講演情報
[P003]生成AIを用いた実務実習記録(週報)の質的評価法の確立
【発表者】芝田 信人1、竹田 晃輝1、西村 亜佐子1 (1. 同志社女子大学薬学部医療薬学科 医療製剤学研究室)
【目的】実務実習記録において学生が記載する週報は、学習の進捗や専門職としての成長過程を可視化する重要なツールである。週報は、教員や指導薬剤師による形成的評価の判断材料として有用だが、質的な要素を抽出して評価する際には、評価者の経験や価値観に依存しやすく、主観性が介入する。したがって、一貫した評価が行える手法の構築が必要である。そこで、生成AIを活用して学生の週報から質的な評価項目を抽出し、より客観的かつ教育的妥当性の高いフィードバックを提供できるプロンプトの開発を行った。【方法】ChatGPT-4oをAPI接続し、プロンプト設計には生成AIプロンプト研究所「チャプロ」が提唱する「8+1の公式」を応用して、週報からの情報抽出と出力の最適化を図った。また、医療専門職のプロフェッショナリズムを評価するP-MEX(Professionalism Mini-Evaluation Exercise)を紐づけし、「患者関係構築能力」「省察能力」「時間管理能力」「医療者間関係構築能力」の4項目を中心に、週報の内容を分析・評価する枠組みを構築した。さらに、「表現の一貫性」「専門的理解の深さ」「自己省察の質」といった観点を加えてスコア化(0~4点)し、良い点・改善点・推奨学習・次回に向けた具体的アドバイスを詳細に提示できるよう設計した。評価対象には、富士ゼロックスの実務実習システムに蓄積された過去の学生週報データを使用した。【結果】プロンプトをChatGPT-4oに適用したところ、P-MEXの各評価項目に対応するスコアが出力され、具体的かつ内容に即したフィードバックが生成された。たとえば、「患者関係構築能力」に関しては、服薬指導の実施件数が少ない初期にはスコアが低く、実習を通じて経験が積み重なるにつれてスコアが上昇するなど、実習の進行に伴う成長過程が反映された。また、「良い点」では週報内からポジティブな要素を抽出して肯定的なコメントが提示され、「改善点」では具体的な行動や思考への指摘が与えられた。さらに、自己省察の質については、学生自身の体験と十分に結びつかないような抽象的な記述までもが検出されるなど、生成AIによる分析の妥当性も確認できた。【考察】開発したプロンプトは、生成AIを用いて学生の週報を質的に評価する新たな枠組みを提示するものであり、形成的評価を実施する上で有効と考えられた。