講演情報

[P092]顧客意見対応の実践力育成のための研修に向けたAIによる課題生成手法の開発

【発表者】新垣 知輝1、小柳 順一1、西口 慶一1、竹内 一成1、懸川 友人1 (1. 城西国際大学薬学部 (日本))
【背景】
 顧客満足度の向上のための施作の一つとしてアンケートや投書箱などを用いて顧客の声を集めることが広く行われており、筆者の所属する大学でも学生からの投書箱が用いられている。送られる投書には様々な要望や苦情などがあり、これらに適切に回答するためには高度なクレームマネジメント能力が必要となる。しかし、本学では主に直接の担当者(教員)が回答者となるため、このスキルを有さない教員にとっては適切な回答を作成することは心理的に大きな負担となり、業務への影響も大きい。そのため、クレームマネジメント能力を習得するため何らかの研修の機会が望まれている。 大学では、ファカルティ・ディベロップメントによって教員のスキル向上が行われており、具体的な例を用いた演習を行うことで実践力の醸成が期待できるが、実例を用いることは秘密保持の観点から問題がある。そのため、架空の課題を作成しなければならず、それには非常に手間がかかるため演習を実施できないのが実情である。結果として講義形式で行われることが多いが、クレームマネージメントの理論や方略のみを学んでも実践への適用は困難である。本研究では、大規模言語モデルを用いたAIを活用することで、実例に即した課題を簡便に作成することができるのか検討を行った。
【実験方法】
 学生からの投書の事例については既にインターネット等で公開されているものを収集し、その中から教員に関するものとしてよく挙がっている状況を分類、整理した。投書内容の作成にあたってはChatGPT 4oを利用し、プロンプトには投書内容、投書者の属性、投書時の感情などといった要素を入力し、どの要素が投書内容に影響を及ぼすか検討した。
【結果・考察】
 ChatGPTに投書内容のみをプロンプトに入力した場合、その状況の説明にとどまり、実際の投書内容の雰囲気とは大きく異なっていた。次に投書者の属性を加え検討したところ、文体が極めて冷静で要望や苦情が伝わりにくいものであった。そこで投書者の感情をプロンプトに組み込んだところ、より実際の投書に近いものを作成することができた。ChatGPTは感情といったものに対しても適切に対応でき、基本的な属性として感情を設定した上で、投書内容として様々な状況設定を組み入れることで、簡便に実践的な投書例を多数作成することができた。