講演情報

[11教-ポ-34]内在的視点に基づく保健体育科教員養成課程における学生の成長過程模擬授業を対象に

*小水 裕太1、伊佐野 龍司2、鈴木 理2 (1. 日本大学大学院、2. 日本大学)
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保健体育科を含む教員養成課程では、模擬授業が実践され、教授技術の習得、学生の思考の変容や省察能力の向上等の成果が報告されている。一方で、実践が歴史的一回起性であることを踏まえると、そこで生起する出来事の意味や価値、さらには個別の出来事と授業の構成要素全体との関係等々を、当事者の視点から究明することも学生の成長を把握する上で求められるが、その方面の研究は課題が残されている。
このように、実践で生起する多様な情況と当事者たちによる相互作用を捉え、学生の文脈的知識や認識枠組みの再構成とその体系化に至るまでの成長過程を詳らかにする試みは、模擬授業の成果を多様に捉えることに貢献する。また、模擬授業を通じた教科の構造理解に関わる学びの過程を明示することは高度化を目指す教員養成の観点からも意義がある。
本研究は、保健体育科の教員養成課程における模擬授業を通じた学生の成長を、参与観察を用いて内在的視点から明らかにすることを目的とした。
実践当初、学生たちは各題材(体つくり運動・球技等)に通底する原理や概念を理解したとしても、指導では自らが想定した通りにならない情況に直面していた。しかしながら、この情況に巻き込まれる出来事は、無自覚のうちに形成された自らの体育指導観と否が応でも向き合う契機となっていた。
こうした様々な場面で生じた「理解したつもり」の自己との対峙は、運動・ゲームの構造理解を企図した指導が、個別の運動感覚に移入することや、集団の傾向把握と系統発生との連関等々の多面的・多層的な理解に基づいて成り立っていることに気づく重要な契機になっていたと解された。なお、学生たちの認識枠組みの更新に至る過程には、授業に組み込まれていた顕在的・潜在的な仕組みが関与していたことも解釈を通じて浮き彫りとなった。

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