講演情報

[P019]新生児医療教育が薬学生の倫理観およびプロフェッショナリズム醸成に与える影響

【発表者】菊地 真実1、豊島 勝昭2 (1. 帝京平成大学薬学部 (日本)、2. 神奈川県立こども医療センター周産期医療部門新生児科 (日本))
【目的】
「命とこころ」は、本学薬学部1年生の必修科目であり、「薬剤師に求められる倫理観とプロフェッショナリズム(B-1-1)」を学修目標の中心に据え、生命の始まりから死に至るまでのライフサイクルにおける医療の介入意義や倫理的課題について考察し、将来医療者として患者や家族の多様な状況を理解する力を養うことを目的としている。本研究は、新生児医療に関する3回の授業(各90分)を対象とし、授業後のアンケート結果を定量・定性的に分析し、新生児医療教育が薬学生の倫理観とプロフェッショナリズムの醸成に与える影響を検討した。
【方法】
授業は、①周産期医療とNICU(新生児集中治療室)に関する概要の講義と先天性疾患児と家族の動画視聴、②新生児科医によるNICUでの治療、医療者の役割、治療をめぐる家族との関わり、退院後の児の成長に関する講義(動画視聴含む)、③生命倫理に関する教育動画「22週と3日」視聴後、先天性疾患をもつ児の治療継続の是非を考えるSGDの3回で構成した。3回の授業終了後、研究協力の依頼と説明文書による説明を行い、Webアンケート(Microsoft Forms)を実施した。研究参加は任意とし、回答送信をもって同意とした。選択肢回答はFormsの機能を用いて集計し、自由記述はKJ法により質的に分析した。
【結果・考察】
対象学生153名中39名から回答を得た(回収率25.5%)。授業前にNICUを知っていた学生は56%(22名)で、その多くがテレビドラマを通じてであった。授業後、95%(36名)が新生児医療への関心が深まり、98%(37名)が児や家族の気持ちへの理解が深まった。59%(23名)が「障害」に対する認識が変化し、98%(38名)が将来医療者になる自覚を持ち、全員(39名)が薬剤師の役割を意識した。85%(33名)が新生児医療の学びが将来役立つと回答した。授業を通しての感想(26名)の記述内容を分析した結果、【新生児医療を知る機会】【自身の考えへの影響】【治療選択の難しさ】【家族の考えへの理解】【家族と医療者の考えの相違の認識】【家族支援の重要性】【新生児医療への薬剤師の関与の重要性の理解】【新生児医療への関心の深まり】の8カテゴリーが抽出された。新生児医療教育を通して、多様な立場を理解しようとする姿勢、職業的責任への自覚が育まれていることが示された。