講演情報

[P110]米国客員教授によるバイタルサイン授業

【発表者】白川 晶一1、Yang katherine2 (1. 神戸学院大学薬学部 (日本)、2. カリフォルニア大学サンフランシスコ校 (アメリカ合衆国))
【目的】本学では1年次の授業で米国からの客員教授による英語でのバイタルサイン授業を取り入れている。これは、薬の効果判定や副作用の早期発見、実務実習での電子カルテや患者モニターの英語表記に慣れる意味、さらには患者のトリアージなどの意義をも含む。今回その教育効果を検討した。
【方法】2024年入学の1年次生を対象に、12回行われる医療倫理の授業の1回分(90分)をこの授業に充てた。バイタルサインは、「脈拍」、「血圧」、「呼吸」、「体温」以外に、「痛み」をも含む。スライドでの客員教授の説明後に簡単な日本語での要約を学生達に聞かせ授業を進めた。授業直後にアンケートを行い、さらに期末試験に不合格の学生達に行う補講前にも確認テストを行った。
【結果】授業直後のアンケート結果(N=178)を報告する。(1)授業の印象は?との問いには、約9割の学生達が、興味を持てたと回答した。(2)医療英語の聴き取り具合は?との問いには、①ほとんど聴き取れなかった(16%)、②聴き取れたのは半分以下(31%)、③半分位聞き取れた(33%)、④半分以上聴き取れた(14%)、⑤大部分聴き取れた(6%)だった。(3)授業内容の理解度は?との問いには、①ほとんど理解できなかった(1%)、②半分以上理解できなかった(4%)、③半分位理解できた(30%)、④半分以上理解できた(41%)、⑤ほとんど理解できた(24%)だった。一方、補講前の確認テスト(N=31)では、脈拍測定を行う際の正しい橈骨動脈の触知法を答えた学生は32%、頻脈の定義を正しく答えた学生は29%などと、低かった。
【考察および結論】学生達の授業に対する興味が高かったのは、客員教授が平易な英語でゆっくり喋られたことに起因する。しかし1年生では医療英語に慣れておらず、聴き取りの悪さにつながった。けれども、適宜日本語の要約を加えることで、9割以上の学生が授業内容を半分以上理解できた。一方、補講前の確認テストから、期末試験不合格者は、バイタルサインの理解が不十分であった。将来、患者への薬学的ケアを提供するためには、さらなる授業の工夫が必要と考えられた。