講演情報

[P112]人材育成と地域貢献を両立する薬剤師教育センターの設置と運営体制の構築

【発表者】吉川 直樹1、龍田 涼佑1、田中 遼大1、伊東 弘樹1 (1. 大分大学医学部附属病院薬剤部)
【背景】近年、病院薬剤師への期待は一層高まりを見せている。病棟薬剤業務の充実に加え、タスクシフト・シェアへの対応、外来診療や周術期医療への参画、地域医療連携の中核としての役割など、多岐にわたる機能が求められている。こうした期待に応えるには、薬剤師の確保に加え、必要な知識・技能を備えた人材の育成が不可欠である。令和6年度診療報酬改定では、薬剤師不足の解消および人材養成の強化を目的に薬剤業務向上加算が新設された。これを契機に、大分大学医学部附属病院(以下、当院)では、地域医療機関等の薬剤師や薬学生への教育を担う薬剤師教育センター(以下、センター)を新たに設置した。
【方法】センター長は副病院長(薬事担当)・薬剤部教授、副センター長には薬剤部准教授を配置し、運営体制を整備した。センターには、薬剤師免許取得直後の薬剤師を対象とした研修及び地域医療に係る薬剤業務の実践的な習得のための研修について審議するため、医師・薬剤師・看護師の多職種で構成される薬剤師臨床研修管理委員会を置いた。センターの主な業務は以下の通りである:①薬剤師研修(地域医療機関・保険薬局の薬剤師対象)、②薬学実務実習生・研修生の受け入れ、③薬剤師の派遣調整、④薬剤業務向上加算に伴う研修実施と派遣調整、⑤地域医療機関との共同研究、⑥薬剤師の復職支援、⑦薬剤部との連携に関する各種業務。
【結果】薬剤師臨床研修管理委員会にて薬剤師臨床研修プログラムを策定し、当院薬剤部ウェブサイトで公開した。研修期間は原則1年とした。当院薬剤部所属のプログラム対象薬剤師については、2025年4月より研修を開始している。また病院薬剤師派遣については、大分県と協力し、局所的に薬剤師が少ない地域を選定し、出向先の医療機関について検討した。2025年4月より、当院薬剤部より病院勤務経験が10年を超える薬剤師を1名、出向先に派遣している。出向期間は1年間としており、出向後は成果報告会を予定している。
【考察】本センターの設置により、薬剤師免許取得直後の薬剤師に対して、質の高い研修環境を提供する体制が整備された。また、大分県との連携によって、地域ニーズに即した薬剤師派遣の実現も可能となった。今後は、研修プログラムの継続的な評価と改善を図るとともに、地域医療機関とのさらなる連携を強化し、より高度な薬剤師教育の推進を目指す。