N-netの圧力観測記録を用いた.周期2–180分の海底圧力変化を抽出し,水深2500 m前後の観測点の記録を北東から南西に並べて観察したところ,千島海溝南部〜日本海溝(東日本),南海トラフ(西日本)ともに地震発生48時間頃から振幅増加をもたらす相が認められ,近い観測点間では波形もよく似ていた.東日本・西日本の2地域にわけ,地域内の観測点平均のMRMS振幅時系列を算出した結果,両地域とも,48時間後の振幅増加は津波全過程の最大振幅の約半分に及び,1952年地震の沿岸検潮記録と同じく顕著なものであった.また,顕著な振幅増大が生じた帯域が20分よりも長周期である点も1952年地震と共通する.
2025年地震で観測された顕著な水位変化の成因を探るため,津波数値計算を行った.余震分布のひろがりや震源付近のDARTの津波到達時等を参考に矩形断層一様すべりの震源モデルを仮定し,津波の荷重変形も考慮した非線形長波式(Baba et al., 2017)を数値的に解くことで,太平洋全体を対象にした84時間の津波伝播計算を行った.その結果,計算された観測点平均MRMS振幅時系列は,東日本・西日本の観測値をよく再現した.また,反射面の候補であるチリ沿岸を含む南米大陸南部を海に改変した津波計算を行った結果,振幅増大が生じなくなったことから,2025年に観測された振幅増大もチリ反射波が原因であることがわかった.
充実した海底観測網で2025年地震の約48時間後の水位変化が捉えられたことで,大洋横断反射波が顕著な後続波になりうることが裏付けされた.また,現代の津波数値計算技術を用いれば,その影響を概ね再現できることが本研究で示された.これらのことは,環太平洋に多数の断層を仮定して長時間の津波数値計算を行い,大規模な反射面からの顕著後続波の可能性を事前把握しておく(対馬・山本,2023,地震学会秋季大会)というアプローチが,将来の地震発生時の顕著後続波への警戒に有効であることを示唆する.
