講演情報

[P013]パーソナリティ診断テストから分かる薬学的プロジェクト学習と社会人基礎力の関係

【発表者】鮎川 洋1、三島 健一1、牛尾 聡一郎1、今任 拓也1、渡辺 拓也1、松本 純一1、村田 雄介1 (1. 福岡大学 薬学部 (日本))
【目的】福岡大学薬学部では2023年から低学年に対し、薬学的プロジェクト学習(以下PBL)を開講した。開講の目的の1つに、汎用的能力である社会人基礎力の向上がある。我々はPBLが、社会人基礎力にどのような影響を及ぼすのかを検証した。社会人基礎力とは経済産業省が提唱した12の能力要素で、主体性、働きかけ力、実行力、課題発見力、計画力、創造力、発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性、ストレスコントロール力から成り立っている。
【方法】社会人基礎力の指標として、パーソナリティ診断テストであるMatch plus1を利用した。2023年に入学した245名のうち、2023年5月と2024年5月にMatch plusを受検した146名(PBL受講者は17名)を対象とした。受講生は、2023年10月から2024年3月の間に20回のPBLを行った。PBL前後に行ったMatch plusの結果から、数値が向上した主体性、働きかけ力、実行力、計画力、創造力、発信力、ストレスコントロール力の7項目を比較した。また、2023年前期までのGPAGrade point average)と2023年5月に回答した7項目の社会人基礎力からプロペンシティスコアを算出し、PBL受講者1名に対し対照者として、未受講者3名をマッチングし、2024年に回答した7項目の社会人基礎力を比較した。
【結果】Match plusを利用する全国薬学部の社会人基礎力12項目の平均は1年次に比べ、2年次で主体性を除く、11の項目で低下した(株式会社マイナビ資料)。一方、PBLを行った学生は社会人基礎力12項目中、7項目で向上(主体性1.24、働きかけ力0.12、実行力0.41、計画力0.47、創造力0.47、発信力0.12、ストレスコントロール力0.06)した。主体性、実行力、計画力に関しては、未受講者に対し、有意な差が認められた。
【結論】6年制薬学部では、低学年時の学修モチベーションの維持・向上が薬学教育の課題2)とされる。学修と将来を結び付けてイメージできないことが、キャリアレディネスが形成されにくい一因と考えられるが、今回の研究によりPBL が社会人基礎力の向上に効果的であることが分かった。
1)Match plusは株式会社マイナビが提供するパーソナリティ診断ツール
2)第12回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討委員会