講演情報
[P118]OTC医薬品における薬剤師の役割、法的規制と医療薬学知識の応用
授乳中の母親におけるロラタジン使用の例より
【発表者】田村 美帆1、宇都宮 悠花1,2、関口 雅之1,3、杉林 堅次4、渡邉 弘悦1 (1. 一般社団法人薬剤師倫理学会 (日本)、2. 健生薬局 (日本)、3. 一般社団法人芙蓉協会 聖隷沼津病院 (日本)、4. 城西国際大学イノベーションベース (日本))
【目的】日本の薬剤師は、大学教育を通し専門的な医療薬学等の知識を得ているが、一般用医薬品(以下OTC)の販売において法令によりその専門知識を応用することに制限がある。本研究は、アレルギー専用鼻炎薬であるロラタジン(クラリチン®)の妊婦への適用を例にとり、薬剤師が直面する法的規制にかかる課題の検証を目的として行った。
【方法】授乳婦にロラタジンを適用する場合、薬局、ドラッグストア、病院(以下、各施設)の薬剤師について対応がどのように異なるかを検討した。一般社団法人薬剤師倫理学会所属の各施設複数名の薬剤師へのインタビューにより調査した。この対応の違法性について検討した。違法性の有無については弁護士に確認した。医療用医薬品とOTCの適応症等についてはPMDAホームページに掲載の添付文書等により調査した。
【結果】各施設の薬剤師が、授乳中の女性がロラタジンを購入したいという状況に対応する場合、立場によって対応が異なっていた。しかしいずれも法的に問題はなかった。しかしいずれの薬剤師も妊婦に販売できないことを課題として捉えていた。OTCロラタジンは添付文書に記載のある適応症のみ販売が許可されており、「授乳中は服用をしないか、服用する場合は授乳を避けて」と記載されている。薬剤師であっても医療用に使用されている適用範囲で販売することはできず、適応症以外で販売した場合の副作用に対する公的な補償はなかった。また、これはアゼラスチン(アゼプチン®)やフェキソフェナジン(アレグラ®)等、アレルギー用医薬品全般の課題であることがわかった。
【考察】日本の薬科大学・薬学部では、6年間の薬剤師養成のプログラムを通し高度な教育が行われている一方、OTCは添付文書に記載された適応症状以外の販売は認められていない。従って薬剤師の業務と専門的役割は限定され、職能と日常業務との間に乖離が生じている。これは薬剤師自身に高度な薬学教育の価値を無意味に感じさせ、その職能の低下を招く可能性を示唆する。さらに、セルフメディケーションにおける薬剤師の役割に対する懸念を社会に広げる可能性がある。法規を調査した結果、医薬品の安全を求める業務を課しながら薬剤師の職能を必要としないという条文も見つかった。日本における薬剤師の役割とOTC医薬品の販売体制を見直す必要がある。
【方法】授乳婦にロラタジンを適用する場合、薬局、ドラッグストア、病院(以下、各施設)の薬剤師について対応がどのように異なるかを検討した。一般社団法人薬剤師倫理学会所属の各施設複数名の薬剤師へのインタビューにより調査した。この対応の違法性について検討した。違法性の有無については弁護士に確認した。医療用医薬品とOTCの適応症等についてはPMDAホームページに掲載の添付文書等により調査した。
【結果】各施設の薬剤師が、授乳中の女性がロラタジンを購入したいという状況に対応する場合、立場によって対応が異なっていた。しかしいずれも法的に問題はなかった。しかしいずれの薬剤師も妊婦に販売できないことを課題として捉えていた。OTCロラタジンは添付文書に記載のある適応症のみ販売が許可されており、「授乳中は服用をしないか、服用する場合は授乳を避けて」と記載されている。薬剤師であっても医療用に使用されている適用範囲で販売することはできず、適応症以外で販売した場合の副作用に対する公的な補償はなかった。また、これはアゼラスチン(アゼプチン®)やフェキソフェナジン(アレグラ®)等、アレルギー用医薬品全般の課題であることがわかった。
【考察】日本の薬科大学・薬学部では、6年間の薬剤師養成のプログラムを通し高度な教育が行われている一方、OTCは添付文書に記載された適応症状以外の販売は認められていない。従って薬剤師の業務と専門的役割は限定され、職能と日常業務との間に乖離が生じている。これは薬剤師自身に高度な薬学教育の価値を無意味に感じさせ、その職能の低下を招く可能性を示唆する。さらに、セルフメディケーションにおける薬剤師の役割に対する懸念を社会に広げる可能性がある。法規を調査した結果、医薬品の安全を求める業務を課しながら薬剤師の職能を必要としないという条文も見つかった。日本における薬剤師の役割とOTC医薬品の販売体制を見直す必要がある。