講演情報

[S25-11]2025年カムチャツカ半島巨大地震:スラブ下のマントル上昇流の影響

*豊国 源知1、趙 大鵬1 (1. 東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター)
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アラスカ〜アリューシャン沈み込み帯では,太平洋プレートが北米プレートの下に沈み込み,南へ湾曲した弧状の沈み込み帯を形成している.過去のトモグラフィー研究では,アラスカ~東アリューシャン下で太平洋スラブがマントル遷移層(MTZ)に停滞していることが報告されている.一方,西アリューシャンでは斜め沈み込みにより右横ずれ境界が形成されている.カムチャツカ沈み込み帯では,太平洋プレートがオホーツクプレート下に沈み込み,スラブはMTZを超えて下部マントルへ到達していることが示されている.

こうした沈み込み様式の違いにより、地域ごとに異なる複雑で活発な地震・火山活動が発生している.アラスカではM9を超えるイベントとして1964年アラスカ地震(Mw 9.2–9.3,深さ25 km)が発生している.一方カムチャツカでは,1952年カムチャツカ地震(Mw 9.0,深さ21.6 km)が起き,さらに2025年にも同震源域付近でMw 8.8の地震が発生した.加えて,規模の大きな深発地震として2013年オホーツク海地震(Mw 8.3,深さ609 km)が挙げられ,本地域の地震活動は広範な深さに及ぶ.

本研究の目的は,こうした地震・火山活動と地下構造との関連を明らかにすることである.具体的には,アラスカ〜アリューシャン~カムチャツカ下の全マントルのP波速度(Vp)構造を解明し,沈み込んだスラブの行方やスラブ・プルーム相互作用を新しいトモグラフィーモデルを用いて考察する.

本研究で用いる手法は,マルチスケールグローバルトモグラフィー法(Zhao et al., 2017, SciRep)である.この手法は対象領域に高密度のグリッドを配置することで,リージョナルトモグラフィーに匹敵する分解能を実現する.本研究では高緯度地域を扱うため,座標変換によって対象地域を赤道域へ移動した.到着時刻データはISC-EHBカタログから選別した.最終的に抽出されたイベント数は14,248個,観測点数は14,216点で,到着時刻データ数は,直達P波 6,065,268個,pP波 180,589個,PP波 123,389個の,トータル6,369,246個である.

結果として,アラスカ〜アリューシャン弧およびカムチャツカ弧下に沈み込むスラブがhigh-Vp異常帯として明瞭にイメージされた.アリューシャン弧西部では横ずれ境界により明瞭なスラブ構造が見られない.両沈み込み帯では,スラブ上にupper-slab low-Vp anomalies(ULVAs)が検出された.これはスラブからの脱水とマントルウェッジ内のコーナーフローを反映しており,島弧火山形成の直接的な要因と考えられる.さらにカムチャツカ下ではsub-slab low-Vp anomalies(SLVAs)が顕著に現れた.アリューシャン下でも振幅は弱いが,SLVAsが点在している.

1952年および2025年のカムチャツカ地震は,SLVAのギャップ部分に位置していることが判明した.これはFan & Zhao(2021, NatGeo)の結果と一致する.また本研究では,これらのSLVAが下部マントルから連続している可能性が示された.SLVAはマントルプルームの一部がスラブ下に捕捉された構造であり,その浮力や流体供給が地震発生に影響していると考えられる(e.g., Fan & Zhao, 2021, NatGeo; Suzuki et al., 2025, 投稿中).

さらに,巨大噴火を引き起こす火山は,スラブウィンドウ近傍でSLVAが発達した領域に位置することが分かった.スラブウィンドウによるトロイダル流とSLVAの流入が相互作用し,本地域における巨大噴火の発生要因となっている可能性が示唆される.こうした特徴は,世界の他の沈み込み帯とも一致する(e.g., Toyokuni et al., 2022, JGR).