講演情報

[P035]薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)で求められる数学能力に関する研究

【発表者】高橋 秀人1、濃沼 政美1、窪田 剛志1、金児 正史2 (1. 帝京平成大学 薬学部 (日本)、2. 帝京平成大学 人文社会学部 (日本))
【背景,目的】T大学薬学部では, R6年度1年生より薬学教育モデル・コア・カリキュラム(R4年度改訂版)(以下,コアカリキュラム)が導入されている.「数学」はコアカリキュラムの求める「科学的探究心」,「問題解決能力」,「情報・科学探究を活かす能力」,「コミュニケーション能力」に直結する科目と考えられ,コアカリキュラムを達成するために必要な内容を具体化する必要がある. 本研究はAdleffら*の数学的能力6項目を用いて, コアカリキュラムを達成するために必要な「数学能力」を明らかにすることを目的とする.

【方法】対象者を】T大学薬学部講義科目担当者, および対象科目をR6年度開講した114科目とし, 質問紙調査を実施した. 質問項目は担当科目で[1]数学の4領域「ア.数と式(数と計算),イ.図形,ウ.関数,エ.データの活用」, および[2]数学的能力6項目「①モデリング,②問題解決,③推論と論証,④表現の使用,⑤記号と演算,⑥コミュニケーション」で, それぞれ重要と思う順番,等である(倫理承認R7年4月23日). 全体,および7つの大項目「A薬剤師として求められる基本的な資質・能力」,「B社会と薬学」,「C基礎薬学」,「D医療薬学」,「E臨床薬学」,「F臨床薬学」,「G薬学研究」それぞれで作表し, 大項目ごとにその項目とその項目以外で差があるかを検討した(Fisher直接確率検定等).

【結果】全114科目中90科目(重複を除いて82科目)の回答があった(カバー割合71.9%). 全科目90科目,および大項目の対応がとれた57科目について, 最も重要な数学領域は, 全体「B,C,D,E,F」でもそれぞれの大項目でも,すべて「ア数と式(数と計算)」, 最も必要な数学的能力は, 全体「B,C,D,E,F」,および大項目「B,E,F」で「⑥コミュニケーション」, 大項目「C,D」では「⑤記号と演算」であった.

【考察,結論】中項目を鑑みると,この結果は理解しやすい. 今後数学の講義では,計算問題, データから関数関係の理解,定義および定義を用いた判断, 具体的事の文字を用いた抽象化, 理解を人に伝えるように記述する,等の能力の醸成が必要と考える.

Adleffら. Educational Studies in Mathematics, Vol 114, 371–392,2023.