講演情報

[P114]NDBオープンデータを用いた医療用鎮咳去痰薬の処方量に関する考察

【発表者】柳澤 星里1、【発表者】伊東 育己1 (1. 帝京平成大学 薬学部薬学科)
【目的】厚生労働省の資料によると、コロナ禍の2020年にはOTC医薬品の過量服用による救急搬送が2倍となり、2021年にはOTC医薬品を主な薬物とする依存症患者が急増したと報告されている。さらに2023年以降、青少年によるOTC鎮咳去痰薬の乱用が社会問題となっている。なかでも、2021年に発売された医療用と同容量のデキストロメトルファン錠がオーバードーズ対象薬の代表格となっている。デキストロメトルファンは、大量摂取で幻覚を引き起こすことが知られているが、コデイン類やエフェドリン類とは異なり、厚生労働省による乱用医薬品指定はない。これらは医療用としても広く使用されている鎮咳去痰薬であり、青少年への処方実態や都道府県ごとの差異を明らかにすることを本研究の目的とした。
【方法】厚生労働省が公表するNDBオープンデータを用い、2018年4月〜2023年3月のレセプト情報から、鎮咳去痰薬(コデイン類、エフェドリン類、デキストロメトルファン、ジメモルファンリン酸塩含有製剤)の処方数量を調査した。年齢層を0~4歳、5~9歳、10~14歳、15~19歳に区分し、さらに都道府県別の処方数量を抽出・比較検討した。
【結果および考察】5年間で、鎮咳去痰薬の処方数量が最も多かったのは2021年度であった。年齢層別にみると、0~4歳ではジメモルファンリン酸塩シロップ、5~9歳ではジメモルファンリン酸塩錠、10~14歳および15~19歳ではデキストロメトルファン錠が最も多く処方されていた。2022年度も10~19歳でデキストロメトルファン錠の処方が最多であり、全国の人口あたりの処方量に対する各都道府県の割合を算出したところ、11都道府県で全国の数値を上回り、特に茨城県、滋賀県、東京都、神奈川県、大阪府の順で割合が高かった。さらに、各年齢層の処方量と人口から15~19歳の処方量を推計したところ、5都道府県の中で東京都が最多となった。
【結論】これらの結果から、鎮咳去痰薬の処方量は一部地域で特に多いことが明らかとなった。特に東京都は、青少年へのデキストロメトルファン錠の処方量が多い可能性が示され、処方箋薬交付時における適正使用の指導や残薬管理、乱用防止に向けた教育の重要性が示唆された。