講演情報
[P087]薬学生が抱える学習の悩みについての調査報告
【発表者】渡部 俊彦1、伊藤 邦郎1、町田 浩一1 (1. 東北医科薬科大学薬学部、薬学教育センター (日本))
調査の目的) 薬学生が抱える学習の悩みを調査し、学習効率を上げるために考慮すべき点を明らかにする。調査を行う理由) 大学進学率が上昇する一方で少子化や大学生の学力低下が社会問題となっている。薬学部6年制移行からの薬学部数増加とその後の18歳人口の減少が重なり、大学当たりの薬学部志願者数が減少しており、入学者の学力低下は進行している。こうした現状への改善に向けた対応策を検討するためには、学生が抱える学習の悩みを把握することが必要となる。そこで我々は、学習相談に訪れた学生を対象に、学生が抱える学習の悩みについて調査を行った。調査方法) 学習相談に訪れた学生に学習時のモチベーションと学習方法について聞き取りを行った。モチベーションに影響を与える心理学的要因(価値、期待)について確認を行った。学習方法の調査では、知識の修得に必要な工程(記銘・保存・再生)の内容について確認を行った。結果)1.授業に学ぶ価値を感じている学生の割合: 勉強にやる気が湧かないと訴える学生であっても、90%以上の学生は大学で学ぶことに価値を感じていることが明らかになった。2.知識を修得できる期待感をもっている学生の割合: 勉強にやる気が湧かないと訴える学生のうち、約半数の学生は授業内容が難しすぎると感じていることが明らかになった。3.学習環境に関する調査: 練習問題を用いて知識を活用する訓練を行っているか調査したところ、80%以上の学生が練習問題を用いた学習を行っていないことが判明した。また、この訓練ができない理由に「練習問題を解くための時間を確保できなかった」と回答した学生の割合が、90%を超えていた。考察) 成績不振の相談に訪れる学生の共通点として、学習へのモチベーションの低さが挙げられた。今回の調査結果では、多くの学生が大学の授業は薬剤師になるために必要であり、学ぶ価値を感じていることが明らかになったが、その一方で授業内容は難しすぎて修得できないと感じている学生が多く存在し、これがモチベーション低下を招いている要因と予想された。期待の感情は、成功体験を重ねることで向上するが、大半の学生が練習問題を用いた学習を行えていないことから、これを改善することで学習へのモチベーションの増加ひいては成績を向上させることができると考えられた。