講演情報

[P100]現役薬剤師CRCによる実務実習終了後の学生に対する実践型治験教育プログラムの構築

【発表者】犬飼 容子1、鈴木 明子1、阿部 真寿美1、河野 奨2、加地 弘明2 (1. 川崎医科大学附属病院 治験・先進医療センター、2. 就実大学 薬学部)
【目的】
わが国における治験環境は、国際共同治験の増加に伴い急速にグローバル化し、日々変化しており、薬学教育においても変化への対応が求められている。薬学教育モデル・コアカリキュラム(コアカリ)には医薬品開発や治験に関する項目が含まれているが、大学の講義だけでは現場の変化に十分に対応することは困難と考える。そこで、川崎医科大学附属病院の薬剤師治験コーディネーター(CRC)が中心となり、治験に関する実務を体験する演習を構築し、薬学生の医薬品開発に関する意識変化を評価した。
【方法】
就実大学薬学部6年次に在籍する学生5名を対象に、3日間の演習を実施した。1日目は医薬品開発から市販後のリスク管理までの開発過程、規制、国内外の動向など、治験の実臨床に関する講義を行った。2日目はCRC業務体験として、サンプル検体検査キットの準備と倫理的配慮に基づくインフォームドコンセントの演習を実施した。3日目は治験事務局業務として、サンプル治験費用の算出や治験審査委員会の申請書類および契約書作成の演習を行った。1日目受講前および3日目受講後に、薬剤師国家試験過去問に基づく50問の確認問題と、理解度や関心度に関するアンケートを実施し、その変化を比較した。本研究は川崎医科大学倫理審査委員会で承認を得た。
【結果】
確認問題の平均点(点±SD)は演習前が19.8±2.9、演習後が22.2±2.7で、演習後に有意な上昇が認められた(P=0.04)。アンケートによる平均理解度VASは1.73±0.9から6.16±0.8、平均関心度VASは3.06±2.1から5.69±1.6と、いずれも受講後に有意な上昇が認められた(P=0.005)。
【考察・結論】
実務経験を有する薬剤師CRCによる体験型教育プログラムは、学生の治験に対する理解と関心を高めるうえで有効であることが示唆された。本演習は、コアカリに基づく特色あるプログラムとして意義があると考えられる。薬剤師が様々な形で治験に関わることは想定されることから、卒前教育において、薬剤師の治験における意義や役割を理解することは、実務実習を終えた薬学生にとって重要であり、今後の医薬品開発の一層の推進に寄与するものと考える。