講演情報
[P017]薬学部2年生を対象とした必修科目「早期薬学総合学習:誠の医療人入門」における、災害時の行政と薬剤師の活動を学ぶ取り組みについて
【発表者】白石 博久1、高橋 巌1、佐京 智子1、西谷 直之1、熊谷 明知2、大橋 綾子1、高橋 寛1、奈良場 博昭1、河野 富一1 (1. 岩手医科大学薬学部 (日本)、2. 岩手県薬剤師会 (日本))
【目的】東日本大震災の被災県にある医療系総合大学の薬学部として、薬学部2年生を対象に、岩手県沿岸の当時と今を学び、災害時に行政や薬剤師の果たす役割を考えることを目的とした必修科目を2018年度より開講してきた。今年度の実施状況について報告する。
【方法】令和7年5月12日(月)から16日(金)の5日間に渡って実施した。初日に、訪問予定地域の歴史や文化、被災状況を調べるグループ学習、避難所運営カードゲームHUG(静岡県危機管理部提供)、震災直後の医療現場を取材したNHKのドキュメンタリー番組の視聴を行った。その後、1グループ 9〜11名の3つのグループに分かれて、宮古・田老地区、大槌・釜石地区、大船渡・陸前高田地区を訪問し、震災遺構や復興の状況を見学すると共に、震災対応を経験した各地の行政担当者や薬局薬剤師から話を聞いた。大船渡市では、3月の大規模な山林火災の被災現場も視察した。最終日には、沿岸見学で得られた学びについて各班で議論し発表を行った後、岩手県薬剤師会としての震災対応や現在の防災体制について薬剤師会理事による講義を受けた。学生の学修目標8項目をシラバスに掲げ、その評価は、事前事後の発表、および終了後の感想文で行った。
【結果と考察】殆どの学生が東日本大震災発災当時(14年前)6歳前後という世代になっており、また沿岸出身の学生も少なかったことから、被災時の記憶や体験が殆どない学生が対象となった。それ故に、現地の行政担当者や薬剤師、語り部から聞いた経験談や、海岸線を塞ぐ巨大な防潮堤、各地に残る震災遺構に率直に衝撃を受けたという感想が目立った。また、事前学習では震災時の薬剤師の役割を具体的に把握しないまま臨んだ沿岸訪問によって、災害時に薬剤師が果たすべき役割が多岐に及んでいたこと、それらの多くは、平時日常の業務で培われる確かな職能と使命感、そして人や地域との密接な繋がりに基づいていることに気付いた学生が多かった。一方、行政担当者や薬局薬剤師との懇談から、現地でも世代交代が徐々に進み、こうした教育実習を支える人材確保が困難になりつつある現状が伺えた。震災の記憶の風化を食い止め、若い世代に地域防災の意識を伝承すると共に、薬剤師としてのプロフェッショナリズムの在り方を学生、教員の双方が考えさせられる貴重な機会として、この様な取り組みは極めて重要であると再認識した。
【方法】令和7年5月12日(月)から16日(金)の5日間に渡って実施した。初日に、訪問予定地域の歴史や文化、被災状況を調べるグループ学習、避難所運営カードゲームHUG(静岡県危機管理部提供)、震災直後の医療現場を取材したNHKのドキュメンタリー番組の視聴を行った。その後、1グループ 9〜11名の3つのグループに分かれて、宮古・田老地区、大槌・釜石地区、大船渡・陸前高田地区を訪問し、震災遺構や復興の状況を見学すると共に、震災対応を経験した各地の行政担当者や薬局薬剤師から話を聞いた。大船渡市では、3月の大規模な山林火災の被災現場も視察した。最終日には、沿岸見学で得られた学びについて各班で議論し発表を行った後、岩手県薬剤師会としての震災対応や現在の防災体制について薬剤師会理事による講義を受けた。学生の学修目標8項目をシラバスに掲げ、その評価は、事前事後の発表、および終了後の感想文で行った。
【結果と考察】殆どの学生が東日本大震災発災当時(14年前)6歳前後という世代になっており、また沿岸出身の学生も少なかったことから、被災時の記憶や体験が殆どない学生が対象となった。それ故に、現地の行政担当者や薬剤師、語り部から聞いた経験談や、海岸線を塞ぐ巨大な防潮堤、各地に残る震災遺構に率直に衝撃を受けたという感想が目立った。また、事前学習では震災時の薬剤師の役割を具体的に把握しないまま臨んだ沿岸訪問によって、災害時に薬剤師が果たすべき役割が多岐に及んでいたこと、それらの多くは、平時日常の業務で培われる確かな職能と使命感、そして人や地域との密接な繋がりに基づいていることに気付いた学生が多かった。一方、行政担当者や薬局薬剤師との懇談から、現地でも世代交代が徐々に進み、こうした教育実習を支える人材確保が困難になりつつある現状が伺えた。震災の記憶の風化を食い止め、若い世代に地域防災の意識を伝承すると共に、薬剤師としてのプロフェッショナリズムの在り方を学生、教員の双方が考えさせられる貴重な機会として、この様な取り組みは極めて重要であると再認識した。